【星幽塔】第一階層　突然……summer vacation!｜リアクション

【星幽塔】第一階層　突然……summer vacation!

●ハッピーサマバケ！！

　静かな湖畔に、可愛らしい声が響いていた。

「うーみー！　じゃなくてみずうーみーです！」
「うっみーうっみーみっずーうみー、ハッピーサマーバケーショーン！！　だ！！　……って、これも寝子島の人達が言ってたー！！」
　仲良しほしびと、リリエル・エーテライトとメリィ・ランページである。それにしても何と可愛らしい水着姿か。リリエルはフリルとリボンをあしらった薄い水色のパレオつきビキニ、メリィは虎柄のビキニ。その上ペンギンさんと虎さんの浮き輪をしっかり持っている姿と言ったら……いや、眼福眼福。

　暑い！　寝子島と一緒！　じゃあ夏休みだ！　という事でしっかり泳ぎに来た彼女達。周囲もそんな元気な彼女達ににこにこの視線を送る。メリィが湖を前にきらきらと瞳を輝かせ言った。
「楽しもーねーリリエル！」
「ええ、楽しんじゃいましょうメリィちゃん！」
「よーし、レッツだゴー！」
「あ、メリィちゃん！」
　早速湖に突撃しかけたメリィを、リリエルがガシリと止めた。
「泳ぐ前には準備運動を忘れずにですよ！」
「そだね！　準備運動だ！」
　２人はペンギンと虎の浮き輪を仲良く重ね、いっちにーさんしー！　と湖畔で元気に準備運動。周囲はますますにこにこの視線を送る。しっかり体もほぐれたところで、２人はすぽっと浮き輪を装着した。
「いざ！！　湖へー！！」
「はい、メリィちゃん！！」

　スタタと走り、湖に足を浸けると、２人は顔を見合わせた。
「ひゃ～！」
「ふわぁ♪」
「「……冷たくてきもちい～！！」」
　キャッキャと２人は浮き輪に掴まりながら湖に入る。そこでちゃぽちゃぽ可愛らしく泳ぐのかなと思いきや。
「うーん、これならいくらでも泳げちゃいそう！　よぉ～し、全速前進だ！！」
　キラリン☆　と瞳を輝かせると、メリィが文字通り水しぶきを上げて物凄い勢いで泳ぎだしたではないか。え、実は虎の浮き輪にモーターついてたんですかっていうスピードで。
「あ、メリィちゃんどこまで泳いでいくんですか？！　待って下さーい！」
　驚くリリエルの声も振り切るスピードで、メリィは笑顔全開泳いでいく（それも浮き輪で）。置いてけぼりのリリエルは可愛らしく眉を八の字にした。
「ふえぇ、困りましたー。よし、こうなったら！」
　リリエルはむん！　とペンギンの浮き輪に力を込める。するとペンギンの浮き輪がぼうっと神秘的に輝き始めたではないか。心なしかペンギンの表情も強そうになった気がする。
「お願いしますね、ペンペンさん」
　リリエルはそっとペンギンの浮き輪を撫でる。心持ち赤くなった気がしないでもないペンギン浮き輪をしっかり抱えると、リリエルはキッと前を見据えた。
「行きますよー！」
　ズババババ！　声と共に盛大な水しぶきが上がり、バビューンとリリエルも物凄い速度で泳ぎ始めたではないか（それもキリリとしたペンギン浮き輪で）。あっという間に彼女の姿は見えなくなってしまった。

　―――実はリリエルが今持っている星の力は魔水の光。これが浮き輪にこめられていたのだ（ちなみにメリィは物理だが）。その魔水の光で上手に水流を作り出し、泳ぐ速度を上げたという訳だが……周囲の人々はそんな事を知る由もなく。静かな湖畔で突然可愛らしい女の子２人が浮き輪で脳筋に泳いでいく姿を呆然と眺めていたのであった。