【演劇祭】ワンス・アポン・ア・タイム・イン・寝子島！｜リアクション

【演劇祭】ワンス・アポン・ア・タイム・イン・寝子島！

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　暗転後、舞台裏が一気に慌ただしさを増す。
　竜宮城のセットを大急ぎでさげて、次の場面のセットを展開する。
　その傍らで、佐藤英二はイスと机のセットの具合を確認していた。
「結構派手に蹴飛ばされてたけど、大丈夫かな」
　次に使う場面があるかはわからないが、確認しておいて困るものでもない。
「壊れちゃったんですか？」
「いや、大丈夫みたい――」
　何の気はなしに振り返れば、相変わらずのメイド姿の巫部紫苑が後ろから覗いていた。
　セクシー極まりない胸元が視界に入って、反射的に視線をイスと机の方へと戻す。
　紫苑はそんな英二の様子に首を傾げつつ、
「そういえばお城のシーン終わっちゃったみたいですけど、メイドの出番はもう終わりでしょうか？」
「一応、また出る準備はしておいてもらっていいかな？」
　即興劇だから、この先もどういう展開になるかはわからない。流れで出ることになることになるかもしれないし。
　わかりました、と紫苑は楽屋の方へ向かっていった。

　――で、楽屋に戻った紫苑は、ふと空腹感にみまわれた。
　ふぅ、と小さく息をつく。
「演技ってお腹が空くんですね……」
　慣れないことをして、多少なり疲れたというのもあるだろう。
　楽屋のイスに腰を落ち着けると、劇に参加する前に買っておいた食べ物を少し食べて腹ごしらえすることにした。
　竜宮城のシーンが続いている間は、メイドが戻るタイミングがなさそうだとは思いつつも様子を伺っていたから、食べる時間がなかったのだ。
「喉かわいちゃった～」
　紫苑がもぐもぐ食べ進めていると、響タルトが楽屋へと入ってきた。絢との大立ちまわりで走り回っていたせいだろう、暑そうに手うちわをパタパタやっている。
　ペットボトルの水を飲みつつ、紫苑の方を見て思わずといった様子で、
「そんなに食べてて大丈夫？」
「大丈夫ですよ？」
　小首をかしげ、きょとんとする紫苑。
　彼女の目の前には、軽く一食分くらいの食べ物が置かれている。
　間食としてはだいぶ多いし、大丈夫かと訊かれるのも納得だった。