悪魔の陰謀　もれいびＶＳもれいび！！｜リアクション

悪魔の陰謀　もれいびＶＳもれいび！！

◆
　十二時の鐘が鳴った時、椎井莉鳥は一人アウトレットを歩き回っていた。
　ふと視線を向けた鉢植えの陰から、二つの人影がゆらりと通路へ歩み出た。
　長身のOLと、小柄な少女の二人組。
　傍目には気分が悪そうにでも見える二人に、心配して声をかけるような素振りで近づく莉鳥。
　直後、少女が奇声をあげて襲いかかってきた。
　ナイフのように鋭く伸びた爪を、ギリギリでかわす莉鳥。
　周囲にどよめきが起き、そして誰かが悲鳴をあげかける。
　そこへ北里雅樹が、人波を割って飛び込んでくる。
「寝子高映研の者でーす、ゲリラ撮影中！」
　手持ちスタンドに接続したスマホを掲げて叫べば、緊迫した空気が一転して、「はぁ？」とでも言いたげな呆れたソレへと変じていく。
　当然ながら、ごまかしである。
「いやーすみません！　すみませんほんと！　お騒がせします！　ほら皆、アクションしながら移動移動！」
　ちょっと大げさなくらい周囲に頭をさげながら、莉鳥と洗脳もれいびを誘導していく。　
　カメラで撮影するふりをしながら観察していた雅樹は、ひとつ妙なことに気付く。
　OLもれいびのほうが、ろっこんを使う様子がないのだ。
　時たま思い出したように莉鳥に攻撃をしかけるが、雅樹の目から見てもとそうとわかるほどに普通の動き。
（こいつのろっこんは何だ？）
　訝しむ間にも、モールの端っこまで到着。周囲に人影はほとんどない。
　すかさず、莉鳥が反撃に移る。
　少女の爪をギリギリでかわし、目を閉じて集中。
　『スタンハンド』の電流が少女を打ち据え、かわいらしい悲鳴があがる。　
　けれどその時、OLの身体が光を放った。
　悲鳴が途切れたかと思うと、少女はすぐさま莉鳥の顔面へ爪を繰り出す。
「っ！」
　咄嗟に首をひねれば、切り裂かれた髪がパラパラと床へ落ちた。
　すかさずもう一度『スタンハンド』をぶつけるが、OLが光をはなつたいびに少女はケロリとして襲いかかってくる。
　――回復系のろっこんか。
　歯噛みする莉鳥。
　ならばとOLを狙うえば、すかさず少女が割って入る。
　そしてOLが光を放てば、スタンハンドがいなされる。
　その間に雅樹は周囲を伺いつつ、思考を巡らせていた。
　自分のろっこんでは、直接的な戦闘支援は難しい。
　OLを組み伏せる？　回復能力しかないなら、雅樹でもなんとかなるかもしれない。
　ただ、組み伏せるだけで発動が防げるかがわからないし、そのまま気絶するまで殴り倒したりできる気がしない。
　だから確実に撹乱する手段が必要で、それはこの辺りには――
「椎井！」
　呼びかけだけで充分。雅樹が何をする気なのか、自分が何をすればいいのか。
　莉鳥はすぐに理解した。
　電気を連続で放出し、少女を足どめ。OLがすぐさま回復させるが、かまわず電気を放出し続ける。
　そうして二人の意識が莉鳥に向いている間に、雅樹がOLへと忍び寄った。
　その手には、モール備え付けの消火器。
　勢いよく叩きつけられた噴霧に、たまらずOLと少女がむせ返る。
　その隙に莉鳥がOLに肉薄し、『スタンハンド』。
　短い悲鳴があがって、OLが電圧によって気絶する。
　続けてもう一発の『スタンハンド』を少女に流し込めば、今度こそ彼女も気を失うのだった。

このページにイラストを設定する