【ネコミケ】熱い一日の最後は星空で｜リアクション

【ネコミケ】熱い一日の最後は星空で

　寝子電スタジアムにある更衣室に落合まゆらが勢いよく踏み込んだ。
　誰もいなかった。個人ロッカーの幾つかは鍵が掛かっている。
「やるわね」
　腰に手を当てて口だけで笑った。
　まゆらは肩に掛けた大きなトートバッグを持って用意された試着室の一つに入った。カーテンを閉めて服を脱ぎ始める。中は意外と奥行きがあり、すんなりと衣装に着替えられた。
「鏡はあるけど、小さいわね」
　脱いだ服を手早くトートバッグに押し込んだ。試着室を出ると足早に壁際へと向かった。
　置かれた姿見に全身を映す。一介のファンのように憧れの混ざった笑みが浮かぶ。
　衣装は白、赤、ピンクの三色を基調にして愛らしく纏められていた。くるりと回ると、ふんわりしたスカートが風を孕む。腰に添えられた純白のリボンは緩やかに舞い、靴に付けた羽と同様に軽やかな印象を与えた。
　手には魔法少女らしいステッキを持っている。鏡に向かってクルクルと回し、目に熱意を込めた。
「世界に大いなる神秘の輝きを！　魔法少女ミスティックアリア！」
　決め台詞のあと、にこりと笑った。
「ミスティらしいわ」
　他のポーズも試す。姿見の中でまゆらは躍動した。凛々しい顔となって魔法名を叫ぶ。
「あ、そうよ！」
　思い出したかのようにメイクを始める。汗で落ちないように下地を作り、本格的な化粧を施した。仕上げにアクセサリーを手早く身に着ける。
「最高のミスティになれたわ」
　姿見に映ったまゆらは感慨深げに言った。
　――高校二年の時から年二回のネコミケに参加しているのもあるけど、これもミスティ一筋でやってきた成果よね。
　手にしたステッキの先端を鏡に向ける。
「最高に可愛いわよ」
　自身にウインクをして更衣室を後にした。

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