さーさーさらさらさくさくさ。｜リアクション

さーさーさらさらさくさくさ。

◆不可侵。二人は赤々と。

　澪乃からプリン一つも奪うことができなかった喜好はそれでも諦めていなかった。
　諦めるわけにはいかなかった。
　騒ぎに介入してこない人間からお菓子を奪おう。
　エレノアたちの席を飛ばして、二人の時間を楽しんでいたシグレと緋紅朱に近づいていく。
　逆巻、北原、桜井は彼を追い、さらにその後ろに続く。

「そのケーキを寄越せ」

　あと数口しか残っていないケーキを指差し、水鉄砲を突きつける。
　シグレは軽く喜好の頭に触れて、ニヒルに笑った。

「少年、欲しいものを力づくで奪うのは品も芸もないぜ」

　妙な説得力のある言葉だったが、無意識に赫乃の口にマカロンを運んでいることによる驚きでかき消えてしまった。

「っ、あぅっ、……んぅ、んっ……」

　顔を赤らめ、必死にマカロンにかぶりつく緋紅朱は薔薇が匂いたつように……上品に男心をくすぐった。
　マカロンを運ぶ、指に緋紅朱の舌がチロリと当たる。
　生温かい感触は惜しむ間もなく遠ざかっていく。
　緋紅朱は自分の唇の端についたクリームを白い指ですくいとり、舐める。
　
「おい、しい……」

　恥ずかしそうに身をよじり、フォークでショートケーキを切り分ける。

（これは、食べさせ合いっこだよね）

　おずおずとケーキを差し出し、熟れた瞳で見上げる。

「シグレさん……、あー、ん」
「赫乃、一体これはなんの真似だ……ったく、仕方ないな」

　ぶっきらぼうな言い草をするシグレ。
　その表情は緋紅朱の髪のように鮮やかだった。