ボイスコンテンツ搭載！　大きな声を出そう！｜リアクション

ボイスコンテンツ搭載！　大きな声を出そう！

11

（これが、自分の声か……）

　後頭部をさすりながら、自分の声をじっと見る心。
　先ほど有戸にやられて、やり方を変えることにした。
　どうも声を出すと、その声が実体化するらしい。

　心の声は、他人のブロックのような固いものではない。
　紙のように『薄っぺらく』『軽い』。
　輪郭線が黒く、中が白い。袋文字というやつだ。
「つまり……『中身がない』ってことね」
　心は自嘲する。

　海やまゆらもそうだが、声の形は自分の評価でいくらでも変わる。
　心の言葉の形が現在のようにいびつなのは、つまり心自身の自己評価がそうであるからなのだろう。

　一文字づつではなく、文章全体が横書きの固まりになる。
　アラビア文字のような様子だ。
　ただ、その上下は綺麗な横一列ではなく、微妙に上下にぶれている。
『筋が通っていない』

　字が書かれているのは片面のみ。
『裏表がある』

　どうも様子を見ていると、この固まりを壊したり、破いたりすると声が戻る。
（ということは･･････それによって『人間惨禍』の発動条件は満たせる！）

　大量の「お前はただの人間だ」を抱えて、戦場に戻った心。
　至る所に、紙状の声を仕込みまくった。
　紙状の言葉は、薄く、軽い。中身がないので、変幻自在。
　筋がとおっていないので、微妙な隙間に侵入することもできる。
　裏表があるので、あいての不意を突くことができる。

「リベンジよ！」

　さっきのあいつは･･････と探し、有戸のそばのブロックに声を配置。
　発動するとみるや、心は有戸の前に仁王立ち。
　勧進帳を読み上げる弁慶さながら、紙を向けて、鬼神の相で紙を破り捨てる。

「お前は、ただの、人間だー！」
「お前は、ただの、人間だー！」
「お前は、ただの、人間だー！」

　絶叫し、のたうち回る有戸。
　もはや、自力で立ち上がることもできない。

「十数回分の、人間惨禍を一度に受ける気分はどう？」

　酷薄な笑みを浮かべる。

「ちがう、俺はただの人間じゃ･･････ない」

　それでも立ち上がろうとする有戸の耳元に唇を寄せ、心は呟く。

「ただの人間よ」

　紙束で往復ビンタし、あえなく有戸は倒れる。

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