生き残るのは誰だ！　アンチ納涼がまん大会！｜リアクション

生き残るのは誰だ！　アンチ納涼がまん大会！

　意外な抜けぶりを見せた佐藤英二のその横では、目を閉じ、つとめて平静を保つよう自らを律しながら、森蓮が灼熱地獄に耐えていた。彼もまた、桜栄あずさ理事長の理不尽な計らいにより、この戦場に投げ込まれることになったのである。

「熱中症問題は理事長もご存知でしょう。これからの季節、暑熱順化が進んでいない方は自覚なく、気候になじめず倒れてしまうこともあります。なのにあえてこんなイベントをなさるのは、環境負荷の点で問題があるのではないのですか」
蓮は真摯にあずさに問うたのだ。参加者の体のことも心配であったし、万一何かあった場合に、あずさの短慮と責められる結果になることは防ぎたかった。だが彼女の答えはこうであった。
「だーいじょうぶよ。救護班だって準備するし、私だって伊達に理事長やってないわ。人員の管理はまかせてよ。森君も出てみればわかるわ！　うん、そうしましょう。出なさい」
最後の方の「出なさい」と言う顔は笑っていなかった。こうなってしまうと蓮はうなずくほかはない。奨学金の補助を受けて学校に通っている義理もあったし、考えてみれば自分も出場して、他の参加者に目を配ればよいのではないかと思い立ったのだ。

さてその結果、蓮はこの場で汗と熱と綿とうどん汁にまみれながら、同士を油断なく見守っているのだった。
（健康と引き換えにしてでも欲しいような商品はないでしょう。異常が現れた方には退出を促さなければ）
棄権せよといわれて喜んでうなずくものはいないだろう。それでも蓮は、憎まれ役を進んで引き受けるつもりだった。幸い普段から徒歩で移動し、奉仕活動などにも積極的に参加している蓮は基礎体力はある。できるだけ持ちこたえながら、多くの参加者に気を配るつもりでいた。視線が虚ろになっている者や、指先の痺れや震えが出ている者はいないだろうか。いまのところは、みんなまだ軽口を叩いたり、大げさに苦しんで見せたりと余裕を見せていた。