this frame prevents back forward cache
0
0
はじめての方へ
ヘルプ
ログイン
\ オーバータイム!/
種族
学年:職業
00月00日生 00歳
AAA000000
ホームトップ
おしらせ
新着通知
はじめての方へ
遊び方
世界設定
キャラクター一覧
キャラクター検索
キャラクター作成
らっポ
チケット
コミュニティトップ(検索)
コミュニティ一覧
公式コミュニティ一覧
公開トピック一覧
コミュニティ書き込み検索
シナリオトップ
シナリオ一覧(参加受付中)
シナリオ一覧(すべて)
リアクション一覧
ゲームマスター一覧
ゲームマスター検索
イラストトップ
イラスト一覧
イラスト検索
イラストレーター一覧
イラストレーター検索
自作イラスト一覧
アイテム一覧(検索)
マイリスト一覧(検索)
寝子島(全景)
寝子島(地図)
寝子島(セカンドマップ)
寝子島高校
おとぎばなしに君の名を
<< もどる
1
…
7
8
9
10
11
つぎへ >>
躰が波に掴まれる。波の腕に振り上げられるまま、真っ暗な空へと放り出される。落ちる躰を大粒の雨が打つ。荒れ狂う海面が迫るも、
「……ふふ」
唇から笑みが零れた。剥き出しの両腕が自然と頭の上に伸びる。暴れる風を切り裂くナイフのかたちして波に飛び込む。暗雲の空よりも暖かな海に潜れば、躰はたちまちにして自由を取り戻す。ひとのかたちした腕より自在に動く尾鰭で水を分け、流れ寄せる水流に逆らって泳げば、堪らず楽しい笑みが溢れた。くすくすと笑いながら激しく舞う海と共に踊る。波が海中に引きずり込んだ空気の珠と一緒に水中で宙返りをして、
(……人魚姫か)
ふと、
獅子目 悠月
は瞬いた。女悪魔によって己が引きずり込まれた物語に思い至った。
頭上を見上げれば、荒れ狂う波が見えた。激しく揺らぐ水流が見えた。嵐の海に決して惑わぬ己の脚が魚のそれに変化しているのを、男であるはずの肢体が女のそれとなっているのを確かめ、尾鰭で水を蹴る。物語の通りがあれば、航海中に嵐に巻き込まれ海に投げ出された『王子』がいるはず。
海を自由に泳ぎながら、水に呼吸をしながら瞳を巡らせる。荒れて濁る水中、波に翻弄されて沈んで行く黒髪の男の姿があった。
打ち捨てておくのも寝覚めが悪い。
水中を翔け、沈み行く男の腕を掴む。意識を失った男の顔すら見ぬまま、嵐の海を抜ける。
海面に顔を出す。風と波はまだ少し強いものの嵐の海域は脱出したことを確かめ、手近な陸地に男の躰を運ぶ。海が浅くなればなるほど、男の躰は重さを増した。
(この辺りでいいか)
歩くに向かぬ尾鰭の脚を使い、男の躰をどうにか波打ち際に押し上げ一息吐いたところで、悠月は髪と同じ赤銅色した眉をひそめる。波の滴がついた唇に知らず零れたのは、悠月が想いを寄せる男の名。
(コイツは)
物語の登場人物であるはず。であれば、きっと本人ではない。だが、
(なるほど、人魚姫の……)
『人魚姫』である悠月の好きな人物が配置されているということなのだろう。
息を失った王子の唇に唇を寄せる。気道を確保し、人工呼吸を行う。ほどなく息を吹き返した男は、けれどまだどこかぼんやりとしていた。『人魚姫』は、空色の瞳を緩く瞬かせるばかりの王子の顔を見下ろす。
(……コイツに会いたくて、コイツと結ばれたくて、)
人魚姫は人となる。そうして結ばれずに泡となる。
波に半身を洗われるがまま、茫洋した眼差しを空に向けるばかりの『王子』の額に濡れた黒髪が垂れている。空色の瞳を遮る髪を指先でかき上げてやりながら、『人魚姫』である悠月はそっと息を吐いた。
吐き出した息の切なさに唇を噛む。『王子』を愛おしく感じてしまうこの感情の理由は何なのだろう。
物語の主人公である『人魚姫』の感情に引きずられているのか。
愛しい男と似た顔の『王子』に己の心が反応してしまっているのか。
