寝子島美味しい物フェスタ！｜リアクション

寝子島美味しい物フェスタ！

　序：準備は万端？

――寝子島美味しい物フェスタ・当日。

　その日は天候も良く、早朝から出店者やボランティアスタッフが会場に集まっていた。
　朝日がきらきら輝く中、町長の中沢リッカルドは笑顔で彼らの前へと現れる。
「ブォナ・マッティーナ！　皆さん、今日はお集まりいただき、本当にありがとうございます！」
　町長の言葉に耳を傾けようと、ボランティアスタッフの１人、森蓮は顔を上げる。彼と同じくボランティアで参加する御剣刀や叔母が出す屋台の手伝いに駆り出された大田原いいなもまた町長の話を聞いていた。
　まぁ、この町長はお喋り好きな為ちょっと時間が押しそうになったり、「はぁ、なんで儂がこんな事に……」なんていいなが眠い目をこすりながら呟いたり、とそれはご愛嬌と言った所だろうか。
「皆さんと共に、寝子島の活気をアピールし、全国へ発信したいと思います。それでは、よろしくお願いします！」
　町長の溌剌とした挨拶に、全員が盛大な拍手を送る。この様子ならうまくいくかもしれない、と蓮や刀は小さく微笑んだ。

　リッカルドの挨拶が終わると、早速屋台の準備である。といってもテントなどは前日に用意している為、本格的な出店準備が行われるのだ。
　常葉治もきりっとした和服姿で準備に励む。彼女の視線の先にあるのは、旅館が手がけた『名物』候補の入った箱だ。彼女の凛とした声が響き、板前さん達もキビキビと動く。
　一方、八十八旗信彦もまた丁寧にテーブルを拭いたり、何故かバケツを用意したりと張り切った様子。彼が準備した物は一見普通に見えるのだが……？
（オイシイ物フェスタって言うんだし、ね？）
　と何やら企んで（？）いるようだが、それは一体何なのかはお楽しみに。
　旧市街からも出店は多数あった。その１つである魚屋『魚新』の屋台では、新井すばるが早速ちくわの着ぐるみを纏っている。これが妙に可愛らしく、治は思わずくすり、と笑った。
「可愛いですね」
「ありがとう！」
　可愛らしい仕草で礼を述べるちくわ（inすばる）。和むなぁ、なんて思っていた信彦がそんな様子でみていた。

「よいしょっと……」
　刀が運んでいるのは小型のガスボンベだった。剣術や剣道部での鍛錬のおかげか、そこまで重いとは思わない。
　額に浮かんだ汗を拭っていると、『うさぎ屋』の女将さんから「ありがとう」と笑顔で言われた。その後ろではいいながキャベツを刻んでいるのが見えた。

「ん？」
　猫島寝太郎がテーブルを運んでいると、町長が「チャオ！」と笑顔で近づいてきた。寝太郎が礼を返しつつ、
（ナポリの風を感じるなぁ……。気さくな町長さんだね）
　と思っていると町長が１つのテントを指差した。よく見ると寝子島産の柑橘類を紹介するブースらしい。
「実はようやく試作品が出来て、急遽ゼリーとジュースを振舞う事になりました。そっちの会場設営に回ってもらえませんか？」
視線の先では蓮が他のボランティアと一緒にテーブルのセッティングに励んでいる。寝太郎も明るく返事を返すと、早速ジュースの瓶を運び始めた。

　こうして準備は整い、『寝子島美味しい物フェスタ』は幕を開ける。空に浮かぶはマスコットであるサンマさんの姿をしたアドバルーンなどが浮かび、来場者を待ち構えていた。

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