ユメユメ事変・壊　フツウ崩落｜リアクション

ユメユメ事変・壊　フツウ崩落

■ＶＳクラッシュヘイター
「フーン、ここが星ヶ丘ね。どいつもこいつも暢気にいきやがって、ムカつくぜ」
　星形のコンタクトレンズをした、パンクファッションの男。
　彼は首にかけていたヘッドホンを耳に装着すると、大声でヘイトスピーチをわめきちらした。
　するとどうだろうか、あたりを歩く人々が急に意識を失い、ばたばたと倒れていくではないか。
　さらに彼が――クラッシュヘイターがスピーチを自己正当化させていくと、無数の炎が吹き上がり彼の周囲を渦巻き始めた。
「さぁて、まずは大炎上祭りからいくかねぇ」
「そうはさせないわよ！」
　突如、空中から自由降下し現れる伊藤美緒。
　クラッシュヘイターは彼女の蹴りをかわすように飛び退くと、自らを炎でガードし始めた。
　着地し、指を突きつける美緒。
「あんたの正体はわかってる。これ以上の破壊はさせないわ！」
　走り出し柏手を打つと、美緒は鳥に変化しクラッシュヘイターの脇を抜けていく。
　焼き払おうと炎を放つも、風をきって飛び回る美緒を捕らえるのは難しかった。
　と、そこへさらに。
「キミのファッションセンス、個性的でそれもアリ！」
　現場に駆けつけ、突然ポジティブなことを叫ぶ椿美咲紀。
　さらには飛び回る美緒に声援を送るように拡声器を使って声を張った。
「動けてるですよっ！　目の付け所が秀逸！　連携益々冴えてます！」
「……うるせえ！」
　炎を発するクラッシュヘイターからぱたぱたと逃げ、あえてにっこり笑ってポジティブな呼びかけを続ける美咲紀。
　誰でも世間への不満をわめき散らしている間にポジティブな横やりを入れられれば気に障るものである。
　美咲紀によって集中を乱され、美緒によって攪乱される。
　そんな状況を――。

「利用しない手は、ないよな」
　北里雅樹は物陰から様子をうかがい、クラッシュヘイターの周囲に流れる炎を凝視した。
　ぱっと見ただけではわからないが、顕微鏡並の精密視が可能な彼の能力では空気中に流れる特徴的な塵や水分のようなものが見えていた。
　つまりはそれこそが、彼が自己防衛のために展開している毒の霧である。
「俺が直接出て行っても勝てる気がしないからな。サポートに集中させてもらう。いけるな？　椎井」
『ええ』

　薄手袋を脱ぎ、指先にぱちぱちと電流を流す椎井莉鳥。
　耳に装着したワイヤレス通話機から元彼の聞き慣れた声がした。
『鳥が飛び回ってるせいで空気の乱れが起きてる。そのおかげで毒の霧にも隙ができてるらしい。進入角度とコースさえ間違わなければ毒にあたらずに突入できるぞ』
「メンバーに恵まれたわね」
　言われた通りの位置へと移動し、突入の合図を待つ。
『いいか。３、２、１――』
　ジャストのタイミングで走り出す。
　クラッシュヘイターは自分を包む霧が途切れていることを自分で認識できないようで、まっすぐに突入してくる莉鳥に驚き、目を見開いた。
　何かをいおうとした彼の首を片手でつかみ、指先に電流を流す。
「鬱陶しい。死ぬまで黙ってろ」
「ガッ！？」
　相手を気絶させる程度、今の莉鳥には容易であった。
「大体妙に派手な格好したり他人にヘイトをまき散らす奴なんて自分に自信が無い証拠よ。他人を憎む前にもっと自分を磨くのね！」
　変身を解いて着地する美緒
　美咲紀は燃えていない花を手に取り、巻き添いでやけどを負った人々の治療を始めた。
「そろそろ、あの人たちも駅についた頃でしょうか……」

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