悪魔の陰謀　もれいびＶＳもれいび！！｜リアクション

悪魔の陰謀　もれいびＶＳもれいび！！

◆
　椎井莉鳥がスマホで時間を確認すると、正午まであと十数分しかなかった。
　アウトレットには買い物へ来ただけだったのだけれど、ミラの声を聞いてしまったからにはひとまず後回し。
　アウトレットの中を歩き回り、ウィンドウショッピングに興じているフリをしながら、周囲の様子を注意深く伺う。
　様子のおかしい人は居ないか。
　人気のない場所はないか。
　周りの目をうまくごまかす手はないか。
　そうやって思案しながら歩くうちに、莉鳥は気付く。
　さっきから、追ってくる気配がある。

　北里雅樹がアウトレットへ来たのは、受験勉強の息抜きのためだった。
　夏休み真っ盛りということもあって、人出はなかなか。
　人ごみで、かえって疲れそうな気もしはじめた頃。
「……ん」
　雅樹は人ごみの中に、幼馴染で元カノで腐れ縁の――莉鳥の姿を目の端に留めた。
　休日だし、たまたま出くわすこともあるだろう。
　ただそれで済ませるには、莉鳥の様子は少し妙だった。
　何故って、どこかピリピリした空気を纏っていたからだ。
（もしかして、何か事件か？）
　とりあえず声をかけてみようと、莉鳥を追いかける。
　階段のほうへと消えていった背中に、
「おい椎――うおっ！？」
　返答は、電気を放つ指先。
　攻撃されるとは思っていなくて、よろけた拍子にそのまますっ転ぶ。
　すると不意に、電気が――『スタンハンド』が解除される。
「……なにやってんの？」
　静かな声に若干の呆れの色をにじませた莉鳥が、尻もちをついた雅樹を見下ろしていた。
　雅樹はズボンを払いながら起き上がると、
「たまたま見かけたら、妙にピリピリしてたし気になっただけだ」
　また何か事件かと問えば、莉鳥も得心がいった様子。
　ミラの呼びかけについて手短に説明すれば、雅樹にも大体の状況は掴めたようだった。
「で、俺は何すりゃいいんだ？」
　実際のところ、その問いかけは必要なかった。
　問いながら雅樹はスマホを取り出していて、莉鳥もその意味がわかっていたから。
　そのくらいの関係性は、まだ二人の間に残っている。

このページにイラストを設定する