ふしぎ超特急『七ッ星』、しゅっぱつしんこー！｜リアクション

ふしぎ超特急『七ッ星』、しゅっぱつしんこー！

★氷の世界のエトセトラ（１）

「みみみん！　とうちゃーく！　だね！」
　バッチリ防寒モードに着替えたいぬみんの声が、元気いっぱい響き渡る。
　頭の上の本体さんも不思議な力で防寒仕様に大変身となれば、余計にテンションも上がるというもの。
　頭に狼の耳が乗ったふわもこな外套を身に纏ったロシィ・イシロは、
「がう！？　へんてこなのがいっぱいいるぞ！」
　と、辺りに生えている水晶の陰からこちらの様子を窺う“何か”に気付き、くるりと目を丸くした。
　青い身体をした、一つ目の、小人サイズの生き物。
　それら（仮に、小人と呼ぼう）は、恐る恐るといった調子で、ロシィ達の動向を見守っている。
　はわー！　と、いぬみんは双眸を瞬いた。
「ほんとだ、すごいね！　いぬみん星でも見たことない子達だよ！」
　おいでおいでとしゃがみ込んで手招きすれば、彼らは、そろそろと２人の傍へやってくる。
「いぬみん達は、今から、釣りをするんだよ！　キミ達も一緒にどうかな？」
　言って、列車からこの世界に持ち込んだ、釣り竿やバケツなどを掲げてみせるいぬみん。
「〇×★Ψ△＄？」
　ほにゃほにゃと聞こえる彼らの言語で、小人達は互いに言葉を交わし合い、
「＊☆％▼●！」
　と、やはりいぬみん達には伝わらない言葉で挨拶をすると、２人の後ろに並んだ。
「わああ！　何だか、パレードみたいだね！　楽しいね！　この調子で、お魚さんを釣るのも頑張るよ！」
「ロシィもがんばるぞ！　……お魚、おいしいかな？」
　小人達も、２人の会話に参加するみたいに賑やかに騒いでいる。
　ロシィといぬみん（と小人達）は連れ立って、光り散らす氷の上を歩き出した。

「わぁ……！」
　目前に広がる光景に、恵御納夏朝は思わず感嘆の声を漏らした。
　複数見える月は、列車の中から見たよりも余計に、どれも冴え冴えと美しい。
　オーロラの揺らめきは、空が、澄んだ音楽を零すよう。
　それに、天の星々も、遠くに聳え立つ氷の山も、幻想的に瞬いている。

「……綺麗、という言葉では、足りない気がするくらいだな」
　という犬杜一閃の言葉に、
「うん、本当に」
　と、夏朝は目元を柔らかくして頷いた。と、その時。
「夏朝！　お兄ちゃん！」
　犬杜初の慌てたような声がして、夏朝と一閃は、揃って彼女の方へと顔を向けた。
　見れば、もっふもふの白く長い毛をした見たことのない生き物が、のそのそとこちらへ近づいてきている。
「わ、可愛い！」
「ういもそう思うの！　だけど、でも……うい、仲良くなれるかな？」
　らしくなく不安げに眉を下げる初の手を、夏朝はぎゅっと握った。
「大丈夫だよ、初ちゃん。ほら、一緒に行こう？」
　駆けていく夏朝達の後姿を、一閃は、優しい眼差しで見つめていた。

「この景色……なんて表現したらいいんだろう」
　列車から降りての鴻上彰尋の言葉に、「うーん……」と七夜あおいも考え込む。
「なんていうか、圧倒的だよね。綺麗だけど、でも、それだけじゃないっていうか……」
　変かな？　とあおいの目が尋ねてくるのに、
「うん、わかるよ。俺も、あおいさんと同じように感じてるから」
　と応じて、彰尋はにこりとした。
　あおいが、ほっとしたみたいに息を吐く。
「何だか、ずっと見ていたくなるよね」
「……じゃあ、ずっと一緒に見ていようか？」
　言って、彰尋は悪戯っぽい笑みをあおいへと向けた。
　ぱちぱちと、瞳を瞬かせるあおい。
「実は、防寒具と一緒に、コーヒーを淹れる道具も借りてきたんだ」
　――列車の上で、景色を眺めながらコーヒータイムにしない？
　彰尋のそんな誘いに、あおいはぴっかぴっかの笑顔で大きく頷いた。

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