ある日、日常が崩れ去った。
駅ビルが爆発を起こして倒壊し、人々が悲鳴を上げて逃げ惑う。
顔見知りの人々が目を赤く輝かせ、工具を手に罪なき人々へ襲いかかっていく。
その中心で、茜色のコートを着た女が楽しそうに歌って踊って笑っている。
混乱と狂気と、破壊と混沌。
焼け焦げた学生証がひらひらと暴風に舞い、あなたの足下へと落ちた。
ろっこんの力を使おうにも、フツウの壊れたこの日常にもはや『彼女』の力は届かず、時空を切り離し現状保全につとめる『彼』も今は頼ることはできないだろう。
もはや破壊される日常を前に、ただの人間として立ち向かうことしかできない。
そしてどれだけ立ち回ったとて、『異常』を超常の力にかえて振り回す彼らとの差は圧倒的だった。
知恵を絞り、勇気を輝かせ、魂を燃やし、善戦するも……しかし、仲間たちは次々と倒れ、あなたもまた、膝をつく。
もう戻らない日常と、これから壊れていく世界を前に、高笑いだけが耳に残る。
そして、ベルが……ベルが……。
「――!」
目を見開き、息を吸い込む。
そこは自宅の、それも布団の中だった。
猫鳴館の畳部屋。僅かにあいたカーテンから朝陽がさしこみ、窓の外では小鳥が縄張りをあらそって鳴いている。
「夢、かあー……」
目覚ましアラームを止め、布団から起き上がる
雨崎 荒太郎。
リアルな、そして暴力的な夢だった。
街が壊されて、自分たちの力と日常が奪われていく、そんな未知の……。
「いや、知ってる」
そう。荒太郎は知っていた。
フツウを壊せば壊すほど力を増すという、荒太郎たちのろっこんとは真逆の性質をもつ能力者たち。
その名も
害魂使い。
ただの夢とは思えない。
もし彼らの『本隊』と呼ばれる連中がこちらの社会的攻撃に反応して動き出したならば、直接的な攻撃手段に出ることもありえるだろう。
みんなの、そして荒太郎の日常が破壊されてしまうかもしれない。しっかりしないとと呟いて歩いたあの道が、優しい先輩の笑顔が、壊されてしまうかもしれない。
「もしかしたら、あの時みたいに……」
荒太郎は目を閉じて集中してみた。
すると。
あのささやきが、聞こえた。
――聞こえますか――聞こえますか――
――害魂使いたちが動き出そうとしています――
――あなたたちを葬り去るために――
――あなたの日常を破壊するために――
――これから未来の出来事を教えます――
――あなたの日常(フツウ)を、あなたの手で守るのです――
害魂使いとの戦いが、再び始まるのだ。
■『サンセットクルーズ』と夕暮姫
桃色の髪にサングラス。茜色のロングコートを纏った女がいた。
周囲に引き連れているのは目を赤く光らせる男女。
彼らはまるで操られたかのように女の後ろを歩き、しもべのように接していた。
赤目のしもべたちの差し出す煙草をくわえ、ライターで火をつけさせ、ため息のように煙を吐き出す女。
女の胸には『夕』の文字が光るピンバッジ。
後ろに付き従う集団のうち、目のあかくない執事風の男が小声で話しかける。
「夕暮姫、あなた自ら出向かれる必要が? 部下の害魂使いだけでよかったのでは」
「んー。ちょっと楽しそうだしね」
「……」
夕暮姫と呼ばれた女は火が付いたままの煙草を投げ捨てて、歪むように笑った。
「あのさあ。私、日常って大っ嫌いなんだよね。私が主人公にならないし、私の気に障ること言うやつがいるし。
私ってばただ気持ちよく過ごしたいだけなのにさ、ひどいじゃん?
だから適当に壊して従わせて、こーんな小さい王国で満足してやってるってのにさ……あいつら邪魔しようとするんだもん。
なに? フツウ? ろっこん? 平和な寝子島? ほんっと邪魔。
私が主役にならない世界なんていらないの」
「……然様でございますか」
頭を垂れ、スッと身をひく執事。
夕暮姫は笑って手を翳して見せた。
「だからぶっ壊そう! 寝子島とかいうの! ちょっとはスカッとするかもね!」
あなたが見た未来の中心に、彼女――夕暮姫はいた。
フツウを憎むもの。
異常な日常こそを享楽するもの。
異常の使者。
害魂使い集団『サンセットクルーズ』の、リーダーである。
彼女たちの襲撃を廃し、寝子島を守るのだ。
寝子島の未来を救う戦いが始まります。
きたるべき未来に備えてください。
勿論、途中参加大歓迎です!
