【生徒会選挙】歴代生徒会長からの挑戦状～リゾルブ・ワールド！｜リアクション

【生徒会選挙】歴代生徒会長からの挑戦状～リゾルブ・ワールド！

●丸いものを食べましょう・その２

　こうして集まったものは、少々色あせていたり不揃いな野菜や、廃棄間近だった魚介類、形の小さな卵に賞味期限が迫っていて商品棚から外すところだったという小麦粉等等。
「うわあ、すごい！」
　調理道具の準備を担当していた遠海は、紫苑と壱都が集めてきた食材の数々に目を丸くする。
「寝子島の人々は優しいと改めて実感しました」
　壱都が生真面目な顔で言うと、紫苑はほんわかと頬を綻ばせる。
「本当ですね。食材を貰った人達にも食べて欲しいので、是非来てくださいと、宣伝も兼ねてチラシを作ってお渡しておきました。さあ、作りましょうか」
　いそいそと楽し気にレースのついたエプロンをつける紫苑と対照的に、やや顔がこわばる壱都。
　京都にいた頃から習っていた居合術なら自信があるのだが、料理はそこまで得意というわけではない。
「調理に関しては……巫部先輩や楡宮さんに頼る事になりますけれど……」
　恐縮しきった上目遣いに、大喰らいのふたりは合点と腕まくり。
「丸い食べ物というと、たこ焼きが代表格だと思うけど、たこ焼き器を使ってたこ焼き以外にもいろいろなものが作れるよね。小麦粉も卵もいっぱいあるから、カステラとかホットケーキ、オムレツなんかもいけそう」
「保存が利きそうな具材は事前に作ってきたんですよ」
　食べることが好きすぎて、料理のほうもなかなかな腕前である紫苑は、保冷バッグの中から瓶詰したりタッパー容器にいれた佃煮やそぼろ、お漬物やジャムを取り出す。
「これをつかっておにぎりやパンも作りましょうか。楡宮さん、たこ焼き器を使った料理の方はお任せしますね。八重崎さんには、具を入れたりなど簡単な調理をお願いします」
「はい！」
「承知しました」
　爽やかな水色のエプロンを纏った遠海と、几帳面に畳んだ三角巾をきちりと頭の後ろで縛り、白い割烹着でおかんスタイルになった壱都は、それぞれに作業台で調理を開始する。

「そっちの卵、取って貰えます？」
「はい」
「この蛸足、傷ついていると言ったってちょっとですよね。全然美味しく食べられちゃうのに廃棄になるところだったなんて、勿体ないことですね」
「それ、たこ焼きで使わせて。その先が黄色くなった小葱も」
「はいどうぞ。ああ、八重崎さん、おにぎり握って貰えますか？」
「はい。……すごい湯気。炊き立てお米美味しそうです……って、熱っ！」
「大丈夫？」
「大丈夫です。白いご飯で握るのと……こっちの魚介で混ぜご飯も作るんですね」
「はい、お願いします」
「……いやあ、もう選挙そっちのけで食べる方に夢が広がりまくるね」
　わいわいおしゃべりも賑やかに、少女たちはいろいろな丸い料理を作っていく。

　こうして数時間ののち。
「「「ふう……！」」」
　満足げにため息を吐く三人の少女たちの前には、さまざまな丸い食べ物が鎮座ましましていた。
　丸いおにぎり。丸いパンのサンドイッチ。丸いお饅頭。
　丸いカステラ。丸いホットケーキ。丸いオムレツ。
　そのほか遠海のアイデアで、たこ焼き器でつくった丸い焼きおにぎりに、丸いアメリカンドッグ、餃子ボールに焼きドーナツにごま団子、ホットケーキの素を薄く焼いてその中にフルーツを入れた一口タルトまである。

　集まってくれたのは食材を提供してくださった商店街や漁港、農家のみなさん。
「お誘いありがとう」
「あの食材がこんなにいろんな料理に！？」
「いい匂い。美味しそう！　食べていいのかい？」
「はい。どうぞ召し上がってください」
　自分たちも席について、
「いただきます！」
　様々な丸い食べ物を、パクリと口に入れてはそれぞれにうっとりとして、
「なんと美味」
「地球って美味しい食材がいっぱいあるよね。地球に生まれて幸せって思う！」
「本当ですね。おかわりしましょう」

　かくして。
　丸いものを食べましょうプロジェクトは大成功。
　丸くて美味しい物を沢山作って、地球に感謝しながらお腹いっぱいになったのでした。