渚のツンデレラ｜リアクション

渚のツンデレラ

●ツンデレデー

「なんか今日は、ネタが見つかる気がするんだよね♪」

　響タルトはそんなことを思いながら寝子島をあてもなく散策していた。
　夏の終わりを感じながら歩いていると、人々の話し声が意識せずとも聞こえてくる。しかし彼女はその発言から『ツンデレ』の雰囲気を感じ取った。意識して周りを見てみると、ツンデレな会話や展開で溢れている。

「そうか、今日はツンデレデーなんだね。尊い～！」

　何かに納得した彼女は、あちこち歩いて様々なツンデレを鑑賞することにした。
　
（誰のところに行こうかな～、ツンデレといえばらっかみのテオ？　元々のツンデレがパワーアップするのかな？）

　テオドロス・バルツァ。通称テオ。
　ぶっきらぼうな所がツンデレなのかは分からないが、タルトのなかではツンデレになるらしい。彼女は脳内でテオのことを思い出しながら、パワーアップしたツンデレのテオをイメージする。そのときふと、あることに気づく。

（あー、テオのツンデレって何かデジャブを感じると思ったら、うちの弟に似てるんだ）

　弟の顔を思い浮かべながら、いたずらっこのような笑みを浮かべる。もしここに彼が居たら、それをさらに実感できたかもしれない。彼女はツンデレを鑑賞するためにしばらく街のなかを歩く。

「せっかくだから普段は見られないツンデレも見たいな～。そうだ、浅井幸太先生なんかいいな。女子が苦手って聞くからぜひ絡みたいんだけど、普段接点がないんだよねー」

　幸太先生は陸上部の顧問だから、きっと寝子島高校のグラウンドにいるだろう。タルトはそう考えて、さっそく向かうことにした。高校に到着すると、色々な部活動がそれぞれの練習を行っているところだった。陸上部も他の運動部と同じくグラウンドで活動している。

（先生はどこ？）

　陸上部の近くにいるはずと思ってみていると、木陰で体を休めていた。スポーツドリンクを片手に楽な姿勢をとっている。彼女はこれは好機とばかりに近づく。

「こんにちはー、暑いですね」
「こんにちは」

　先生は姿勢を正すと、タルトのほうを向く。ただ彼はどこか緊張しているように見えた。タルトとは普段接点がなく、かつ女性が苦手なことと関係しているのだろう。

「なにか用事か？」
「用事？　たまには先生とお話ししたいなーと思って」
「そうか。休憩が終わるまででよければ」

　そう言ってスポーツドリンクを口に運ぶ。他愛のない話をしながら、タルトはとある発言を先生に向けた。

「ところで先生の好きなタイプってどんな人ですか？」

　その質問に思わず先生はむせそうになる。顔も真っ赤だ。

（うわー、顔に出てわかりやすい！）

「えっ、もしかして男の人のほうが好みですか？」

　悪乗りするように質問を続けるタルトに先生は軽く怒ってみせた。

「僕だって別に、好きで先生に絡んでるわけじゃないんだからね！　創作の参考にしたいだけ」
「そ、そうか……」

　戸惑いつつも先生は休憩が終わるまでタルトとの会話に付き合った。

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