【演劇祭】ワンス・アポン・ア・タイム・イン・寝子島！｜リアクション

【演劇祭】ワンス・アポン・ア・タイム・イン・寝子島！

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　海賊も姿を消して、ただただわびしい静けさだけが残る竜宮城。
　今となっては、竜宮城『跡』とでも呼んだほうが正確だろうか。
　照明も暗く沈んだそこへ、緑のゴスロリちっくな衣装に身を包み、白猫を頭に乗せた魔法少女がやってくる。

　曖浜瑠樹演じる、魔法少女だ。
「こーんにーち……りゅ、竜宮城がボロボロだよぉ！」
　変わり果てた竜宮城のあり様を目の当たりにして、愕然とする魔法少女。おろおろと舞台の上を歩きまわって、転がったままのイスや机の様子を伺う。
　頭に乗っけたマティエ――白猫のリコーダー入れを見上げて、
「魔法でなおせるかなぁ？」
　杖がわりのリコーダーを、今は少々頼りなさげに握りしめる。
　そんな時だった。
　――カツン、カツン。
　魔法少女がやってきたのとは反対側から、一つの影がやってくる。
　パッ、とスポットライトがその姿を照らす。
　目にも鮮やかな深紅に、深いスリットの眩しいチャイナドレス。そして手には、見るからにゴツくて大きなモデルガン。
　昔話どころかファンタジー感も皆無の出で立ちのその女性は、水谷真優理だった。
「あらあら。しばらく来ないうちに、寝子島もずいぶん物騒になったわねえ？」
　肩をすくめて辺りを見まわし、魔法少女に目を留める。
「あなたがやったの？」
「ええっ！？　違うよぉ！」
「冗談よ。私は時空警察の捜査官。あなたは？」
「オレは魔法少女でねこっかぶりの……えーと……えーっと」
　役の名前、なんだったっけ。
　考えてあったはずなんだけど、ど忘れしてしまった瑠樹だった。
　まったく思い出せなくて、背中にちょっぴり冷や汗がにじむ。そこでようやく、
「……るーじゅ！　服装が緑なドレスだから『みどりのるーじゅ』だよぉ！」
　思い出したのではなく、思いついた。
　なにせ、名前を音読みしてもじっただけだ。
　お城に遊びに行こうと思ったら大変なことになってて、とるーじゅが説明すれば、「災難だったわね」と時空警察。
「これはブラックバニーの仕業よ。まさか竜宮城を破壊するなんて……やりすぎね」
「お姉さんは、そのブラックバニー？を追いかけてるの？」
「そうよ。ブラックバニーは歴史を捻じ曲げようとしているの。私は時空警察として、それを止めなくちゃいけない」
　完全にSFな話の持っていき方をすると、時空警察はモデルガンを担ぎなおした。
　るーじゅに背を向け、どこかへと歩き出す。
　きっと、ブラックバニーの追跡に向かうのだろう。
　その背中へと、るーじゅはリコーダーを一振りした。
「ゆるるふーわ、けなみふーわ、ブラックバニーを見つけられるようになーれ！」
　しゃららーん、とファンシーな効果音に包みこまれる時空警察。
「ありがとう、必ず見つけて止めてみせるわ！」
　振り返ることなく、そのまま舞台袖へと姿を消していく。
　そんな彼女をるーじゅが見送ったところで、舞台は一度暗転した。