ユメユメ事変・壊　フツウ崩落｜リアクション

ユメユメ事変・壊　フツウ崩落

■破滅の未来をさけるため
　目覚まし時計の音に混じって、町の燃える様を見た。
　ヘッドホンを首にかけ、星形のコンタクトレンズをした男。
　彼が世の中に不平不満をぶつけるたびに、自己正当化を続けるたびに、町が炎に包まれていった。
　いつも見ていた街路樹や、公園や、駅前のお店が燃えていく。
　フツウの日常が、取り返しのつかないくらいに壊れていくのを、その目で見た。
　奴は……『害魂使い』は、フツウを壊せば壊すほどに力を増し、もはや自分では手のつけられないほどの破壊力をもって町を突き進む。
　通学路が。学校が。みんなで過ごしたいろんな思い出が、灰と炭になって消えていく。
　思わず伸ばした手が――。

「あ、れ」
　部屋のベッドで伊藤美緒は目を覚ます。
　伸ばした手は天井へむけ、なにもない空をつかんでいた。
「ただの夢……じゃあ、ないのよね？」
　不吉を知らせる夢。
　ササヤキ。
　美緒にとってそれは、決して初めての経験じゃあなかった。
　例のササヤキ声が頭に直接響くよりも早く、美緒は靴をつかんで窓を開き、直接空へと飛び上がる。
「起きるかもしれない事件を止められる。なら、やるべきことはひとつよ！」
　柏手を打ち、金翅鳥へと変身し、大空へと舞い上がっていった。

　同時刻。
　ポップなスマートフォンのアラーム音楽を受けて、椿美咲紀は大きなベッドの上で目を覚ました。
　ササヤキ声が、アラーム音に被さるように響いてくる。
　――聞こえますか――聞こえますか――
　――害魂使いたちが動き出そうとしています――
　――あなたたちを葬り去るために――
　――あなたの日常を破壊するために――
　――これから未来の出来事を教えます――
　――あなたの日常（フツウ）を、あなたの手で守るのです――
「害魂使い！　また出たのですか！」
　咄嗟に手に取ったスマホにはいくつかの着信。ＳＮＳにもメッセージが残っている。
　書き込み内容から、今回この事件を察知したメンバーと、その動きを素早く把握した。
　寝子島の中でもひときわ場慣れした美咲紀である。情報収集と状況判断の早さには自信があった。
「私のほかには……伊藤さんに、椎井さんと北里さん。
　北里さんたちはコンビで動くでしょうし、きっと動き方はああだろうから……よし！」
　美咲紀は素早く外出の準備を整えると家のガレージへと駆け込んだ。
　今、持って行くべきは……。

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