寝子島美味しい物フェスタ！｜リアクション

寝子島美味しい物フェスタ！

　平代真子がパンフレットでラーメン屋の位置を探していると、丁香花リラとでくわした。
「ご機嫌麗しゅう」
「こんにちは。えーっと、ラーメンを出してるお店ってどっちの方向ですか？」
　リラは唐突に聞かれたものの、飄々とした様子であたりを見渡しつつ、ラーメンのノボリを遠くに見つける。
「寝子島の名物は、しらすが挙げられましょう。今も多くの屋台に出ていますし」
　と言う通り、そこのラーメンはしらすを売りにしている……らしい。リラが再びなにか諳んじようとしたが、代真子はすぐに動き出していた。
「ありがとう！　では、早速っ」
　といった具合にラーメンの屋台へ一直線である。少し置いていかれたような感じのリラであったが、手に持っていた『しらすサイダー』を飲み、「父の教えに従い、独自路線を貫くモノを、評価しましょう」と小さく呟くのだった。

　その頃。黒兎都は試供品のオレンジジュースを口にしつつあたりをぶらついていた。
（つまり、ご当地グルメのフェスタだよね）
　ぼさぼさヘヤーに手をやりつつ、食費の事を考えていると猫の姿をしている物や近隣の海で取れる魚介類を使っている物。それらが目立つ気がした。それもそうか、なんて思っていると……名義冰と小山内海もそこに来ていた。
「よかったら、一緒に回らないか？」
『うん。いっしょにおいしいもの、たべたい』
　同じ学年だろう生徒に声をかけてみたらしく、冰は海と一緒に何やら話していた。そんな様子に楽しそうだな、と思いながら顔を上げる。と、目の前に面白そうな屋台が。
「なんか甘い匂いがする」
　都の呟きに２人も反応する。視線の先には夏朝が探していた『こねころころ』の文字があった。

　開会から既に１時間経ち、お客様はどんどん増えていく。屋台の手伝いやボランティアは本当に忙しかった。
「すみません、豚玉２つ下さい」
「はひっ？！」
　作業中、寝子高の上級生らしき青年に声をかけられ、いいなの心拍数がどっ、と一気に１００を超えた。そうなるとろっこん『ＴＲＡＮＳＭＵＴＥ』が発動し、いいなはあっという間に２０代の乙女へと変身する。
　綺麗に伸びた髪にへそだしＴシャツとハーフパンツ。中々活発そうなお姉さんの登場に客は目を疑ったが「気のせいだ」と思った。そこから、噂が出回ったのか次から次に若い男の客がやってくる。
（野郎とサシで話すのは嫌いじゃと言うに……叔母上の阿呆～！！）
　と、苦手なシチュエーションの連続に、半ばパニックになりつつも接客を続けるいいな。そんな彼女が元に戻ったのは顔見知り達が店に寄った時だった。

「……っ」
　丁度『こねころころ』を夏朝と店でみていた悠は、思わず頭を抑えた。どうやらいいなの変身が彼女のろっこん『ヒズミノイタミ』に反応したようだ。まぁ、実際近くではあるから仕方がないのだが。
　仔猫の姿をしたお菓子に「可愛いー…小さいー…」と歓声を小声で漏らしていた夏朝が気づき、不安そうにしていると近くから声がかかる。
「大丈夫ですか？」
　ボランティアとして参加している蓮が通りかかった所、２人の様子を見て駆けつけたらしい。近くに休憩所があるので、そこに案内しようかと言えば、悠は首を振る。
「大丈夫……。自分で、行けます。ありがとう」
「また具合が悪くなったら言って下さい。救護室もありますから」
　それでも心配な蓮は持っていたボールペンで地図の中程を示し、一礼する。夏朝は悠を休ませてから、改めて『こねころころ』を買いに行こう、と考えるのだった。

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