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- 種族
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- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
- AAA000000
七色の星、想い届けて
ふぁ、と欠伸が出た。
うーんと体を伸ばす。
万条 幸次は前足をぺろぺろと舐めた。
またばきする。三度繰り返すころには、半分しかまぶたはひらかない。
猫っていうのはこういうものだよねぇ、と考えながら幸次はまたひとつ欠伸をし、お気に入りの場所でのさりと座る。
猫らしくしようと思っているのだが、意識する必要はないのかもしれない。
なぜって、もうとっくに猫なのだから。
利口そうな眼をしたキジトラ、木陰に位置するブロック塀のうえに乗っかって、昼間のひとときをすごすオスのにゃんこ、これが現在の幸次の姿だ。
お腹をつけて四肢をおり、体の下にしまいこみ、いわゆる香箱座りの姿勢になる。尻尾は基本、寝かせているが、ときおりヒコヒコと動かしてみたり。ヒゲがちょろんと寝かせ気味にしているのも、リラックスしている証拠といえよう。
「……」
眠りと目覚めのあいだを、うつらうつらまどろんで楽しんでいた幸次だったが、しばらくそうしている間に目が覚めてきた。
それもそのはず、いつの間にか木陰は移動し、日なたにさらされかけていたのだった。お尻のあたりは陽だまりのただなかだ。
終わりかけでも夏は夏、つまり、暑い。
閉店間際のスーパーみたいに、日光大売り出しを開始していたときには特に。
むう。
まん丸な目でなんとなく樹を見上げる。桜の木。
青々とした葉っぱが揺れている。おいでおいでしているかのように。
むう。
にゃんこの幸次は思う。これは登らねばなるまい、と。
枝のひとつに身を横たえのんびり風を味わったとしたら、どれほど気持ちがいいことだろう。さやさやと葉のこすれる音を楽しみ、遠くから聞こえる救急車のサイレンに耳をそばだてて、木の皮の香りを吸い込む時間はどれだけゼイタクなひとときだろう。
……まあそういう考えが順序立てて出てくるあたり、まだまだ猫になりきれていないという気もしないでもない。猫に理屈はいらないのだ。
ニャンと鳴くこともせず軽やかに跳んで、はしっと幸次ネコは木の幹に飛びついた。わしわしと登る。立てた爪がやわらかな木肌に食い込むのを感じる。
案外簡単だった。十秒もするころには、幸次は期待通りの場所にいる。いくらか高くて太い枝。はじめて屋外でWiFiをつなぐことができたときのような小さな達成感を得る。
ふむ。
猫らしく鼻息で満足を表現すると、さっそく太い枝のうえで香箱座りの姿勢になろうとしたところで、
「まま、ねこだよ。ねこいた！」
小さな子どもの声が聞こえた。
見れば四歳くらいの女の子が、頭上すなわち幸次のいる木の枝を指さしているのだった。幼稚園か保育園の制服を着ている。チェック柄のスカートが可愛かった。いっちょ前にポニーテールにしているところも。
そりゃあねこもいるよねぇ、猫だらけの寝子島なんだし、と常識的な回答をしたいところだが現在の幸次は猫、ウンともスンとも言うことはできない。サービスでニャアとか鳴いてあげても良かったのだが、くつろぎのひとときを邪魔されたくないという気持ちが上回った。
女の子はその『まま』とさっさと行ってしまうだろうと予想したが、さにあらず。
「猫？ どこかしら？」
女の子の母親まで足を止めた様子だ。
いやここ猫いっぱいの寝子島ですから、珍しくないですから、と言いたい。でも現在の幸次は猫、ウンともスンとも――おや、様子が変だぞ。
ずしっ、と枝が傾いた。はらりと葉が舞い落ちた。
え？
幸次はまばたきする。慌ててジーンズの脚を締めた。
上着はお気に入りのパーカー、なんの拍子か猫チェンジが解けて、幸次は人間の姿に戻っていたのだった。
しかも解けかたが中途半端、人間の高校生に戻っていたのならまだいいのだが、手足はふさふさ毛が生え肉球もある猫のままだし、ジーンズを突き破るようにして生える尻尾も健在だ。鼻も猫っぽいばかりか口には牙もある。おまけに頭には立派な、猫耳が生えたままではないか！
はあぅ……っ！
もともと幸次は、意図的に一部だけ猫に変身することが可能だ。必要に応じて聴覚や嗅覚を猫にして役立てたこともある。
しかし今、これは望んでいる姿じゃないっ！
「なんか、きがゆさゆさしたー」
当然のように女の子は気がついて声を上げた。
戻れ戻れ戻れ、幸次は目を閉じて念じた。
猫に戻れ、さもなくばせめて人間の姿に。
この中途半端が一番ダメ！ うっかりコスプレ少年、季節先取りしすぎのハロウィンとか思われたらどうするんだ。
女の子だけが相手ならまだごまかしようもあるが、その母親の視線に耐えられる自信はなかった。
「ままー、おおきいねこちゃんみたいだよー」
女の子は興味を持ったらしい。まったくもって望ましい状況ではない！ くつろぎのひとときがなぜこんなことに。
戻れ戻れ戻れ、幸次はさらに念じた。
戻れ戻れ、戻って……お願いだから！
うーんと体を伸ばす。
