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- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
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はじまりのセプテンバー
始業式に授業の開始、委員会活動再開などなどと、慌ただしい一週間がようやく終わった。
金曜日の夜、いちはやく月曜の準備を整え終えると、御巫 時子は畳の間に正座する。
――二学期はじまりの一週間、でしたね。
去年も体験したはずなのに、どうにも疲れているのはなぜだろう。
残暑厳しいなか通学路を往復し、夏休み明けとともに羽化したのか変態したのか、印象をがらりと変えた同級生に驚いたり感心したり、久々の授業にちょっぴり眠気を感じたり、教師と生徒として廊下で尚輝先生とすれ違って短い挨拶を交わしときめいたり……刺激の多い毎日だったからだろうか。
ともかく、明日は休みだ。
ほっとする。
でもこのほっとした感覚、自分よりもっと感じているのではないかと時子は思う。
芽衣子さんは……。
なにせ彼女にとっては、はじめて中学校の教壇に立つ一週間だったわけだ。シリコンバレーの大学で講師をしていたといっても、日本のしかも中学生相手だとしたら勝手もずいぶん違ったことだろう。
余計なお世話かもしれませんけど……。
時子は電話を手にしていた。
芽衣子は自分を友達だと言ってくれた。
友達が友達に電話するんだからいいですよね、と己に説明しながら、時子は芽衣子の携帯を呼び出している。
わずか二コール目で今道 芽衣子は出た。
「あら、時子ちゃん？」
どうしたの、と言う。
「いえ、特に用事はないんです。一週間中学校の先生をやってみて、どうでしたか、と思って」
ははは、と芽衣子の笑い声が返ってきた。ただ、おなじみのあの、お日様のような快活さはなくて、どことなく疲れたような笑い声だった。
「いろいろ目まぐるしかったよー。そもそも日本の学校が久々なものだから驚きっぱなし」
「手応えはどうでした？」
「もう手応えだらけだよ。うーん、でも、ま、やっていくしかないよねっ」
自分の声のトーンが沈んでいると気がついたのだろうか、芽衣子の口調は右肩上がりに明るさを増していく。
しかしその様子が逆に、時子の気持ちに無音の波を立てていた。
芽衣子さん、少し元気がないのでしょうか……無理しているような……。
寝子島中学は寝子島高校同様、開放的な雰囲気の学校だと聞いている。だから学校制度の閉塞性に戸惑っているとか、そういうのではないと思いたい。
だとしたら、生意気盛りの中学生に手を焼いているとか。
ハードワークにつぶされそうだとか。
いけない。
悪い想像をし始めたらきりがない。はじまりの九月第一週に、ちょっと疲れただけだと考えることにする。
しばらく他愛もない話をして、
「時子ちゃんと話せてリラックスできたよー。時子ちゃんて癒やし系ってやつ？ って、この表現もう言わないんだっけ。私があっちに渡る前の流行語だったからなー」
最後はいくらか、芽衣子もいつもの調子に戻ったようだ。
またお話しようね、という芽衣子の言葉とともに通話は終わった。
「やっぱり心配ですね」
時子はつぶやいた。芽衣子はなにかに悩んでいるのでは、と思う。
だったら、と時子はふたたび電話を手にする。
尚輝先生なら――芽衣子さんの好きなものご存知でしょうか？
ボードゲームとアメコミはお好きなようでしたが。
「もしもし、尚輝先生ですか……？」
「は、はい」
思わぬ電話に驚いたらしい。いま、五十嵐 尚輝が電話を取り落としそうになっているところまで時子はありありと想像ができて笑ってしまう。
「どうかしました？」
尚輝は心配している様子だ。私は元気です、と前置きして時子は訊いた。
「まだ暑いですよね」
「ええまったく」
「でも暦は秋です。しばらくは暑い日と肌寒い日が交互に訪れそうで、体調を崩しやすいですから気を付けてくださいね」
「ありがとうございます。おっしゃるとおり、僕は季節の変わり目にはよく鼻風邪をひいてしまいます」
そういえば昨年もこの時期、ズルズルやっている尚輝を目にしたことがある。なんだか親のような気持ちになって、思わず時子は聞いてしまう。
「きちんと三食食べてますか？」
「実は今朝は抜いてしまったんですよ……お恥ずかしながら寝坊しまして」
「いけませんよ、朝食抜きは体に毒です。それに、野菜もあまり食べていないのでは？」
「お恥ずかしながら……たぶん夕食では、冷やしうどんに付いていたネギくらいしか野菜を口にしていない気がします……」
「あらあら」
先生の健康管理を考えてさしあげなければ――と使命感をいだいたところで、さすがに話が当初の目的から脱線していることに時子は思い至った。
「ところで先生、土曜日か日曜日か、どちらか空いていますか？ 芽衣子さんにも声をかける予定ですけれど、ちょっとやってみたいことがあって、よければご協力を……」
