お化け屋敷でハロウィンを｜リアクション

お化け屋敷でハロウィンを

●おばけと猫と少年

「ごめんなさい。本当にあなたとダンスする気はなくって」
　何度目かになるこうもり男爵からのダンスの誘いを水樹はすげなく断りました。
「用事が済んだら付き合うよ、けど今は忙しくて」
　ヒューががいこつ夫人の誘いを断るのも、これで三度目です。
「ここのおばけたち全然悪意を感じないから怖くないわね」
「そんなこと言って、僕に抱き着いてきたのはだれだっけ？」
「最初だけじゃない。扉を開けたら突然いたからビックリしただけ。今は怖くない。……悪戯を仕掛けてくるのはちょっと困るけど、それだって大したことはないわ」
「そうだね事情を知らなければ本当にパーティーのコスプレかと思ってしまいそうだ」
　構ってほしそうに項垂れるこうもり男爵とがいこつ夫人に、一抹の申し訳なさを感じないではありませんが、ヒューと水樹の目的はテオから聞いた男の子です。
「なかなか見つからないな」
「そうね。ここを通った、っておばけたちは口をそろえて言うんだけど……どこまで行っちゃったのかしら」
「もう少し奥かな。行ってみる？」
　同意するようにくす、と笑って、水樹はヒューを見ました。
「ねえ、用事が済んだらって本気？　がいこつ夫人とダンスするの？」
「してもいいかなと思っていたけれど……何かまずかったかな」
「べつに。だったら私もこうもり男爵と踊ろっと」
　水樹はほっぺたを膨らませます。そんな恋人をヒューは可愛いなあと見つめました。
　そのときです。一匹のシマシマ猫が廊下の角から出てきました。
　猫は赤いリボンを首に巻いていて、うっすら毛が濡れています。
　猫はヒューと水樹を見つけると、ついて来いというように「にゃーお」と鳴いて尻尾を振りました。
「あの猫はおばけじゃなさそうね」
「ついて行ってみよう」
　角を曲がると扉がいくつも並んでいます。
　屋敷に暮らしていた人たちの寝室のようです。
　並ぶ扉のうちのひとつが薄く開いています。猫はするりとそこに身を滑り込ませました。
　水樹とヒューは猫を追って戸を開けました。
　そこには――ひとり画用紙を拡げてお絵かきをする少年――リョウタ君の姿がありました。

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