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「待ってくださいよ、待ってくださいませんか。ねえ?」
根積と名乗った男は、鼠を追い詰めた猫のようにニタニタと顔を歪めた。
いや、このたとえは正確ではないだろう。
実際は、追い詰めているほうが鼠なのだから。
「あなた、三十分ほど前に私を追い払おうとして鞄を振ったでしょう。その鞄が、偶然とはいえ私の横面、正しくは右のこめかみから五センチ幅くらいの位置を殴打しましたね。痛かったですね。合皮みたいですけどけっこう硬いハンドバッグだったから。鏡はまだ見てませんが、赤いあざになったかもしれない。あなたは謝って逃げましたけど、ごめんで済めば警察はいらないんですよ。ようく記憶に刻み込ませていただきました。私ね、けっこう執念深いたちなんで」
根積が一歩踏み出したとき、変化が生じた。
ぱんと音が立つほど勢いよく、その右脚が膨らんだのである。おそらく針金みたいに細かったであろうものが、丸太のごとくはちきれんばかりになったのだ。オーバーサイズだったスーツのパンツが一瞬で、内側からの圧により破裂寸前だ。
「ねえ、そうでしょう?
ナターシャ・カンディンスキー
さん?」
さらに踏み出した左脚もやはり、金剛力士像さながらだ。
夜の波頭、人気(ひとけ)のない倉庫街の一角、ナターシャの目の前で根積の体は変化を始めていた。
腕も胸も首も、内部からむくむくと膨張していく。鋼鉄のように引き締まっていく。
一方で手や足のサイズはそれほど大きくなっていないらしく、ほぼ元のままなのでひどくアンバランスだ。部分部分にシリコンを注射して注ぎ足したかのような異形の姿だった。
「おっと、眼鏡を壊すところでした。
『マウス』
に変化する過程でねえ……よくやっちゃうんですよ、私。今の眼鏡はすぐ気がついて外したので、塗装が剥げるだけですみましたけども」
鼠は眼鏡を外し、ケースに入れて背広のポケットにしまった。
「だからねえ、私は眼鏡、眼鏡屋がバーゲンをしているときにまとめて何個も買うようにしてるんですよ。かつては同じ眼鏡を五個買ったこともあるくらいです。どうでもいい話ですけどね、これは」
顔の変化はもっとも顕著だった。鼠そっくりの顔面へと急激に変わりつつあるのだ。毛穴という毛穴から灰色の剛毛が生え、尖った顔を覆い隠してしまう。左右に数本、菜箸のような長い髭も伸びている。そういえば根積の手も、硬そうな毛にすっかり覆われているではないか。
いひひ、と甲高い声で根積は笑った。
「ずっと私はいじめられっ子でした。上履きや筆箱を隠されたり無視されたり、蹴っ飛ばされたりはしょっちゅうでした。そりゃあこんな外見で卑屈な性格なんだから仕方がないですよねえ。でもね、いつからか私をいじめた悪ガキは、みいんなおっかない怪物に襲われて大怪我するようになりました」
にたりと歪むその顔はすでに半分以上、人類のそれではない。
「中学のときは死者も出た。田舎のことですから大したニュースにもならず、むしろ隠蔽されましたけどねえ。奇妙なことに連中はみんな、私を殴ったり蹴ったりした部分をそっくりそのまま何十倍何百倍の力でやり返されていたんです。当時私は、天罰が当たったのだと信じてましたよ。そうしてひとり、暗い部屋でにんまりしてましたとも。いつの間にか私は、私の仇討ちをしてくれる存在に『マウス』という名前を付けて崇拝の念に近いものを抱くようになっていました。マウスってのは外国の漫画映画の、筋肉もりもりのキャラクターなんですけどもね……でもねある日気付いた」
開いた根積の口は、もう完全に齧歯類の口だった。
「私が、『マウス』だったんです!」
見開いた根積の目、瞳孔が開いたかと思いきや、ぐるっと眼球が一回転した。たちまち黒いビー玉のような黒目一色となる。
ギイッ、と奇声を上げてマウスは地を蹴った。
ナターシャは白いワンピースにサンダルという服装である。根積の独白をずっと、怯えたように聞いていた。足がすくんで動けない様子だった。
しかし根積がいよいよその精神も含めてマウスに変化しかけたとき、観念したように彼女は、ハンドバッグから黒い布を取り出したのだった。
「私はあなたには頼らない。あなたには私の記憶はないでしょう。でも、私はあなたの悪行をすべて覚えています。……あなたには一生、身を潜めていてほしい」
布のようなものは覆面だ。目の部分だけ穴が開いている。薄手だが伸ばしても透けない。
されどナターシャは覆面を被らない。それどころか丸めて、投げ捨てるべく振りかぶる。
海に捨てるつもりだったのだろうが、力は弱く、黒い覆面はふわっとコンクリートの上を転がるにとどまった。
