紅葉狩りと芋煮会｜リアクション

紅葉狩りと芋煮会

○親子で芋煮会

　森篠琳子は、この日母親と妹の奏子（９歳）と共に芋煮会にやってきました。
　平和な秋の日ですが、琳子にとっては人生の転機が訪れたばかりでした。
　先月受けた寝子島信用金庫の採用試験の結果が学校に届き、結果は合格だったのです。
　これで来年４月から社会人になることが決定しました。
（来年の今ごろは社会人として働いてるのね……）
　特に社会人一年生ということもあって遊んではいられないでしょうし、母子家庭で母も保険外交員として働いているので、しばらくは奏子に寂しい思いをさせるかもしれません。　
　そんなことを思っていると、サンマさんとマンボウくんを見つけた奏子が駆け寄ってじゃれついているのが見えました。
（私の子供の頃って……大人しかった。少なくとも、あんなふうにははしゃがなかったな）
　そんなことを思っていると母親が、
「琳子も子供の頃は奏子みたいにはしゃいでたのよ」
　と言いだしました。
「そうだった？」
　問い返す琳子自身は、全然記憶にありませんでした。
（ここ２年くらい、思いつめていたせいで子供の頃なんて思いだせなかったからだろうか？）
　そんなことを思います。
　父親が病気で亡くなったのは、高校１年生の時でした。
　ため息をつくと、琳子は芋煮を食べました。
　味噌味なので芋の甘みが増して、優しい味が沁みるようでした。
　サンマさんによそってもらった芋煮を美味しそうに食べる奏子を見ながら、寂しい思いをさせずに済むといいけど、と琳子は思うのでした。　

「バーベキューもあるみたいよ、行ってみようか」
　琳子の提案に奏子は顔をほころばせました。
「肉だけじゃなく野菜も食べるのよ。あ、そこ焼けてる」
　子供も含めた女三人が満腹になるにはさほど時間もかからず。
　琳子たちは満足して会場を後にしたのでした。
　
　

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