あなたのヒーロー教えて下さい！　ヒーローインタビュー｜リアクション

あなたのヒーロー教えて下さい！　ヒーローインタビュー

【今は遠い国にいる大切なヒーローへ】

　天川春太郎は、番組宛ての手紙で気になるものを見つけ、スタッフと話し合った。
　差出人は寝子島在住の志鷹若菜という女性で、今は亡き大切な人への感謝の気持ちが綴られている。
　亡くなった人をヒーローだと推薦するケースは少なくない。そして、その場合は番組の演出に細心の注意が必要だ。
　差出人はおそらく、喪失感を受け入れ前に進みたいと願い、番組に手紙を送ったのだろうから。

◆

　数日後。寝子島総合病院。
　昼下がりの中庭、入院中の子供達が遊ぶ声が聞こえる中で、撮影は始まった。
　若菜と春太郎はベンチに座り、ユキは大人しく足下で伏せている。
　彼女は手紙を開き、ゆっくりと読み上げ始めた。

　――この想い、どうか貴女に届きますように。
　私、志鷹若菜は今、寝子島総合病院で小児科医をしています。
　貴女がＴＶを観ていたら驚いちゃうかな？
　ずっと、母と同じ職業に就きたいと話していたからね。

「『母と同じ職業』というのは？」
「えぇ、私の母は産婦人科医でして。幼心に憧れて、医の道を志しました」
「では、ヒーローと知り合ったきっかけも医療関係ですか？」
「いえ、それは……双子の弟に恋人として紹介されたんです。もう、いつの間にって驚いてしまいました」
　くすっと笑う若菜に、「それから？」と春太郎は続きを促す。

　――貴女は子供の頃に病を得、夢に一歩近づいた頃、再発に倒れましたね。
　自分の体が一番辛いのに、闘病中も常に周りの人を気遣い
　死の恐怖と戦いながらも明るく振る舞う、強く優しい子でした。
　日々、精一杯生きようとする貴女の姿に、私は何度も励まされたよ

　そんな貴女が旅だった日、私と弟は一晩中泣きました
　生前の笑顔、闘病中の姿、弟の涙が心に焼き付き、消えず
　かつての貴女のように病で苦しむ子を見るたび、その子の未来を想うようになった

「なるほど……それで、産婦人科から小児科へと方向転換をされたわけですね」
「はい。この手で彼らを幸せにしてあげたいと、強く思うようになったからです」

　医学生時代、辛い実習で心が折れそうになった時
　患者さんが泣くなって泣いていた時
　どんな時も貴女は私に寄り添い、心を救ってくれたね

　私の弟……貴女が愛した人は日々、患者さんの命を救う為に頑張っているよ
　彼の姿、どうか見ていてあげてね

　貴女が居たから今の私が在る
　私と出逢ってくれて、ありがとう

　ずっと　ずっと　大好きです

◆

「撮影終了です！　ありがとうございました！」
　スタッフの合図と共に、手紙を読み終えた若菜の瞳から、涙がつぅ、と伝って落ちるのが見えて、春太郎は
慌ててハンカチを差し出した。
「ありがとう……ごめんなさい」
　涙を拭く若菜に何も言えなくなり、ユキに目をやると。心得たという風に、鼻を鳴らして若菜に甘えだした。
「慰めてくれるの？　優しいね」
「ユキは女の子ですから。僕よりも、志鷹さんの気持ちが分かるのかもしれないなぁ」
「そうなんですか？」
　優しく頭をなでる若菜に、ユキはわんわん！　と元気よく返事をしたのだった。

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あとがき

担当マスター：陣杏里
ファンレターはマスターページから！

皆さまこんにちは。
集団ヒーローは番組は見ていないけど、バイクに乗るヒーロー番組は見ている、陣　杏里です。

この度は、参加者さんそれぞれのヒーロー像をいただき、「なるほど！　こんなヒーローもありかぁ」と
楽しく書かせて頂きました。
ちなみに、秘密結社ムートンでは、新規の構成員全員に、100％天然羊毛製のお布団敷きマットを
プレゼントしています。
毛足がヘタってきたら、秘密結社の超科学で新品同様に復活させるサービスもおつけしているので、
いつでもフッカフカですよ！

……いえ、今思いついたプチ設定です。ごめんなさい。

参加頂いた方、お読み下さった方、ありがとうございました。
では、この辺で失礼します。
陣　杏里でした。

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