暴け！　大人だけのヒミツの暗号｜リアクション

暴け！　大人だけのヒミツの暗号

　ムテンが回収したメモを、少年探偵団はマジマジと眺める。
　『イロハは129561』これが何を意味するのか。あーでもない、こーでもないと意見交換が始まった。
「そろそろ、ひとしきり情報が集まったかな？　俺にもヒント、見ーせーてー☆」
　武道は目線を合わせるようにしゃがみこんで、仲間に入れてもらおうと声をかけた。
　どうにも読めない一文はあるが、大体は読めたので解き方はこの方向で合っているはずだ。ならば、どうしてあの一文は解けないのか。
　武道が考え込んでしまったので、彰尋は子供たちへヒントになればと、"は"を"＝"にしてみたり、"イロハ"の文字にふりがなとなるように"129561"と書いてみたり。あくまで思いつきの走り書きのようにして、子供たちの気付きを促してみた。
「はい、お嬢さん。おまちどうさま」
　近くの席に、何かが運ばれてきた。それは、月詠のオーダーだったようだ。
「お姉さん、もう休憩すんのかよ～。俺だってジュース飲みたいのに！」
「私はわるい魔女だからな」
　数字の書かれたメモをヒラヒラさせ、ふかふかのソファで優雅に一服。
　そこには、龍樹が持っていたものと同じ―314513　729323　151574―と書かれている。
「な、なぁなぁっ、魔女ってホントにいるのかよ!?」
「まじょ、すごいひとれす！　みみつけっしゃ、すごいひといそーれす！」
「き、きっと同じ番号で何が運ばれてくるか、試しただけよ！」
　そうだ、魔女なんているわけない。
　瀬莉は、そーっと月詠に近づいて、彼女が何を飲んでいるのかちらりと様子を伺った。
「なんだ、飲みたいのか？　甘いから飲みやすいと思うが」
「い、いらないもん！」
　慌てて皆の元へ戻り、龍樹が最初に持っていたメモへ『カフェオレ』と書き足してみた。
「カフェオレのはずだけど、でも……思ってた解き方と違う」
　ぎゅうっと悔しそうに膝の上で拳を握りしめる姿が妹と重なったのか、彰尋は隣に座って優しく語りかけた。
「俺も、自分の答え合わせをしたいから、佐藤さんの解き方を聞きたいな」
　子供扱いしすぎず、わざとらしい大人扱いにもならないように。
　この年頃の女の子が大人びたい頃であることを重々知っている彰尋は、彼女の機嫌を損ねないように努めた。
「このメモ……こっちのノートも、数字の数が偶数でひとかたまりになってるの。だから、このメモだと……３文字の単語が３つ……だと思ったんだけど」
　数字が２つセットで、別の文字を現している。そこまで掴んだが、その現している文字がひらがななのかアルファベットなのかまではわからない。
　しかも、月詠が飲んでいたのはカフェオレだ。コーヒー牛乳としても字数が合わないし、そもそも単語が３つに分かれていない。
「アルファベットだと……café au lait、かな。３つに分かれるけど、字数が違っちゃうね」
「英語でカッコつけんなよなー。カフェオレって、コーヒーに砂糖と牛乳を多めに入れただけじゃんか」
「砂糖と牛乳を、多めに入れただけ……？」
　本当はカフェオレに砂糖は入っていないのだが、そんな野暮なことをわざわざツッコむ人もなく。
　月詠は席から微笑んで、その行く末を見守っていた。
「それよ！　あのお姉さん、甘くて飲みやすいって言ってたもん。砂糖もミルクも、多めなのよ」
「俺すっげぇ！　……あれ？　でも全部３文字だぞ、ミルクと砂糖になるかも……？」
「いや、砂糖とミルクで順番は合ってると思うよっ☆」
　ここぞとばかりに、ヒントノートを作ってウキウキ待っていた武道が混ざってくる。
「まず、『おおめ』って『お』が２回入ってるから『15』が『お』だとして――」
　残る74は『め』、砂糖ミルクの順だと仮定して、『さとう　みるく　おおめ』に対応する数字へと文字を割り振った。

　11：？　12：？　13：う　14：？　15　お
　21：？　22：？　23：く　24：？　25　？
　31：さ　32：？　33：？　34：？　35　？
　41：？　42：？　43：？　44：？　45　と
　71：？　72：み　73：？　74：め　75：　
　……………………
　91：？　92：？　93：る　94：？　95　？

　何かに似ている――少年探偵団が閃くまで、そう時間はかからなかった。