「馬鹿野郎! なにやってる!」
飛びつくようにして覆面を拾い、一息でナターシャに飛びつき横飛びする。
マウスの拳がもたらした風圧が、ナターシャの長いブロンドと
夜海霧 楓
のハンチング帽を吹き飛ばしていた。
「自分自身と折り合いを付けるのは生き延びてからにしろ、ナターシャ」
楓は眼鏡の位置を直す。そのときにはもう、楓は彼女の頭に真っ黒なマスクを被せている。
マウスは勢い余って前のめりに転倒し、転がってコンテナのひとつに激突してようやく止まった。
いい状況じゃないな、と楓は思う。
根積より早くナターシャに接触するつもりだった。
かつて覆面をひっぺがしたことのある俺だ。ナターシャは怖がって逃げるだろう――それを防ぎ話をする時間を作ろうと思案したため、彼女の足取りを追うのに楓はいささか時間をかけすぎてしまった。
その間に、あの男に先を越されてしまった。
ようやく追いついたときには、男は独白を始めていた。手遅れではなかったが間一髪だった。
例の男、つまり根積を追う手がかりも楓には不足していた。
馴染みの情報屋は値段をつり上げてきた。今回は警察の機密度合いが段違いに高いと言って。
実際、その通りだった。
まず、赤沢という男たちが半死半生の姿で発見された現場は、今なお厳重に封鎖されているという。尋常ならざる力で、地面を砕き歪めた痕跡が残っていたからだ。被害者三人とも生存はしていたが、まだ事情聴取さえ存分にできない状態らしい。このため楓は、現場にも被害者にも接触できずじまいに終わっている。
とはいえ楓も、被害者たちが先に男を蹴った、その同じ部位をやり返されたということまではつかんでいた。頭、脊髄、右膝から下、いずれも偏執的なまでに同じ場所だった。
――ま、そいつはどうせ、根積って男のあの、クソ長くねちっこい独白で明らかになっただろうがな。
首を振ってマウスが立ち上がろうとしている。コンテナの横腹は、凹んでいた。
「……にしても、頭蓋骨を砕くくらいの臂力の持ち主だ。呪術師の類じゃなかったってことで気分は楽だが、厄介なことに変わりはねーな」
「あれはDUAL(デュアル)だ」
女の声がした。
「ようやくお目覚めか、眠り姫」
楓の皮肉を聞き流しナターシャは言う。
「私と同じ種類の人間だ」
モデルと見まがうほどの長身にワンピース、黒いベルトというスタイリッシュな姿なのに、顔だけ銀行強盗みたいなマスクという今のナターシャの見た目は珍妙なことこの上ない。けれどそれをからかっている余裕はなさそうだ。
「要するに二重人格ってこったろ」
楓には、それだけ言うのがせいぜいだった。
ゆっくりとマウスが振り向いた。ギッ、と歯ぎしりのような唸り声を上げる。
「おい、今度はあいつ『コンテナに頭から突っ込まされたから、あなたの頭部を砕かせていただきます』とか言ってこねーだろうな」
「それはない。やつの本体は根積だ。マウスになったときの記憶がないことがその理由だ」
「それは結構」
楓は帽子のつばに手をやろうとしたが、その手は虚しく黒い前髪に触れただけだった。
「……ということは、だ」
言いかけた楓にナターシャが言葉を被せる。
「そうだ。
『ナターシャ・カンディンスキー』の本体は私だ。あの小娘の状態が、私が変身した姿なのだ!
私は、覆面をしていないときの小娘が普段なにをしているかほとんど知ることができない。だが私なら、絶対に根積に手出しはしなかった」
「根積のあの気色の悪い話術に絡め取られパニックを起こしたんだろう。無理もない。お前と違って、
あっち
のナターシャのほうは一般人みてーだからな」
唐突に会話は途切れた。
次の瞬間、ほとんど助走もなく根積は跳び、ナターシャの眼前に着地したのである。
左フックが伸びる。毛に包まれたその拳はナターシャの右頬を狙っている。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
桂木京介
シナリオタイプ(らっポ)
ゴールドシナリオ(200)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
オールジャンル
定員
10人
参加キャラクター数
10人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2019年07月09日
参加申し込みの期限
2019年07月16日 11時00分
アクション投稿の期限
2019年07月16日 11時00分
参加キャラクター一覧
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