さーさーさらさらさくさくさ。｜リアクション

さーさーさらさらさくさくさ。

◆再び店内の日常、まったりと。

「こ、こら。大人しくしてろよ」

　隣の席のカゴに向かって叱りつける。
　ふるふると体を震わせ、水しぶきが飛んだ。

「クッキーか何か見繕ってやるから」

　困ったようにカゴを見つめる八神修の目はやさしく。
　こぼれるため息も幸せが溢れるかのよう。

（俺はこいつらのおねだり攻撃に……弱いなぁ）

　白猫のミルク、黒猫のブラック、銀猫のミスト、ミケ猫のマーブル、ロシアンブルーのブルーがカゴの中でにゃんにゃんと甘えた声を出す。
　ああ、牛乳もいいかもしれないな。
　八神は注文するために席を外し、カウンターに向かう。　
　するとそこには先客が。

（畑生……か？）

　畑生言嗣。
　八神が所属する新聞部にタレコミ……ネタ提供をしてくれる貴重な人材だ。
　その独特な雰囲気・性格は掴みきれない、いや掴めないが味方につけたら強い人物だろう。
　夜神は少し迷ってから静かにその後ろに並んだ。

（最近は洋菓子の方にも興味があってね。自分で作る前に、一通り食しておこうと思ったわけだが……）

　畑生はゆっくりと値踏みするようにショーケースの端から端まで見渡す。
　席においてきた猫たちが気になり八神はそわそわするも、畑生は動じない。

（ふむ、なるほど。やはり美しいものだな）

　たっぷりと時間を使って頷き、知吹を呼びつける。

「貴様、全てひとつずつ持ってきたまえ。飲み物は紅茶を頂こう」

　尊大な態度で言い放ち、悠々と空いている手前の席に座った。
　八神も知吹も目を丸くし、ひと時の間言葉を失ってしまう。
――この後さらに、驚くことになるのだが、知らないものはどうしようもない。