【生徒会選挙】歴代生徒会長からの挑戦状～リゾルブ・ワールド！｜リアクション

【生徒会選挙】歴代生徒会長からの挑戦状～リゾルブ・ワールド！

●丸いものを食べましょう・その１

「地球と言えば『丸い』。丸いといえば……丸い食べ物ですね」
　書記候補、巫部紫苑は、ゆたかなまあるい胸をふるんと寄せてそう微笑んだ。
　企画したのは地球は丸いので『丸いものを食べましょう』プロジェクト。
　それぞれのキーワードから連想した食材を具にした、地球みたいに丸い食べ物を作って食べてみようという内容だ。
「今回は書記候補にはあんまり関係ない事になってますけど……折角だから参加しないと損ですね♪」
「そうですね。この企画を通じて先輩とも少し誼を結べたらありがたいです……聊か気は早いかもですが」
　賛同したのは１年生の書記候補・八重崎壱都。信任投票こそあるものの一先ず票を争う必要はなくなったし、今後書記として活動を同じくするのなら、いっしょに何かしてみるのも悪くないだろう。
　それから、スレンダーな長身で――胸もスレンダーなのがコンプレックスではあるが――生まれも育ちも鎌倉の名家のお嬢様然とした清楚な美人ながらその食欲には定評のある楡宮遠海も参戦だ。
「丸いものを食べるという企画内容にノックアウトされちゃいました！」
「食べる事、好きですか？」
「ええまあ……軽音部でハードな部活に打ち込んでいるので、どうしてもお腹がすくから。巫部先輩も？」
「はい。食べる事は本当に好きです。お仲間さんがいて嬉しいです」
「こちらこそどうぞよろしくお願いします！　で、どんな丸い食べ物を食べましょうか？」
「丸いといえばパンやおにぎりかと思うのですが」
　食べ物談義に移行しそうなふたりを壱都が制する。
「その前に。今回は『地球の為』というテーマにより寄せる方がいいですよね」
「そうですね。八重崎さん、何かアイディアをお持ちですか？」
「どれだけ多くの人と協力し合えるかという要素の重要性を鑑み『丸いもの』に使う食材を寝子島各地の農家や店舗その他食料関係を扱う業者に交渉して協力して頂くというのはどうでしょう？　……といった形で」
「形が悪かったり、加工過程で出てくる廃棄品等を譲って貰い、具材にするということですね」
「その通りです。『食糧問題』に向き合うという趣旨になります」
「良いですね」
　すぐに話はまとまり、紫苑と壱都は当日までの間に漁港や市場、商店街等に食材を融通してくれないか交渉して周ることになった。
　
「すみません。寝子島高校の者ですが、商品としては不十分だったり加工過程で余ったもう捨てられてしまうような食材を譲って頂けないでしょうか」
　壱都は、各所でそのように交渉してまわった。
（寝子島に来て半年……まだまだ土地勘もなく、姉のように行かないでしょうけど私に出来る精一杯で愚直にお願いして周りましょう））
　姉の五郎八は、この１年、生徒会書記を務めてきた。
　自由な気質でしっかりしていて、妹の目には眩しい、尊敬する姉である。
　その姉の背中を見ていたからこそ。追いかけたいと思う背中だったからこそ。
　今自分はここに、こうしているような気がする。
　壱都の誠実さが通じたのだろう。ほとんどの場所で、市場に出せないけれど充分食べられる食材などを分けてもらうことができた。
　一方紫苑は農家等の生産者を調べたり教えて貰ったりして、直接、畑などを訪ねて回った。
「小さすぎて出荷できないものや、傷がついているものでいいんです。不格好だからって廃棄してしまうようでしたら、私たちに譲っていただけませんか？　お料理して美味しくいただきますので」