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つくものかみの言うことにゃ
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【辛い事も、楽しい事も】
ここに、常に苦楽を共にして来たものがある。
それは、いつも持ち主の顔を見てきた。持ち主の手により書き込まれる数値には、常に喜びがあり、そして時には哀しみもあった。
その機微を目の当たりにしながらも、言葉を掛けることすら許されなかった一つのノートに、そっと祝福するように神魂が揺らいで溶けた──
+‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥+
軽やかな、携帯特有のアラーム音が響く。
志波 武道
はその音を耳に、ゆっくりと目を開けた。
寝起きで視界もぼんやりする上、まだ思考も一緒に追い付いていないが、今日は水泳部の朝練がある日。武道はそれをぼんやりと思い起こしながら、アラームを止めようと、手探りで携帯のある場所に手を伸ばした。
すると、
ぱすっ
何か、携帯でないものが手に触れた。
「……?」
不思議に思いつつも、武道は再び携帯を探して手を動かす。
ぱす、ぱすっ
まるで紙の束を叩いているような感覚──そこに携帯は見つからず……というよりも。昨日そこに確かに携帯を置いたはずである事を、武道は遅まきながらも、はっきりと思い出した。
「ん──?」
武道の意識が覚醒していく。少しずつだがはっきりとしてきた意識の中で、ゆっくりと上半身を起こしそちらの方へ目を向ける。
すると、昨日携帯を置いた場所の上には、記憶にない一冊のノートが覆い被さるように伏せ広げ置かれているではないか。
「……なんだろ?」
しばし、武道がぼんやりと眺めていると、突如そのノートが垂直方向に起き上がり、どこから鳴っているのかは知らないが、『シュバッ』『カッ!』などという、これまた軽妙な音に合わせて武道に向かってターンを決めた。
──効果音が鳴っているというより、その動きがあまりに機敏で、脳が勝手に効果音を再生しているのかも知れない。
「わぁお上手ー☆ って、ちょ!?」
流石にこれは武道もツッコミを入れた。むしろ、ここで入れなければ外因性適応能力があまりにも高すぎる。
「おはよう! 今日は部活だよ!」
「アッハイおはようございます」
更には、自然法則という存在を全力で殴り付けるかのように挨拶までし始めたノートに、武道は思わずそのまま朝の挨拶をかわす。
目に入るそれは見覚えのあるノートだった。シンプルだが同じ大手メーカーから出され続けている、非常に使い勝手の良いノートだ。武道は中学校の頃から、それに水泳の記録や学習などをまとめ続けている。
……今、武道の前でくるくると華麗に回り続けているのは、何冊と続けられてきた記録ノートの中でも、今日常から持ち歩いている現在進行形で使っている物のようだった。
「……。
うん、頭覚醒してきた。夢じゃないな、神魂か」
思考がはっきりして大分経った気がするが、目の前でページをヒラヒラしているノートの動きが止むことはない。
──武道は一つ大きく瞬きをした。ノートは消えない。やはり、これは夢ではなく現実だ。
「ねぇねぇ! せっかくボク動けるようになったんだから、きみの泳いでいる所見せてよ!」
「え? いつもプールに持ち込んでるけど……」
「そうじゃなくって、もっと近くがいいな!
水しぶきが掛かっちゃいそうで、ほんの数ミリで掛からないような……そんなすごいところで見てみたいよ!」
「いや、それはちょっと難し……」
「うわあぁんっ! いやだい! いやだい、いーきーたーいー!!」
べちんべちん、ビッタンバッタンビッタンバッタン!!
「ワカッタ! 分かったから暴れないでぇ!」
──こうして、武道の悲鳴に近い言葉を聞いたノートは、その瞬間に物凄く大きな事を成し遂げたような顔をした。
そこに顔があるかはともかく、少なくとも雰囲気は物凄く達成感に満ち溢れたものだった──
+‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥+
「それじゃあ……」
学校へ向かう準備も一通り終えて。
武道は少し戸惑うが、器用に移動しながら部屋内を楽しげに観察しているノートを、バッグに入れようと手を伸ばす。すると、
「あ、今バッグに入れようと思った!?」
「え……? あ、うん」
「せっかく動けるんだから、ボク外の景色が見たいよ。
手に持って~連れて行って~っ♪」
まるで歌うような拍子に合わせて、無邪気さを隠すことなくページをパラパラさせるノート。
武道は己が全力で振り回されていることを痛感しながらも、口許に僅かに微笑みを浮かべて、ノートをバッグにしまうのを観念して家を出る準備を始める事にした──
「うん、夏の暑さも大分和らいできたなー」
武道が、自分の水泳における大事な記録が詰まったノートを片手に、寝子高までの道を歩いていく。
人の目が気になるところだが、早朝幸いにして向かいから来る人はいなかった。安心と共に、傍らで純粋に喜ぶ声を上げるノートに、武道は温かい感情を覚える。
「きみはいつもこんな景色を見て歩いているんだね。いいなぁ~。
ねえねえ、ボクも同じ目線で見たいから、頭の上に乗せて!」
「いや、流石にそれムリ! 今だってスレスレなのに、人が見ていたら取り返しのつかない事になっちゃうから、それは無理かなーっ!」
「えー、ケチー!!」
手の中でノートがぶんぶんと手があれば振り回すように、表紙と裏表紙を同時に開いたり閉じたりさせている。
今なら武道だけが『風と歩く勢いで動いているノートに、話し掛けている変な人』で済むだろうが、それを頭に乗せれば流石に様々に言い訳が利かなくなってしまう。ノートには涙を呑んでもらうことにして、武道は申し訳なさと肩身の狭さと僅かな楽しさを交えて再び歩き始めた。
+‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥+
「さて、と……」
学校のプール更衣室にて、武道の姿がスパーン! と、特技の早着替えで魔法の如く切り替わることコンマ三秒。
それは、先程まで来ていた制服から競泳用の水着に日よけ用のジャージを羽織った、こちらも日常着とも戦闘服とも言える姿で、武道はプールサイドに足を踏み入れた。
「すごーい! いつも見てたけど、間近で見ると本当にすごい!」
手に持った水泳用ノートが、いつもより更に近くで着替えを見ることに成功して、大きな声で興奮を露わにしている。
「しーっ! ……まあ、まだ人いないからいいけど」
三年生ということで引退が間近であり次の部長も決まった身だが、それまではまだまだ現役。武道はいつも通り誰よりも熱心に早く来て練習を開始する。
「はいっ、それじゃノート君はこのビニール袋の中に入ってね♪」
「えー、やだー!」
「濡れちゃったら、今までの記録が読めなくなっちゃうし、何より……しわくちゃになったら使えなくなっちゃうでしょ?」
今まで動けなかったのだと思えば、ノートがどれだけ自由を謳歌したいかは、何となくだが体感で伝わってくる。
武道にも、出来れば自由に動き回らせてあげたい思いはあるのだが、何しろ水を被れば一巻の終わりである。
ずっと水泳で寄り添ってきたノートなのだ。それは絶対に避けたい。
「ちぇーっ」
ノートを何とか説得してビニールの中に入ってもらう。側にはタイム計測用のストップウォッチを置いて、武道はスタート台から軽やかにプールの中に飛び込んだ。
スタートの一本目は軽く。クロールで泳ぐ中で身体を風のように抜けていく水が、武道には馴染みも深く非常に心地良い。
「おおーっ」
二十五メートルプールを一往復して戻ってくる。ノートはビニールの上に水滴を乗せながら、瞳があれば絶対に眩しいに違いない眼差しで武道を見つめた。
「こんな感じかな。それじゃあニ本目っと☆」
武道にとって今日は非常に不思議な日だが、それ故か、それを差し引いてか、何やらとても気分が良く感じられた。
武道はその勢いを乗せて、ストップウォッチを押してから再び華麗なフォームでプールに飛び込む。
一本目とは異なり、今度は全力で。先程が徒歩ならば、こちらは風を切る疾走にも近い勢いで泳ぎ切った。
スタート台にタッチして、台に置いてあったストップウォッチを止める──タイムは、まだ伸びると言わんばかりの自己ベスト更新。
「──」
声にならない喜びに、武道は無言で頷いた。
「もしかして、良い記録出た?」
「──ああ、うん。ちょっと待ってて」
プールから上がって、大人げなくも飛び跳ねたくなるその記録をノートに付ける。その数値を知ったノートは、今にも水面へと飛び降りかねない勢いで大喜びでジャンプを繰り返した。
しばらく、そんな興奮を分かち合いながら、武道はふと捲られる時は大人しくしているノートに刻まれた自分の過去の記録を見返した。
ページをかなり捲れば、見覚えのあるタイムの羅列が目に入る──それは、呪いのように同じタイムの繰り返し──
「……」
本土から寝子島に編入して来た武道は、当時、寝子島に来てからのタイムが明らかに伸び悩んでいた。
伸び悩むだけではない、それは全国大会で会おうと約束した本土の仲間に、到底その姿を見るのは叶わないであろう程のタイムの落ちようだった。
そこにはただ──苛立ちと、もどかしさに溢れていた。
そのページに差し掛かったノートは、完全に沈黙している。
「……」
武道が苦しい時、もしかしたら一番向き合っていたのは、このノートであったのかも知れない。
タイムを書き付ける時。一番、ある時は真顔で、ある時は思い詰め。ある時は、苦渋を露わにして。部活仲間には見せられなくとも、このノートには隠すという意識はなかったのだから。
「……あの時は本当に心配したんだからね、記録する時いつも厳しい顔してたもん」
「あー……うん、あの頃……」
武道は思わず、目の前の記録に言葉を濁す。
しかし──同時に、このノートは知っているのだ。
その鉛のような思いから解放された時の、武道の笑顔を。
泳ぐのは楽しいと、その感情を躊躇いなく輝かせて、自分に更新されたタイムを書いた時の、その笑顔を。
だが、それもこれから先は遠くなっていく──
「そろそろ引退時期だよね? 書き込む機会も減るでしょ?」
「……そうだね」
確かに──これから先、泳ぐ機会は増えることはない。むしろ本当に確実に減っていく一方になるだろう。
「でも──ボクが一杯になるまで、泳ぎを続けてね!」
それでも、明るく元気に。武道の目の前でノートは笑うように一番新しいページをピラピラさせながら、くるくると踊り始めた。
残りのページはそんなにない。しかし、それすらも埋められるかは分からないけれども、
「……うん、約束するよ☆ せっかくだから埋めてから勇退したいよねっ♪」
短い時間。しかし、このノートとなら約束出来る──
武道は、今日話が出来たこの不思議に、深い感謝と感銘を滲ませながら、その深い約束を、強く胸へと刻みつけた。
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ゴールドシナリオ(200)
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3人まで
シナリオジャンル
日常
SF・ファンタジー
定員
10人
参加キャラクター数
10人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2019年05月29日
参加申し込みの期限
2019年06月05日 11時00分
アクション投稿の期限
2019年06月05日 11時00分
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