万条 幸次は前足をぺろぺろと舐めた。
またばきする。三度繰り返すころには、半分しかまぶたはひらかない。
猫っていうのはこういうものだよねぇ、と考えながら幸次はまたひとつ欠伸をし、お気に入りの場所でのさりと座る。
猫らしくしようと思っているのだが、意識する必要はないのかもしれない。
なぜって、もうとっくに猫なのだから。
利口そうな眼をしたキジトラ、木陰に位置するブロック塀のうえに乗っかって、昼間のひとときをすごすオスのにゃんこ、これが現在の幸次の姿だ。
お腹をつけて四肢をおり、体の下にしまいこみ、いわゆる香箱座りの姿勢になる。尻尾は基本、寝かせているが、ときおりヒコヒコと動かしてみたり。ヒゲがちょろんと寝かせ気味にしているのも、リラックスしている証拠といえよう。
「……」
眠りと目覚めのあいだを、うつらうつらまどろんで楽しんでいた幸次だったが、しばらくそうしている間に目が覚めてきた。
それもそのはず、いつの間にか木陰は移動し、日なたにさらされかけていたのだった。お尻のあたりは陽だまりのただなかだ。
終わりかけでも夏は夏、つまり、暑い。
閉店間際のスーパーみたいに、日光大売り出しを開始していたときには特に。
むう。
まん丸な目でなんとなく樹を見上げる。桜の木。
青々とした葉っぱが揺れている。おいでおいでしているかのように。
むう。
にゃんこの幸次は思う。これは登らねばなるまい、と。
枝のひとつに身を横たえのんびり風を味わったとしたら、どれほど気持ちがいいことだろう。さやさやと葉のこすれる音を楽しみ、遠くから聞こえる救急車のサイレンに耳をそばだてて、木の皮の香りを吸い込む時間はどれだけゼイタクなひとときだろう。
……まあそういう考えが順序立てて出てくるあたり、まだまだ猫になりきれていないという気もしないでもない。猫に理屈はいらないのだ。
ニャンと鳴くこともせず軽やかに跳んで、はしっと幸次ネコは木の幹に飛びついた。わしわしと登る。立てた爪がやわらかな木肌に食い込むのを感じる。
案外簡単だった。十秒もするころには、幸次は期待通りの場所にいる。いくらか高くて太い枝。はじめて屋外でWiFiをつなぐことができたときのような小さな達成感を得る。
ふむ。
猫らしく鼻息で満足を表現すると、さっそく太い枝のうえで香箱座りの姿勢になろうとしたところで、
「まま、ねこだよ。ねこいた！」
小さな子どもの声が聞こえた。
見れば四歳くらいの女の子が、頭上すなわち幸次のいる木の枝を指さしているのだった。幼稚園か保育園の制服を着ている。チェック柄のスカートが可愛かった。いっちょ前にポニーテールにしているところも。
そりゃあねこもいるよねぇ、猫だらけの寝子島なんだし、と常識的な回答をしたいところだが現在の幸次は猫、ウンともスンとも言うことはできない。サービスでニャアとか鳴いてあげても良かったのだが、くつろぎのひとときを邪魔されたくないという気持ちが上回った。
女の子はその『まま』とさっさと行ってしまうだろうと予想したが、さにあらず。
「猫？ どこかしら？」
女の子の母親まで足を止めた様子だ。
いやここ猫いっぱいの寝子島ですから、珍しくないですから、と言いたい。でも現在の幸次は猫、ウンともスンとも――おや、様子が変だぞ。
ずしっ、と枝が傾いた。はらりと葉が舞い落ちた。
え？
幸次はまばたきする。慌ててジーンズの脚を締めた。
上着はお気に入りのパーカー、なんの拍子か猫チェンジが解けて、幸次は人間の姿に戻っていたのだった。
しかも解けかたが中途半端、人間の高校生に戻っていたのならまだいいのだが、手足はふさふさ毛が生え肉球もある猫のままだし、ジーンズを突き破るようにして生える尻尾も健在だ。鼻も猫っぽいばかりか口には牙もある。おまけに頭には立派な、猫耳が生えたままではないか！
はあぅ……っ！
もともと幸次は、意図的に一部だけ猫に変身することが可能だ。必要に応じて聴覚や嗅覚を猫にして役立てたこともある。
しかし今、これは望んでいる姿じゃないっ！
「なんか、きがゆさゆさしたー」
当然のように女の子は気がついて声を上げた。
戻れ戻れ戻れ、幸次は目を閉じて念じた。
猫に戻れ、さもなくばせめて人間の姿に。
この中途半端が一番ダメ！ うっかりコスプレ少年、季節先取りしすぎのハロウィンとか思われたらどうするんだ。
女の子だけが相手ならまだごまかしようもあるが、その母親の視線に耐えられる自信はなかった。
「ままー、おおきいねこちゃんみたいだよー」
女の子は興味を持ったらしい。まったくもって望ましい状況ではない！ くつろぎのひとときがなぜこんなことに。
戻れ戻れ戻れ、幸次はさらに念じた。
戻れ戻れ、戻って……お願いだから！
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2019年06月11日
- 参加申し込みの期限
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- 2019年06月18日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2019年06月18日 11時00分
