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- 00月00日生 00歳
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おとぎばなしに君の名を
白く長い兎の耳と衣装から零れ落ちそうなたわわな白い胸を弾ませ、巫部 紫苑はカモミールが隙間に植えられた石畳を歩く。ハイヒールの爪先がカモミールに触れるごと、ふわりふわりと立ち昇る林檎にも似た芳香が鼻先をくすぐる。その度、紫苑は淑やかな口元を優しく綻ばせた。
役割を見失って木の根元に座り込むハートの女王のもと、紅茶とケーキを乗せた銀盆を片手に近づき膝を折る。膝枕で眠るゼロ・シーアールシーを眺めていた顔を上げるハートの女王にふうわりと微笑みかける。
「とりあえず、美味しいものを食べてから考えましょう」
女王のために紅茶を淹れ、ついでに自分の分もカップに注ぎ、女王の隣に腰を下ろす。
「美味しいものを食べれば、ほんの少しずつでも幸せになれますから」
今日十何回目かのスイーツタイムと洒落込みながら、紫苑は楽し気にお茶会の庭を見渡した。ラズベリーソースとカスタードクリームのプチタルトを洗練された仕草で口に運び、白兎の耳をふかふか揺らして甘く微笑む。
テーブルのあちらでは、大田原 いいなが貴族姿の男性の作る木工細工を覗き込んでいる。柳内 みことと氷色のドレス姿の女性が静かにお茶を嗜んでいる。獅子目 悠月の歌う声に黒髪の男性が耳を傾けている。
テーブルのこちらでは、鴻上 彰尋が三人の女性と男装した栗色の髪の女の子の歓談に加わっていたり、七人の小人と一人の男性に囲まれた佐藤 瀬莉が黒衣の女性と停戦協定を結んでいたり。テーブルの下からひょこりと顔を出す黒猫とおかっぱ頭のこんに宮祀 智瑜がちょっぴり驚いた顔をした後くすくすと笑い出したり。幸せそうに微笑みあう日暮と夕を見てはこんと笑い合ったり。そうしてから、何気なく隣に立った背の高い男性に向けて眩しい笑顔を向けてみたり。
(脱出できなくても、別にいいかな？)
みんなの少なからず楽し気な様子を眺めながら、紫苑はそんなことをおっとりと考えてみたりもする。
紅茶をひとくち含んで美味しいと微笑むハートの女王に微笑み、紫苑は立ち上がる。白い腿を惜しげもなく晒し、飲み物と食べ物を乗せた銀盆を手にして次に向かうは、今しもどこからかやってきたらしい白い三角巾が可愛い栗色の髪の少女と八神 修のもと。ふたりをテーブルに着かせ、お茶とお菓子を振る舞ううち、
「獲物狩って来たぞ！」
庭の向こうから巨大猪を背中に負った偉丈夫な『おばあさん』と結緑 一色、それから躾されて大人しく付き従う狼もやってきた。
「いいですね、獅子鍋にしましょう！ 焼肉もしましょう！」
食べごたえのありそうな食材を前に、紫苑は胸を弾ませ立ち上がる。
軽い足取りで去る白兎じみた紫苑を見送ってから、修はふと周囲を見回し小さく目を瞠った。傍らに居る少女と同じ顔をした男装の麗人が向こうにも居る。
「まあ、ここは夢の世界みたいなものだからね。気にしちゃだめよ」
内心を読んだが如く頭上から掛けられた声に顔を仰げば、鮮やかな青空にふわりと浮かぶ、修たちをおとぎばなしの不思議な世界に迷い込ませた魔女姿の女悪魔。
「来ちゃった」
楽しそうだったし、と笑う女悪魔に、修は口元を緩ませる。
「子供の頃から不満だった物語の結末のひとつを変えられた」
こちらに放り込まれる際に女悪魔が口にした言葉に同意を示し、修はテーブルに置かれた予備のカップに紅茶を注いだ。
「苦労する生き様から何かを感じるものなのかもしれないが、物語の中くらいは幸福な結末であってほしいんだ」
嬉しそうに何度も頷く女悪魔を小さな茶会に誘い、彼女の名を問う。
「キッス、よ」
女悪魔は長い銀髪を指先に巻きつけながら応じた。ぐるりと庭を見回し、悪魔の力で無理やりに物語の登場人物とさせた寝子島の人々を眺めて小さく息を吐く。
「なんかやっぱりわかんなかった」
「わからない、とは？」
目を通したおとぎ話からも、強引に結末を変えさせたおとぎ話からも、『恋愛』をうまく読み取れなかったとキッスはどこか子供じみた仕草で唇を尖らせる。
「恋愛理解すれば男の子の誘惑も簡単になると思ったんだけど……ねぇ、あなた。ちょっと誘惑されてくれる？」
遠慮しとくよ、と修が冷静さを崩さず笑めば、キッスは小さく肩をすくめた。ふわり、その場に浮き上がる。
「今日のところは帰ってあげる。あなたたちももうすぐこの夢の世界からはサヨナラよ。それまで精々お楽しみなさい――」
役割を見失って木の根元に座り込むハートの女王のもと、紅茶とケーキを乗せた銀盆を片手に近づき膝を折る。膝枕で眠るゼロ・シーアールシーを眺めていた顔を上げるハートの女王にふうわりと微笑みかける。
「とりあえず、美味しいものを食べてから考えましょう」
女王のために紅茶を淹れ、ついでに自分の分もカップに注ぎ、女王の隣に腰を下ろす。
