ぶらり、マタ旅！｜リアクション

ぶらり、マタ旅！

「おや、御剣。何してるんだい？」
　たまたま旧市街に買い物に来ていた逆巻天野は、檀屋の外で待機していた刀に声をかけた。
　檀屋の店内を覗いてみると、店内には人がたくさんいて、カメラを持った人があちらこちらを撮影して忙しそうにしている。
「賑やかだね。何かあったのかい？」
「『ぶらり、マタ旅！』の取材だ。寝子島のいろんな場所を紹介するんだそうで、俺と小山内は旧市街の案内をしてる」
「へえ……それは面白そうだね」
　そんなふうに刀と天野が話していると、檀屋からぞろぞろと取材班が出てきた。どうやら取材は無事に終わったようだ。
「お待たせしました。あれ、一人増えてますね。お知り合いですか？」
　刀は取材班一同に軽く紹介をし、天野は取材班に小さく会釈をした。
「逆巻です。ねえ、道案内を手伝いますから、僕もついて行ってもいいですか？　僕もこの町のこと知りたいんだ」
「もちろん！」
　カメラマンは天野にカメラを向けた。しかし天野はそれを避ける。
「そーゆーのは苦手なんで」
　やめて下さい、と言う。
　せっかく道案内してくれるのであれば、番組関係者としては是非とも出演してもらいたい。しかし本人にその気がないのでは無理強いはできない。
「んー、まあ画面外のスタッフがよく喋る番組もあるしね。いいんじゃないの」
　そんな四々郎の一言によって、天野は声のみの出演の道案内役をすることとなったのだった。

　取材班一行が、さて次の行き先をどうしようか考えていると、
「天野ちゃーん！」
　という元気な声が聞こえた。天野の元に走って向かって来るのは、後木真央だ。
「今日はマタ旅の撮影クルーが来るらしいのだ！　天野ちゃん、何か知らないのだ？」
「この人たちが、その撮影クルーだよ」
　真央は目を輝かせながら撮影機材を眺めた。
　テレビの撮影方法を見学したら、取材の勉強にもなるかもしれない。そう考えた真央は、
「お願いなのだ、真央ちゃんもついて行きたいのだ！」
　と同行を申し出て、取材班はそれに二つ返事でOKした。
「じゃあ、この辺で何か良いところ知らないかな？」
　四々郎がそう聞くと、はいはーい！と元気いっぱいに手を上げて答える。
「旧市街にお好み焼きのお店があるのだ！　高校生に人気のお腹いっぱいのお店なのだ！」
「そのお店まで連れて行ってもらえる？」
「案内するからついて来るのだ！」
　張り切り過ぎたのか、真央は一人で先に突っ走って行ってしまった。
「行っちゃった……」
　取り残されたスタッフたちは呆然としたが、その店の場所は刀が知っていた。先程までと同じように、刀の案内で一行は次の目的地へと向かう。