(……そもそも人にならなければ)
この男とこの先邂逅せずに済む。
この男にこれ以上惹かれずに済む。
この男に恋心を裏切られずに済む。
(だが)
それではきっと、物語は終わらせられない。元の世界に戻れなくなるのは絶対に避けたい。
(いや、しかし……)
男の額に触れ、頬に触れ、悠月は思案に思案を重ねる。人にならないという選択の先に待ち受ける可能性について。人となることで得るものと失うものについて。
(声を)
己の喉に触れる。『人魚姫』であって『人魚姫』ではない己にとって、歌うために必要なこの声は、人の脚と引き換えに出来るものでは決してない。
(歌を失って、どうやって愛を語れるんだ)
もう一度、王子の頭を優しく撫でる。唇を開けば、ただ一人を想いただ一人のために祈る歌が溢れて落ちた。
気絶している王子の心に己の心が、歌が、しみ込むように願う。
(……コイツは、アイツだ)
だから、愛を込めて歌を歌おう。
海の魔女の棲み処には行かなかった。
その代わり、それから毎日浜辺に通った。王子の姿を見かけては、岩場の影に身を隠してあの歌をうたった。姿は見せず、己の声だけを聞かせた。
声に愛を乗せる。旋律に誘惑を孕ませる。王子がこの声の、歌の虜になるように歌を海と空に響かせる。それは、王子と同じ人間の姿になるよりもずっと、
(俺にとっては)
ずっと、雄弁な愛の告白。
ささやかな胸に膨れ上がる愛を歌にする。そうでもしなければこの胸はきっと張り裂けてしまう。
浜辺に王子が佇んでいる。どこか必死な表情で周囲を見回している。熱烈なまでの愛を歌にこめて注いでくる姿の見えない誰かを探し続けている。
(この愛の歌を受けて、なお)
王子に向けて愛を語り掛けながら、人魚姫はひそやかに悲しく微笑む。
(別の女を好きになるなら……)
もしもそうであるのなら、この愛を胸に泡になって消えた方が幸せというもの。
元の物語通りとなるのか否か、この先どちらの結末に転ぶのかは、
(お前次第だ)
ただ、自分だけが追いかけるのは腹が立った。他の人間にはともかく、『アイツ』には追いかけて来てほしかった。
(さあ、早く――)
焦れる思いが小さな笑みに変わったそのとき、己とは違う声で、己と同じ歌が聞こえた。歌う声に込められているのが己と同じ想いであると瞬きの間に悟り、人魚姫は思わず岩陰から顔を出す。浜辺に立ち歌う王子を見る。
歌声さえも『アイツ』と同じ王子の青い瞳が、人魚姫を映す。映して、微笑む。
(ああ、くそ……)
唇を重ねるように歌声を重ねながら、悠月は己の頬に熱が昇るのをはっきりと感じた。眩暈にも似た恋情に襲い掛かられるがまま、人魚姫はせめてもの抵抗に願う。王子に向けて、しなやかな手を伸ばす。
(早く、おちてこい)
<< もどる
1
…
7
8
9
10
11
つぎへ >>
このページにイラストを設定する
シナリオ
シナリオトップ
シナリオ一覧(参加受付中)
シナリオ一覧(すべて)
リアクション一覧
ゲームマスター一覧
ゲームマスター検索
シナリオご利用ガイド
グループ参加ご利用ガイド
シナリオタイプのご案内
おとぎばなしに君の名を
シナリオガイド
リアクション
参加キャラクター一覧
コメントページ
ダイアリー一覧
シナリオデータ
担当ゲームマスター
阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
SF・ファンタジー
定員
10人
参加キャラクター数
10人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2019年05月10日
参加申し込みの期限
2019年05月17日 11時00分
アクション投稿の期限
2019年05月17日 11時00分
参加キャラクター一覧
もっと!