【ネコミケ】熱い一日の最後は星空で｜リアクション

【ネコミケ】熱い一日の最後は星空で

　星ヶ丘寮の邸宅で愛猫萌々子は入念なメイクを施した。
　ネコミケ用に描いた同人誌、『登場！のんこちゃん』の主人公、野音のんこ（ののんのんこ）のコスプレであった。元の姿と掛け離れている為、知人であっても気付かれることはない。
　その自信が今になって揺らぐ。早朝のテンションは持続しなかった。
　――今回のネコミケは時間が延長されていました。汗などでメイクが落ちる可能性があるのでは？　そうなると私の正体が周囲に知られて、無断で外出したことがお父様の耳にも……。
　不吉な予感が頭を過り、身震いを起こす。
　萌々子はメイクを落とした。サングラスと大きなマスクで顔のほとんどを覆った。
「時間ですね」
　同人誌を詰め込んだリュックを背負う。同様に膨らんだ紙袋を手に提げた。
　目は机の引き出しに向かう。
　――以前に作った被り物の野音にしましょう。
　表情が和らぐ。自身の考えに軽く頷いて部屋を出ていった。

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