悪魔の陰謀　もれいびＶＳもれいび！！｜リアクション

悪魔の陰謀　もれいびＶＳもれいび！！

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　モールの一角にある、小物を取り扱っているお店でのこと。
　ぎょっとするような音を立てて、棚が倒れた。それから女の子が一人、一緒になって倒れ込む。
　軽く悲鳴があがって、お客さんが波が引くように離れていく。
　対して、店員が血相を変えて駆け寄ってくる。
　引っかけてしまったみたいで、と謝る女の子が「いたっ」と顔をしかめれば、「ちょっと待っててくださいね！」と店員は何処かへ駆けていってしまった。
　店員の姿が見えなくなると、ひとり残された女の子――吉住志桜里は、何事もなかったかのように立ち上がる。
　心の中で店員さんに詫つつ、倒した棚の商品を防犯ゲートの向こうへ投げた。
　警報タグが鳴り響き、現れるのは警備員――ではなく。
　サラリーマン、中学生、OL……年も職もバラバラな、虚ろな目をした数人の男女。
　すなわち、洗脳もれいびだった。
　志桜里の瞳から柔和さが消え、いつもはたおやかに丸め込まれている鋭さが顕となる。
　構えを取るのと、洗脳もれいびが動くのはほぼ同時。
　中学生が風の刃を放ち、サラリーマンの身体が岩の如くに変貌、そしてOLが真正面から突っ込んでくる。
　肌が、服が、かまいたちに刻まれようと、膝を着かせぬなら何するものぞ。
　風の刃は避けもせず、OLの拳を受け流す。
　拳圧が肌をひりつかせ、流してもなお骨身を軋ませる衝撃。
　けれどそれも、こちらを倒せないなら意味はない。
　がら空きのボディへ、拳を届かせる。
　――1秒。
　咄嗟に身をひくOL、すかさずその襟を掴んで逃さない。
　――2秒。
　横手から踏み込む岩石サラリーマン。周囲から襲いかかる風の刃。
　ぴたりと腹に拳を当てたまま、OLの身体を襟からぶん回してサラリーマンにぶち当てる。
　そのまま旋転、風の刃をOLで受ける。
　――3秒。
　『ウチデノコブシ』、発動。
　OLの身体が一寸にまで縮まって、そのままぽとりと床へ落ちる。
　うろたえているであろうOLの頭上へ、志桜里はビーサンを叩きつけた。
　非があるのは彼らではなく悪魔だけれど、こちとら悪魔に喧嘩を売られて買い物の予定は滅茶苦茶なのだ。
　手加減なしの荒療治くらい、甘んじて受けてもらわねば。
　故にその一足に躊躇いはなく、その一撃に容赦はない。
　冴え冴えとした視線が、次いで岩石のサラリーマンを射抜く。
　一瞬ひるんだサラリーマンは、けれど次の瞬間には拳をハンマーの如くに組んで振り回す。
　しかしその打撃は精彩を欠き、当たったところで身体の芯へは達しない。
　だから、志桜里は構わず踏み込んだ。
　拳が触れる。
　逃げようとするサラリーマンの膝を、突き刺すほどの勢いで踏みつける。
　岩石のように身を固めても、人型ならば関節は脆い。
　態勢を崩したサラリーマンに拳を押し付け、3秒。
「如何に強化すれど、虫の矮躯で耐えられる武人の一撃など無く」
　踏みつけ、足運びのままにすり潰す。
　呆けた顔でその様を見ていた中学生が、我に返った。
　風の刃を飛ばしながら一目散に逃げるけれど、志桜里とはそもそもコンパスの差がありすぎた。
　首根っこを掴まれて、押し付けられる拳。
　三秒経てば、結末は同じ。