クリーピーレイン～恐怖の化身と暗躍の悪魔～｜リアクション

クリーピーレイン～恐怖の化身と暗躍の悪魔～

●異変との遭遇

　しとしとと小雨降る中、呉井陽太と志波武道は、何でも屋『いぬもり』を目指していた。
「いーぬもり！」
「ふふ、何か、面白い依頼があったらいいよねぃ」
　武道がおどけたように声を弾ませれば、くすり、陽太も笑み零す。
　陽太の言葉に応じかけて――移した眼差しを、武道はある一点に吸い寄せられた。
（……なんだ、あれ？）
　正体を認識する時間も、陽太と情報を共有する暇も与えずに。
　得体の知れないナニカは、風のような速さで２人の元へと迫ってくる。
「こっちに来て……くそっ！」
　短く叫び、勢い良く陽太の身体を突き飛ばす武道。
　直後、彼の視界は暗転した。

「……武道君？」
　瞳を短く２度瞬かせる間に、陽太は、武道に助けられたのだということを理解した。
「武道君！！」
　慌てて名を呼んで力なく崩れ落ちた身体を揺さぶるも、武道は瞼を開かない。
　ぐたりとした彼の首筋には、黒薔薇が、場違いな艶やかさで咲いていた。
　武道が倒れた時、一瞬だけ視界を掠めた黒い影の姿はもう近くにない。けれど、
（……またナニカが？）
　と推察するのは、あまりにも容易だった。
（元凶を突き止めて解決しなくちゃだけど……今は、早く『いぬもり』へ）
　何でも屋は、もう、すぐそこだ。
　とにかく今は、友人の安全を確保したい。
　陽太は意識のない武道に肩を貸すと、何でも屋『いぬもり』までの道を一歩一歩辿った。

◇

　――俺が行きます。
　異変のことを知ったハルキ・イエハナは、愛する妻にそう言い聞かせて街へと出た。
　ハルキの妻は、お三夜さま達のファンだ。
　だからと言って、無暗に危険な目に遭わせたくはない。
　ならば、事件あるところへ出向くのは、自然、ハルキの役目になる。
「＜黒い化け物＞、ここだよ！　俺今、めっちゃ怖い体験したんだけどー！！！　聞いて！」
　大きな声で叫び、邪なるモノを呼ぶ。
　それは、驚くほど呆気なく、ハルキの目前に姿を見せた。
　瞬き一つの間にその様相を変える、不定形の黒いナニカ。
　ソレに向かって、ハルキは、「ラクな格好しなよ」と小さく笑ってみせた。
　次の瞬間には――目前に、ハルキ自身が立っている。
「俺の姿？　いいよ。それにしても……」
　悪趣味な場所だね、と、ハルキは、見る間に様相を変えた辺りの景色へ視線を巡らせた。

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