【星幽塔】第一階層　突然……summer vacation!｜リアクション

【星幽塔】第一階層　突然……summer vacation!

●まだまだバケーション！

「むっふっふー」
　夕方。開店前のBarアストラルで、手鏡を手に一人ほくそ笑む美しい女性がいた。アリス・ミーティアだ。

　森では小さくなったりと一騒動あった彼女。実は今度は広場で買い出しをした時に買った飴を舐めたら、なんと大人のお姉さんになってしまったのだ。（見た目が、の話である。５０１歳が５１１歳になってもあまり変わらない）
　いや、これは驚いた。浴衣の胸はきつきつ、丈はつんつるてんですらりとしたふくらはぎが覗いてしまう。広場の噴水に映った自分の姿を見たアリスは仰天して……喜んだ。
（やった！　凄く大人っぽい！）
　谷間の覗く襟合わせを直してから（といってもすぐに戻ってしまうのだが）、アリスは買った食材を手に、うきうきでバーに戻ったのだった。

　最近暑い日が続く城下町は、日が落ちてからも人の波は途切れる事はない。むしろ涼しくなって、これから楽しもうとするほしびと達の方が多いくらいだ。
「いらっしゃいませ！」
　空の青が深くなり、星が煌めきだすと、Barアストラル夜の部の始まりだ。飲んべえの常連達がちらほらと顔を出し始めた。
「お、新顔かい？　綺麗なお姉ちゃんだね」
　ちょっと鼻の下を伸ばして入ってきた常連に、アリスはにっこり笑った。
「私よ、ア　リ　ス！」
「ああ、アリス……って、ええっ？！？」
　顎が外れんばかりに驚く客に、アリスはパチンと色っぽくウインク。客は真っ赤になってしまった。

　アリスは今日も忙しく働く。いつもより注文が多いのは浴衣姿のせい？　それともこの容姿のお陰？
　テーブルの客の視線が自分を追うのが分かる。いつも軽口をたたき合う客も、今日は随分優しくて。
（たまには大人になるのも良いね）
　お客に声をかけられ会話を楽しんでいたアリス。先輩の声が飛んできた。
「ほら忙しいんだからアリス！　サボらない！」
「サボってないもん！　お客さんと楽しく話してただけだもの！」
　―――大人になってもやっぱりアリスはアリスである。

　うだるような暑さはなりを潜め、夜風が涼しさを運んでいる。
「はーい、生中お待たせしましたー！」
　いつものアリスの声がバーに響く。ランタンが灯された城下町は陽気なほしびと達で大賑わい。
　星幽塔の夏休みは、まだまだ終わりそうにない。

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