寝子島美味しい物フェスタ！｜リアクション

寝子島美味しい物フェスタ！

破：開催！　美味しい物フェスタ！！

　シーサイド駅前で待ち合わせをしていた青野海仔はやって来た原駆まひると冬月詩歌に手を振った。
「おはよう……ございます、お姉さん」
「もしかして、待たせたのか？」
　そんな二人に海仔は今来た所だ、と言うように首を振る。安心したような後輩２人ににこっ、と笑うと彼女は会場の方角をちらっ、とみた。既に多くの人が集まっているようだ。
「そろそろいこう」
　そういう海仔に、まひると詩歌は頷いた。
　３人が会場に入ると、既に多くの人で賑わっていた。はぐれないように、と海仔が手を伸ばすと、後輩２人は少しはにかんでその手を取るのだった。

　その数分前。町長のリッカルドは一人の少女ジーナ・ナニカに熱いアピールをされていた。
「えーっと、つまり。審査員の一人にして欲しい、と」
　前に提示されたA4サイズのボードに書かれた内容を読み、希望を把握する。ボードの内容を要約すると以下の通り。
『自分が屋台の物を食べる事によって観衆がより興味を持つだろう。また、自分が感想を言う事で判断基準にもなるだろう』
　そして最後に
『私食べる嬉しい、みんなもお店で買う、みんな嬉しい』
　まぁ、ジーナとしてはタダで美味しい物を食べられたらいいな、と考えているようだが……。町長はしばし考え、１つぽん、と手を打つ。
「広報という形でどうです？　確かに、美味しそうに食べている姿を見れば他のお客様も興味を持つでしょう。うん、それがいい」
　なんか閃いたらしい町長は満足げに何度も頷く。どっちにしろ美味しい物が沢山食べられそうだ、とジーナは拳をぐっ、と握り締めた。

「こっちだよ！　こっち！」
「そんなに走ると転びますよ」
　元気いっぱいな野々ののこと共にフェスタを訪れた綾辻綾花は落ちそうになった眼鏡を抑えながら彼女を追いかける。そうしながらも目的である『サンマさん飴』が売ってある場所を探してみるが、人が多くてわかりづらい。
「こっちにパンフレットがあるよ」
　そう言って手渡してくれたのは雨寺凛。彼女もフェスタを楽しみにしていたようで、とてもワクワクしているようだった。
「わぁ、ありがとう！　これがあったらわかりやすいね」
　ののこが早速パンフレットを広げてみると、どこにどんな屋台があるのか詳しく書かれていた。綾花と凛も一緒に覗き込んでみる。
「へぇ、こんなに名物ってあるんだねぇ。おっ、コロッケの屋台発見！」
　高校生になってから寝子島に来た凛はあまり名物を知らなかったようだが、これを機に楽しもうと思っているようだ。コロッケ屋の近くにキャンディー屋を見つけた綾花は一緒に行ってみる事にした。

（うーん、どこかなぁ）
　恵御納夏朝はパンフレットとにらめっこしつつ、屋台を回っていた。彼女の目的は『こねころころ』というお菓子。それが見つかるまでは愛らしい猫の姿をした名物を見つけてもぐっ、と財布の紐を締める。
　と、そんな姿を見かけたのは風宮悠。彼女はクラスでちょっと噂にあがった『ねこまん』を食べ歩きしようとここへ来たのだ。今食べているのは猫の姿をしたお饅頭タイプ。黒餡と白餡の二種類を手にした所だった。どちらから食べようか考えている途中、ふと夏朝と目が合った悠はオロオロしつつ、どうにか言葉を紡ぎ出す。
「猫の姿をしたお饅頭ですけど、……ど、どうですか？」
「えっ？　いいの？」
　悠の誘いに夏朝は目をぱちくりさせる。彼女にお礼を述べて口にすると、上品な黒餡の甘味がほろりと舌の上で解けた。一方、傍らの悠は白餡の方を食べ、「普通のお饅頭でしたね」と感想を漏らすのだった。

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