穴、穴、あなかしこ｜リアクション

穴、穴、あなかしこ

●穴堀り穴助氏

　時刻は少し遡る。

「喉乾いてきたのだ……ううんまだ頑張るのだ。……何か真っ暗なのだ～」
　なおも真央は、「穴！」と叫び続けていたが、その声には先程までの勢いはない。
「何か息苦しい気がするのだ……はっ、まさか二酸化炭素で穴いっぱい！？」　
　どうしよう、あきらめたくはないけどこのままでは……
「あれ？」
　穴の隅に、何か動くものがあることに真央は気づいた。
　パッと見土と区別がつきにくかったが、よく目を凝らすと、それはピクピク痙攣している小さな生き物だった。
「ひょっとして穴掘り穴助氏なのだ？！　大丈夫なのだ？」
　そっと抱き上げた生き物は目を閉じていて、なんだかぐったりして苦しそうに見える。
「もしかして堀りすぎて疲れてしまったのだ？
　……穴助氏！　死なないでなのだ！」
　真央は、苦しそうな穴堀り穴助の姿に決断した。
　携帯を取出しメールを打つ。
『修ちゃん、天野ちゃん、へるぷみー、へるぷ穴助なのだぁ』
　そして先の着信となった。

　　　　　　　　　　●　　　　　　　●　　　　　　　●

　元々、時間がたてば塞がる穴である。
　修たちが駆けつけた時にはほとんどの穴が塞がっていた。
　一番大物の真央の穴も底が近づき、真央の頭が見えていた。
　天野が脚立を下ろすと、真央は片手に何かを抱えて駆けあがってきた。
「脚立を片付ける前でよかった。……それは？」
　真央の抱えた小さな生き物を見つけ、修が言った。
「助けてほしいのだ！　きっと、穴掘り穴助氏なのだ」
「本当にモグラだったんだな……」
　近づいた刀が言う。
　「穴」という言葉を言っても、もう穴が開くことはなかった。

「モグラさんの手当てはしたことがないのですが……」
　戸惑いながらも、聖が優しくモグラの体をぬぐってやる。
　修と天野も注意深くモグラの体を眺める。
「見てわかるケガはなさそうだね」
　しばらくするとモグラは目を開いた。
「大丈夫か……？」
　修の問いかけに、頷いたように見えた。
　次の瞬間、まぶしそうな顔で地面へ飛び降りた。
（ボコッ）
　開いた小さな穴へ素早くもぐって消えた。
「これぞ『穴があったら入りたい』という様子なのだ。元気になってよかったのだ～」
　と真央が言った。
「行ってしまったか……。検証はできなかったが、穴吹先輩とあのモグラ、両方の力による現象だったんだろうか？」
　修は残念そうだ。
　検証できなかったことと、モグラが帰ってしまったこと、どちらがより残念だったのだろうか？
　ほっとした聖は、ふと自分の服に目を落とした。
「ううっ、服が汚れてしまいました。帰りも遅くなるし散々です。でも……」
「……でも？」
　問いかけた澄佳ににっこり、笑顔を向ける。
「怪我をしている人やモグラさんを助ける事ができて良かったです」　
「一件落着だな。よかったらパン食わねえ？」
　ラッセルが取り出したちょっと潰れたパンに、何人かが手を伸ばした。
　
　校庭の穴は、跡形もなく消えていた。

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あとがき

担当マスター：天村花海
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ご参加ありがとうございました。
何をしていいかわかりにくいガイドだったようで、そんな中ご参加くださった皆様には本当に感謝です。

穴吹拓也のろっこんは、恥ずかしい思いをしたとき「あな」と発言すると自分の足元に小さな穴があく、というものでした。
一方、穴堀り穴助（真央さん命名）は神魂の影響で「穴と接触すると、その穴が大きくなる」という能力を得ていました。
二つの力が出会って、暴走して相乗効果を発揮したようです。

それでは、次回シナリオでお会いするのを楽しみにしております。

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