【星幽塔】第一階層　突然……summer vacation!｜リアクション

【星幽塔】第一階層　突然……summer vacation!

●おっとこっのこ♪

「ふぇぇ～、メリィちゃん泳ぐの早いですー」
　ぜえぜえ。魔水の光のお陰でなんとかメリィ・ランページの脳筋泳ぎに追いついたリリエル・エーテライト。メリィの傍まで来ると肩で息をしながらふううとペンギン浮き輪にしなだれかかる。心なしかペンギンの顔もお疲れのようだ。
「えへへー、ごめんごめん。楽しくてついついめっちゃ泳いじゃった～！」
　メリィが振り返りペロリと舌を出す。そしてその琥珀色の瞳をきらりと輝かせながらまた前を見て言った。
「ねぇねぇ、あそこにも湖があるよ」
「え？」
　リリエルが顔を上げれば、確かに今いる湖の向こうに、小さな湖がある。大きさは今いる湖とは比べものにならないくらい小さなものだが、そこの水も澄んでいて、奥まった所にあるから誰も気付かないのか、人はいなさそうだった。
「可愛らしい湖ですね。……せっかく見つけたから、入ってみましょうか」
「そうだよね！　ちょっとワクワクするよね、行ってみよっか！」
　２人は水面から上がると、小さな湖の前にてててと走り寄る。そして仲良く２人並んだ。
「それじゃあ一緒にせーので飛び込みましょう♪」
「いいよー！　よーし」

「「せーのっ！」」

　ざっぶ～ん！　２人は思いきり足を踏み出し、見事に頭まで水の中。ぶくぶくと潜ってから、笑顔で顔を出した。
「ふあー、人がいないから気持ち良く飛び込めますね」
　リリエルが可愛らしい声で―――ん？　声が……可愛らしいにしては少々低い……。
「あれ？　なんだか私の声少しおかしいような……」
　本人も気付いたのだろう、喉を触るリリエルの横でメリィも首を捻っていた。
「……？　あれれ？　なんか変だぞー」
　メリィの声もいつもの声ではない。でも以前聞いたような声。不思議に思ったリリエルが横を向き、あー！　驚きの声を上げた。
「はわわ！？　メリィちゃんがメリィくんになってます？！」
「え、ほんと？！」
　メリィがわくわくと自分を見る。そこには筋肉質の締まった少年の体に虎柄ビキニという何とも珍妙な姿があった。
「おおーー！！　あたしまた男の子になってるー！！　かんどーものだなー！！」
　瞳をキラキラさせながら喜んだメリィ。顔を上げその瞳のキラキラが倍増した。
「おおおーー！！　リリエルもリリエルくんになってるぞ！」
「え？」
　メリィに驚いていたリリエルが慌てて自分の体を見る。そこにはすらりと手足が伸びている。柔らかな肌というよりは明らかに骨張り、筋肉のついたその体に、水色フリルのビキニが貼り付くように膨らんでいない胸を覆っていた。
「私も男の子にー？！」
　リリエルが少年の声で叫ぶ。メリィ少年がにししと嬉しそうに笑った。
「うおー、楽しいなあ！　せっかくだから、この姿で遊ぼー！！」
　……湖に入っているうちはいいですが、出たらビキニ姿というのを忘れないで下さいね。