【ネコミケ】熱い一日の最後は星空で｜リアクション

【ネコミケ】熱い一日の最後は星空で

　夢宮瑠奈はコスプレ広場に向かっていた。その姿は際立ち、人々の目を集めた。
　一人の青年は一目で、あっ、と声を上げた。横手から小走りで近づいてきた。
「もしかして『CitrusCat's』のせれねちゃんですか？」
「よく言われるけど違いまーす♪　そんなに似てるのかなぁ」

　サイドテールを振って問い掛けるように左手を差し出す。純白の両翼は羽ばたくような動きを見せた。地上に降り立った可憐な天使に青年は見惚れたような顔になる。
「似ているけど、違うかも」
「そうだよ。あたしは、ただの天使だからね！」
　瑠奈は青年と笑顔で分かれた。軽い足取りで目的地に向かう。
　踏み込んだ瞬間、笑顔が零れた。
「わー、とってもファンタジック」
「あの、あの、写真をいいですか！」
　二人組の少女の一人が興奮した様子で言った。もう一人は隣で、もじもじしながら頷いた。
「いいけど、もう少し素敵な感じにしたいから～」
　瑠奈は周囲を見回す。
「素敵な人を見つけたよ♪」
　二人組の少女を連れて瑠奈は小走りで向かう。
「あたしと一緒に写真に撮られてくださいな♪」
「ＢＨちゃんと写真を撮りたいのね」
　黒い衣装の女性、滝原レオンが後方を振り返る。目にした瑠奈に目を剥いて瞬時に顔を横に向けた。
「どこかであったことがある？」
「ゲームのキャラのコスプレだから、それで見たのかもしれないじゃない。きっと、そうよ」
「クラスの男子に、似ているような気がしないでもー」
　そろそろと瑠奈が回り込む。レオンは逆の方向に顔を背けた。
「あのー、写真のほうは……」
　待たせていた二人の少女が心配そうな顔をしていた。
　瑠奈は笑顔で切り替える。
「あたしが天使。ＢＨちゃんが悪魔っ娘（こ）でいいよね！」
「ＢＨちゃんは小悪魔系よ！」
「じゃあ、そういうことで」
　瑠奈はレオンに小声で相談を持ち掛ける。手や足の細かい位置を決めて二人の少女に目を向けた。
「天使のあたし」
「小悪魔系のＢＨ」
　瑠奈とレオンはタイミングを合わせて同時に言った。
「ファンタジックな世界にようこそ！」
　二人の少女は、わー、と声を上げそうな表情で写真を撮った。その熱意は周囲を巻き込む。
　瑠奈は天使らしく微笑み、レオンは高慢な笑みを浮かべる。どちらも役に成り切って押し掛けた人々のフラッシュを浴び続けた。