『私もササヤキをうけた!』『ネコッターで見た!』と書いて、コメントページにのりこもう!
■要約
皆さんは島三箇所の防衛ポイントを分担して守ってください。
『コメントページ』で自分の防衛するポイントを宣言しておくとかぶりが出る心配が減るでしょう。
戦う相手は悪いろっこん使いとも言うべき害魂使い集団『サンセットクルーズ』の幹部たちです。
逆に彼らを倒すことで、害魂使いの暴動をとめることができるでしょう。
■状況
あなたは『ササヤキ』という未知の存在から未来の出来事を伝えられました。
ネコッターのグループチャットによると、あなただけに留まらずおよそ10人ほどの人々におなじささやきがなされているようです。
眠る間に見る夢や、白昼夢や、瞬間的なイメージとしてこのささやきは伝えられています。
その内容は、近い未来に寝子島が圧倒的な力によって崩壊していくというものでした。
ササヤキの告げる未来が本当に訪れるものであることは、過去の事件からも明らかです。
あなたは自らの力を使い、この島の『フツウ』を守らなくてはなりません。
■背景
およそ先月頃、島で好き勝手に暴れようとしていた『害魂使い』たちの動向を予知し、寝子島の仲間たちはその撃退に成功しました。
彼ら害魂使いに指示を与える(ないしは誘導する)役割の者たちが動き出すことを期待して警察に突き出しました。
一方で害魂使いの幹部たちは部下を切り捨て、直接島への攻撃を開始しました。
おそらく『ろっこん使いは日常を破壊するような時には力が使いにくい』という弱点を見抜いたものと思われます。が、こちらが『ササヤキ』によって未来を知っていることはまだ見抜いていないはずです。
先手をとり、彼らを撃退しましょう。
■対策
害魂使い集団『サンセットクルーズ』の幹部たちは船を用いて島の三箇所に乗り付け、害魂を用いた破壊活動を行なう予定のようです。
あらかじめテオの力で時空を切り離しているので直接被害は食い止められますが、あまりに被害が大きくなった場合は現実にも多少なりとも被害が及んでしまうかもしれません。
なんとしても彼らを倒し、破壊を食い止めましょう。
・害魂使いとは
皆さんのろっこん能力がフツウを守るような力であるのと対照的に、フツウを壊せば壊すほど力を増す能力者たちです。
そのため直接戦えばあなた自身がフツウをねじまげているという理由から力の差が生まれ、相手に負けてしまうでしょう。
周囲の破壊や場の混乱がおきれば更に事態は悪化していきます。
力を合わせ、そして被害をとどめながら、害魂使いを倒さなければなりません。
■活動地点
『サンセットクルーズ』は寝子島駅前(島東北部)、星ヶ丘駅前(島南西部)、湾側山間部(島北西部、展望台側)の三箇所に一人ずつ上陸します。
彼らは強力な特殊能力とその進化能力を有しています。
上陸するグループごとに解説していきましょう。
・寝子島駅前:夕暮姫
害魂:180秒連続で目を合わせた他人を操る能力
進化能力:相手の弱みを突きつけることで支配効率を10秒ずつ短縮できる。
この進化能力によって20人近い一般市民を奴隷化し、一度に上陸してきました。
夕暮姫自身は日本刀で武装しており、奴隷たちも工具などで武装しています。
支配能力がこの場でいきなり使われることはそうそうないので、集団の力をいかに鎮圧できるかがポイントになるでしょう。
・星ヶ丘駅前:クラッシュヘイター
害魂:ヘイトスピーチを述べると毒の霧を発する。
進化能力:自己正当化を重ねると毒の霧に炎を付与し、自由に操れる。
ヘッドホンを首にかけ、星形のコンタクトレンズを入れている奇抜なパンク趣味の男です。
目に付くものにとにかくヘイトをはきながら炎で攻撃を仕掛けてきます。
直接攻撃タイプですので、防御に秀でた能力があると有利に動けるでしょう。
・湾側山間部:ベラドンナ
害魂:触れた植物を自由に動かせる。
進化能力:一度触れた植物を総重量200キロまで自由に動かせる。高速成長や自死も可能。
体中に植物をはやした異常な女です。世界中の全てが自分の敵だと思い込んでおり、ろっこん使いが自分を追い詰めていると決めつけてとにかく排除しようとしています。
植物を操る力があるため、森の中ではかなり不利です。
木々を動かす攻撃を防御するか、いっそ無力化する方法を考えてみましょう。