「美味しいものを食べれば、ほんの少しずつでも幸せになれますから」
今日十何回目かのスイーツタイムと洒落込みながら、紫苑は楽し気にお茶会の庭を見渡した。ラズベリーソースとカスタードクリームのプチタルトを洗練された仕草で口に運び、白兎の耳をふかふか揺らして甘く微笑む。
テーブルのあちらでは、大田原 いいなが貴族姿の男性の作る木工細工を覗き込んでいる。柳内 みことと氷色のドレス姿の女性が静かにお茶を嗜んでいる。獅子目 悠月の歌う声に黒髪の男性が耳を傾けている。
テーブルのこちらでは、鴻上 彰尋が三人の女性と男装した栗色の髪の女の子の歓談に加わっていたり、七人の小人と一人の男性に囲まれた佐藤 瀬莉が黒衣の女性と停戦協定を結んでいたり。テーブルの下からひょこりと顔を出す黒猫とおかっぱ頭のこんに宮祀 智瑜がちょっぴり驚いた顔をした後くすくすと笑い出したり。幸せそうに微笑みあう日暮と夕を見てはこんと笑い合ったり。そうしてから、何気なく隣に立った背の高い男性に向けて眩しい笑顔を向けてみたり。
(脱出できなくても、別にいいかな？)
みんなの少なからず楽し気な様子を眺めながら、紫苑はそんなことをおっとりと考えてみたりもする。
紅茶をひとくち含んで美味しいと微笑むハートの女王に微笑み、紫苑は立ち上がる。白い腿を惜しげもなく晒し、飲み物と食べ物を乗せた銀盆を手にして次に向かうは、今しもどこからかやってきたらしい白い三角巾が可愛い栗色の髪の少女と八神 修のもと。ふたりをテーブルに着かせ、お茶とお菓子を振る舞ううち、
「獲物狩って来たぞ！」
庭の向こうから巨大猪を背中に負った偉丈夫な『おばあさん』と結緑 一色、それから躾されて大人しく付き従う狼もやってきた。
「いいですね、獅子鍋にしましょう！ 焼肉もしましょう！」
食べごたえのありそうな食材を前に、紫苑は胸を弾ませ立ち上がる。
軽い足取りで去る白兎じみた紫苑を見送ってから、修はふと周囲を見回し小さく目を瞠った。傍らに居る少女と同じ顔をした男装の麗人が向こうにも居る。
「まあ、ここは夢の世界みたいなものだからね。気にしちゃだめよ」
内心を読んだが如く頭上から掛けられた声に顔を仰げば、鮮やかな青空にふわりと浮かぶ、修たちをおとぎばなしの不思議な世界に迷い込ませた魔女姿の女悪魔。
「来ちゃった」
楽しそうだったし、と笑う女悪魔に、修は口元を緩ませる。
「子供の頃から不満だった物語の結末のひとつを変えられた」
こちらに放り込まれる際に女悪魔が口にした言葉に同意を示し、修はテーブルに置かれた予備のカップに紅茶を注いだ。
「苦労する生き様から何かを感じるものなのかもしれないが、物語の中くらいは幸福な結末であってほしいんだ」
嬉しそうに何度も頷く女悪魔を小さな茶会に誘い、彼女の名を問う。
「キッス、よ」
女悪魔は長い銀髪を指先に巻きつけながら応じた。ぐるりと庭を見回し、悪魔の力で無理やりに物語の登場人物とさせた寝子島の人々を眺めて小さく息を吐く。
「なんかやっぱりわかんなかった」
「わからない、とは？」
目を通したおとぎ話からも、強引に結末を変えさせたおとぎ話からも、『恋愛』をうまく読み取れなかったとキッスはどこか子供じみた仕草で唇を尖らせる。
「恋愛理解すれば男の子の誘惑も簡単になると思ったんだけど……ねぇ、あなた。ちょっと誘惑されてくれる？」
遠慮しとくよ、と修が冷静さを崩さず笑めば、キッスは小さく肩をすくめた。ふわり、その場に浮き上がる。
「今日のところは帰ってあげる。あなたたちももうすぐこの夢の世界からはサヨナラよ。それまで精々お楽しみなさい――」
あとがき
担当マスター：
阿瀬春
ファンレターはマスターページから！
お待たせいたしました。
おとぎばなしに入り込んだみなさまの一幕、お届けにあがりました。
どのお話もとても楽しく書かせて頂きました！
案外内容がうろ覚えなお話もありまして、再読してみるのもまた楽しかったのです。
ご参加くださいまして、お読みくださいまして、ありがとうございました！
少しでもお楽しみ頂けましたら嬉しいです。
それでは、またいつかお会いできましたら幸いです。
ありがとうございました！
おとぎばなしに入り込んだみなさまの一幕、お届けにあがりました。
どのお話もとても楽しく書かせて頂きました！
案外内容がうろ覚えなお話もありまして、再読してみるのもまた楽しかったのです。
ご参加くださいまして、お読みくださいまして、ありがとうございました！
少しでもお楽しみ頂けましたら嬉しいです。
それでは、またいつかお会いできましたら幸いです。
ありがとうございました！
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
-
- 2019年05月10日
- 参加申し込みの期限
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- 2019年05月17日 11時00分
- アクション投稿の期限
-
- 2019年05月17日 11時00分
