洞窟迷子救出作戦！｜リアクション

洞窟迷子救出作戦！

　志波高久は、声をかけた相手がこちらに近づいてくるのを見てほっとした。怪我がないというのは本当のようだ。
「こんばんは、俺は志波高久という。こちらは先ほど会ったマリエッタ・ラシュリエ君だ。君もスマホを見て、ここに飛ばされてきた……で合っているか？」
「そうデスが……お二人はこのフシギ体験の原因に心当たりがありますか？　あ、アカリ・ゴールディングといいマース」
「私は知らないうちに飛ばされちゃったから、ちょっと分からないけど……志波さんはどうかしら？」
　マリエッタの問いに、高久は首の辺りを掻きながら答えた。
「俺はあると言えばあるが……おそらくは星幽塔がらみだろう」
「Astral Towerデスか？」
　高久は不思議そうな二人に、簡単な説明をすることにした。
　寝子島から遙か海の向こう、雲に包まれた大きな塔がある。そこにはファンタジー風の生き物や住人達が暮らし、毎日何かしらおかしな騒ぎが起こる賑やかなところなのだ……と。
「たまに起こるんだが、寝子島の住人が向こうに行ってしまったり、その逆で、星幽塔の住人がこちらに迷い込んだりすることがあるんだ。今回はそのケースなんじゃないか、と俺は思ってる」
「うーん……仮にそうだとすると、迷い込んだ人は幼い子かもしれないわね。不安そうなメッセージだったし」
「父ちゃん、母ちゃん、どこ、っていうやつデース？　アカリも見ました」
　思案顔のマリエッタに、アカリも頷いた、その時。
「よし、地図も持ったし準備は万端、今行くからな！　……あれ？」
　突然三人の前に出現した少年――龍目豪に、アカリはワーオ！　と感嘆の叫びを上げた。
「こ、これが強制移動の瞬間デスね！　本当に突然現れマース！」
　好奇心に瞳を輝かすアカリの横、高久が真面目な顔で豪に問うた。
「俺は志波高久だ。君、今地図を持っていると言ったが、あの洞窟に行ったことがあるのか？」
「えぇ、鼻岬洞窟って呼ばれてます。これが当時の関係者に聞き込みして作った地図です。台風の影響を考えると今も同じかは分かりませんが、スマホにほしびとが迷子らしいってメッセージが出たんで、じっとしていられなくって。あ、俺は龍目豪です」
　その後４人は話し合い、自己紹介やお互いの出来ること、持ち物を確認し、（推定）迷子を救出するために洞窟へと挑むことを決めた。
「ヘッドライトやロープは持ってきてますから、皆で一緒に進みませんか？」
「そりゃありがたい。俺は寝子島に住んでいる訳じゃ無いから地理に疎いし、龍目君のような経験者が来てくれて嬉しいよ。遠慮無く頼らせてもらおう。その代わり、体力的な問題は任せてくれ」
「じゃあ、順番はどうしマースか？　ゴウが先頭で、タカヒサが２番目？」
「あの、それについては私、試してみたいことがあるんだけど……」
　マリエッタの提案は、彼女のろっこん『アーキテクト・アナリシス』で内部構造を把握できるかどうか挑戦したい、ということだった。
「す、すげぇ……そんなろっこんがあるのか。じゃあ、俺が先頭、マリエッタ先輩が２番目でルート選定をしながら進もう。ミニノートを持ってるアカリは念のため地図作成を頼むよ。志波さんは殿をお願いできますか」
「任せてくれ」
　役割分担が決まった所で、四人は目を合わせて頷き、洞窟へ向かった。

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