shine a light｜リアクション

shine a light

　ゲームショップ『クラン＝G』、その奥に用意されたゲーム用テーブル。
　白真白と紅（こと芋煮紅美）は向かい合って座る。互いのカード山をようくシャッフルしあい、最初の場札をオープンしていった。
　もちろんゲームはTOS、さまざまなイラストレーターが描いた美麗なイラストの数々は、見ているだけでも楽しくなってくる。
「ほほう、紅ちゃんの新作は軍事旅団の機甲部隊が中心みたいね」
　真白はあごをさすりながら言った。紅の布陣はなかなか堅牢に見える。
「魔法に強いのは機甲部隊、と思ってね。そちらの手は……ちょっと読めないかな」
　紅は自分の手札と、真白の場札を見比べながら言う。真白のデッキにもなにかコンセプトはあるのだろう。しかし現状、まだ混成の布陣という印象しかなかった。強いて言えば飛び道具が多いくらいか。
　ふふ、と真白は微笑む。
「びっくりする仕掛けがあるので、こうご期待と言ったところだよ」
「楽しみ半分、怖さも半分ってところね」
　先攻後攻をコイントスで決め、ゲームを開始する。
　紅は手札を取り出すと、さっそく攻撃を行った。
　といっても最初はジャブを繰り出すようなもの、これで一気に勝利することはないだろう。案の定、真白の出したカードに弾かれてしまった。
　追加攻撃もできそうに見えたが、様子見を決め込んだらしく紅は自分の手番を終えた。
　ふっふー、と笑って真白はカードを引き、手札から一枚出す。
「じゃ、私はこれを……お披露目しちゃおっかなー」
　あっ、とギャラリーから声が上がった。（真白はファンが多いので、黙ってプレーしていても、どこからかギャラリーが集まってくるのだ）
　汎用カードの一枚《歴戦の勇士》ではあったものの、それは誰でも知っているイラストとは違っていた。有名漫画家の書き下ろし、雑誌の懸賞でしか手に入らない限定版カードだったのだ。追加効果も設定されている。
「それ持ってたの！？　どうやって！？」
　明らかに動揺したらしく、紅は腰を浮かせていた。
「どう、って。当選したから」
　昨日簡易書留で届いたばかりのカードだ。応募券ほしさに同じ雑誌を数冊購入して当てたという事実はナイショにしておく。
　この華々しい開幕もあり、さっそくふたりのデュエルは好試合へと推移していった。
　紅は機甲師団らしき正攻法、一方で真白は混合部隊の特長を活かしトリッキーな攻めを繰り出す。
　といっても公式戦ではないためか、殺伐とした戦いにはならない。自他デッキの感想や雑談も挟み、楽しく攻防を繰り返した。
「このデッキ、今はもう少し速度を上げたいと思ってるんだよね。ほら、コンボ完成までの速度を上げて相手の準備が整う前にかましたりしたいなぁって……けどなかなか難しくてねぇ」
　真白が言えば、わかるわかると紅も応じる。
「バランス取りって難しいじゃない？　効率最優先だと爽快感がないしさ。逆だと不安定だし」
「言えてる。速度を上げようとすると安定感が落ちるし。そのあたり補強できるカードが新弾で出てほしいなぁって思ってるんだけど、今公開されてる中だと良さそうなのがないんだよねぇ」
「まだ公開されてない中にあることを期待するしかないかも」
「あるといいんだけどなぁ」
　だんだん話は高度になってくるが、真白も紅もギャラリーの大半も、十分理解できている様子だ。レジカウンターにいる三佐倉千絵も、聞き耳を立てているかもしれない。
「あ、でもこのデッキには入らないけどなかなか面白そうなカードはいくつかあったよね。《二度の跳弾》とかギャンブル性は高いけど」
「ただの《跳弾》でも使いにくいから、あたしはパスかなあ」
「紅ちゃん的には今度の新弾のカードで気になるやつとかってあった？」
「そりゃもちろんあるよ。キャラクターでいえば、死期を悟った老兵の……」
　終盤はシーソーゲームになったが、制したのは真白となった。