【演劇祭】ワンス・アポン・ア・タイム・イン・寝子島！｜リアクション

【演劇祭】ワンス・アポン・ア・タイム・イン・寝子島！

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　場面転換が終わる。
　再び照明のともった舞台上に居るのは、白いスーツに身を包んだ八神修と、水色のナイトドレス風の衣装を纏った七夜あおいの二人だった。
　夜空をイメージした背景に、ワイヤーを使ってふわふわと浮かび上がっている。
「ピーター、私たちこれからどこへ行くの？」
「君が行きたい場所ならどこへでも行けるさ、ウェンディ。どこへ行きたい？」
　

　エスコートするように手を差し出す修――ピーター。どうやら二人が演じるのは、ピーターパンとウェンディのようだ。白スーツの紳士然とした姿のピーターパンは、かなり印象的だった。
「私が行きたい場所……」
　少し真剣な様子で考えるウェンディを、微笑み混じりに見つめるピーター。
　そんな時、お侍さんのような格好をした野々ののこが、サンマの描かれた幟を掲げてずんずんやってきた。
　後ろには、タルトの猫娘と柚瀬玲音のペンギンがお供のようにくっついている。
　舞台の真ん中くらいまでやってくると、客席の方を向いてののこは叫ぶ。
「せっしゃはサンマから生まれたサンマ太郎！　これから鈴島へ鬼退治に行くところなんだ！」
「ボクたちはサンマ太郎に助けてもらって、仲間にしてもらったんだ！」
「他の皆とは離れ離れになっちゃったのにゃ！」
　場面転換の間に相談でもしたのだろうか、ペンギンと猫娘は鬼退治のお供になったようだ。犬・猿・雉ポジションということか。
「ねーねー、そこの二人は何してるのー！」
　サンマ太郎の呼びかけに、ウェンディとピーターは舞台へと降り立つ。
「俺たちは、これからどこへ行こうかって話をしてたところなんだ」
「だったら一緒に行こうよ！」
「鬼退治にってこと？」
「そうそう！　一緒に来てくれたら、このサンマ団子を……」
　お腰につけたサンマ団子に手を伸ばし、そしてサンマ太郎の表情があからさまにこわばった。
「サンマ団子を？」
「サンマ団子を……」
　サンマ太郎が、笑顔のまま固まる。
　小道具忘れたんだな、とあおいと修が気付く。
　直後、猫娘が不意に声をあげた。
「ごめんにゃサンマ太郎！」
　きょとんとした視線が集中する中、ぺろっと舌を出して軽く頭をさげる。
「最初にもらったサンマ団子が美味しすぎて、残りを全部こっそり食べちゃったのにゃ」
「えー！　猫さんずるいよずるいよ！　ボクも食べたかったのに！」
　ぺちぺちと叩くペンギンに、「ごめんにゃ～」と反省の色があんまり見られない顔の猫娘。
　ナイスなアドリブフォローだった。
「でもどうしよう。このままだと、サンマ太郎は困るんだよね？」
　ウェンディが問いかけたその時、「こんばんはー！」と元気いっぱいの声がした。
　魔法少女、みどりのるーじゅである。
「魔法少女か、いいところに来てくれた」
「なにかお困りー？」
　実は、とピーターがかくかくしかじかで事情を伝えると、るーじゅは「まかせてよぉ！」と胸を張った。
「ゆるるふーわ、けなみふーわ……サンマ団子よでてこぉーい！」
　呪文を唱えてリコーダーを振ると、しゃららーんの効果音。
　そして次の瞬間、お団子が入ってそうな小袋がひゅーんと舞台袖から投げ込まれる。
　小袋の中身を確認すると、サンマ太郎の表情がパァッと明るくなった。
「るーじゅ、ありがとう！」
「どういたしましてだよぉ！」
　サンマ団子も出てきたところで、サンマ太郎は気を取り直した様子。
「鬼退治に一緒にきてくれたら、このサンマ団子をあげるよ！」
「どうする、ウェンディ」
「じゃあせっかくだから、一緒に行こうよピーター！」
　にっこりと笑うウェンディに、微笑みをひとつ浮かべてピーターはうなずいた。
「君がそう望むなら」　
　こうしてピーターパンとウェンディは、サンマ太郎たちと一緒に鬼退治に向かうことになった。
　けれどその道行きには、困難が待ち構えていたのだった。