金曜日の夜、いちはやく月曜の準備を整え終えると、御巫 時子は畳の間に正座する。
――二学期はじまりの一週間、でしたね。
去年も体験したはずなのに、どうにも疲れているのはなぜだろう。
残暑厳しいなか通学路を往復し、夏休み明けとともに羽化したのか変態したのか、印象をがらりと変えた同級生に驚いたり感心したり、久々の授業にちょっぴり眠気を感じたり、教師と生徒として廊下で尚輝先生とすれ違って短い挨拶を交わしときめいたり……刺激の多い毎日だったからだろうか。
ともかく、明日は休みだ。
ほっとする。
でもこのほっとした感覚、自分よりもっと感じているのではないかと時子は思う。
芽衣子さんは……。
なにせ彼女にとっては、はじめて中学校の教壇に立つ一週間だったわけだ。シリコンバレーの大学で講師をしていたといっても、日本のしかも中学生相手だとしたら勝手もずいぶん違ったことだろう。
余計なお世話かもしれませんけど……。
時子は電話を手にしていた。
芽衣子は自分を友達だと言ってくれた。
友達が友達に電話するんだからいいですよね、と己に説明しながら、時子は芽衣子の携帯を呼び出している。
わずか二コール目で今道 芽衣子は出た。
「あら、時子ちゃん？」
どうしたの、と言う。
「いえ、特に用事はないんです。一週間中学校の先生をやってみて、どうでしたか、と思って」
ははは、と芽衣子の笑い声が返ってきた。ただ、おなじみのあの、お日様のような快活さはなくて、どことなく疲れたような笑い声だった。
「いろいろ目まぐるしかったよー。そもそも日本の学校が久々なものだから驚きっぱなし」
「手応えはどうでした？」
「もう手応えだらけだよ。うーん、でも、ま、やっていくしかないよねっ」
自分の声のトーンが沈んでいると気がついたのだろうか、芽衣子の口調は右肩上がりに明るさを増していく。
しかしその様子が逆に、時子の気持ちに無音の波を立てていた。
芽衣子さん、少し元気がないのでしょうか……無理しているような……。
寝子島中学は寝子島高校同様、開放的な雰囲気の学校だと聞いている。だから学校制度の閉塞性に戸惑っているとか、そういうのではないと思いたい。
だとしたら、生意気盛りの中学生に手を焼いているとか。
ハードワークにつぶされそうだとか。
いけない。
悪い想像をし始めたらきりがない。はじまりの九月第一週に、ちょっと疲れただけだと考えることにする。
しばらく他愛もない話をして、
「時子ちゃんと話せてリラックスできたよー。時子ちゃんて癒やし系ってやつ？ って、この表現もう言わないんだっけ。私があっちに渡る前の流行語だったからなー」
最後はいくらか、芽衣子もいつもの調子に戻ったようだ。
またお話しようね、という芽衣子の言葉とともに通話は終わった。
「やっぱり心配ですね」
時子はつぶやいた。芽衣子はなにかに悩んでいるのでは、と思う。
だったら、と時子はふたたび電話を手にする。
尚輝先生なら――芽衣子さんの好きなものご存知でしょうか？
ボードゲームとアメコミはお好きなようでしたが。
「もしもし、尚輝先生ですか……？」
「は、はい」
思わぬ電話に驚いたらしい。いま、五十嵐 尚輝が電話を取り落としそうになっているところまで時子はありありと想像ができて笑ってしまう。
「どうかしました？」
尚輝は心配している様子だ。私は元気です、と前置きして時子は訊いた。
「まだ暑いですよね」
「ええまったく」
「でも暦は秋です。しばらくは暑い日と肌寒い日が交互に訪れそうで、体調を崩しやすいですから気を付けてくださいね」
「ありがとうございます。おっしゃるとおり、僕は季節の変わり目にはよく鼻風邪をひいてしまいます」
そういえば昨年もこの時期、ズルズルやっている尚輝を目にしたことがある。なんだか親のような気持ちになって、思わず時子は聞いてしまう。
「きちんと三食食べてますか？」
「実は今朝は抜いてしまったんですよ……お恥ずかしながら寝坊しまして」
「いけませんよ、朝食抜きは体に毒です。それに、野菜もあまり食べていないのでは？」
「お恥ずかしながら……たぶん夕食では、冷やしうどんに付いていたネギくらいしか野菜を口にしていない気がします……」
「あらあら」
先生の健康管理を考えてさしあげなければ――と使命感をいだいたところで、さすがに話が当初の目的から脱線していることに時子は思い至った。
「ところで先生、土曜日か日曜日か、どちらか空いていますか？ 芽衣子さんにも声をかける予定ですけれど、ちょっとやってみたいことがあって、よければご協力を……」
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2019年07月09日
- 参加申し込みの期限
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- 2019年07月16日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2019年07月16日 11時00分
