お化け屋敷でハロウィンを｜リアクション

お化け屋敷でハロウィンを

●かぼちゃおうさまだ！

「ははは！　ちいさな姫達よ、今日は我らが祭りによく来たな！」
　ススキをはらいながら瀬莉の目に飛び込んできたのは、出来立てほやほやな様子のジャック・オー・ランタン。
　畑の跡地らしき場所にえへんと言いたげな様子です。
「Jack-o'-Lantern！」
「かぼちゃおうである」
　ふよふよおばけに触りふわふわとした視界の中でも瀬莉やトワはかぼちゃおうの姿を確認します。
「くろねこやふよふよにも触れたのか……実に勇敢な姫達だな」
　なんだか偉そうにしていますが大きなかぼちゃのジャック・オー・ランタンは喋るだけです。
　どうも先程から出会うお化け達はいたずらをしてきますが、彼らには自分達をいじめる、悪意はないのではと瀬莉は感じていました。
「あの……ここに男の子が来なかった？」
　屋敷の扉を指さし、男の子──リョウタ君のことを聞いてみました。
「男の子。ああ姫達と同じ年頃の子ならば屋敷へと入っていったぞ！　むう。我も行きたいのだが……」
（……！　リョウタ君がいるんだ！）
　瀬莉が思わずかぼちゃおうにもっと話を聞こうと近づきます。
　かぷり。
　かぼちゃおうの口が動きます。痛くもなく、甘噛みでした。
「お、おおすまない！　これは我の癖で……！」
「だ、大丈夫だよ。痛く、ない、から……あれ？」
　トワもかぼちゃおうの所に近づきます。かぼちゃおうも瀬莉も変わった様子はなさそうでした。
「どうかしたのデス？　（にゃんにゃん」
　ゆっくりと瀬莉が振り返り、少し小さな声で言いました。
「ト、トリックオアトリート……」
「wow！　トワはノーSweetsなのデス！（にゃんにゃん」
　トリックオアトリート。お菓子をくれなきゃ悪戯を。悪戯をする気分にはなりませんでしたが、なんだか甘いものが食べたい。
（チョコに、飴に、ええとええと……）

「それじゃあ僕がお菓子をあげよう。ふっふっふ、色々ありますよ～」
　突然響いたのは少し大人っぽい声。二人の小学生が振り返ると、タルトがえへんと立って用意していたお菓子達を渡します。
　かぼちゃのクッキーを選び、ぱくりと食べると瀬莉の甘いものが欲しい気持ちはすっと消えました。
「ありがとうございます」
　ぺこりとお邪魔をした瀬莉にお安い御用だよ☆とウィンクしたタルトはかぼちゃおうの前に立ち、顔を近づけます。
（襲ってきたり、屋敷に閉じ込めたりはしないなら）
「君たち、何か目的があるの？　誰かに恨みがあるとか見つけてほしいわけじゃないのかな？」
　かぼちゃおう、ふよふよおばけ、いつのまにかにゃあと近くにいたかげねこに聞いてみることにしました。
「……目的。あえていうなら」
　笑い声と猫の鳴き声のなかかぼちゃおうはどこか恥ずかしそうに言いました。
「わ、我は屋敷の中に入って、そ、その……パーティーに参加してみたくて」
　三人は顔を見合わせます。
　屋敷の中にもおばけはいるのでしょうか？