寝子島美味しい物フェスタ！｜リアクション

寝子島美味しい物フェスタ！

　『しらすコロッケ』の屋台近く。休憩所で出来立てのコロッケを食べていたののこ、綾花、凛は信彦が出した『あんまき』の屋台に興味を持った。
「へぇ、こんなのもあるんだ～」
　興味津々といった様子で覗き込むののこ。それに気づいた信彦が「いらっしゃい」と裏から姿を現した。屋台に並んでいるのは一見普通のずんだ餅に見えるのだが……？
「寝子島で枝豆は栽培されていたでしょうか」
「そこは気にしない、気にしない！　懐に余裕があるとオイシイ物を追求したくなるのが人間ってものだからねぇ～」
　だからこそ、オイシイ物を求めるなら俺の所にも！　と自信アリといった表情の信彦。凛はそれでは、と１つ食べてみる事にした。迷うくらいなら片っ端から食べてしまおうと考えていただけに行動は早い。
　信彦から受け取ると、備え付けのベンチに座って口にする。と、優しいずんだ特有の甘味が口いっぱいに広がった。それを見ていたののこと綾花も食べたくなったのか、信彦に注文の追加を頼む。
　ののこと綾花もまたベンチにて信彦からずんだ餅を受け取り、口にする。……が。
「「！！？」」
　何がどうなったのか、２人そろって目を白黒させてしまう。ののこに至っては涙目になっていた。そこをすかさずデジカメでパシャ！　と撮影する信彦。
「……もしかして、ロシアン？」
　はっ、となった凛が２人の食べたずんだ餅の残りを持ってみると、わさびの匂いがした。つまり、信彦の屋台は『ロシあんまき』の屋台だったようだ。しかも彼の言う「オイシイ」というのはリアクションの事だったらしい。
　綾花とののこが水をもらっていると、信彦は先ほどの写真を現像して持ってきた。自分たちの姿に苦笑しながらも、「ずんだ餅自体は美味しかった」と思うのだった。

「当たったみたい、だな」
『とてもからそう』
　ののこ達の前に信彦の屋台を訪れた冰と海は、休憩所からその様子を見ていた。因みにその時、海がわさび入りに当たり、手元にはその時の写真が握られている。なんでもそこのサービスだとか。
　口直しに食べているのは『にゃんきゅう』という白玉で包まれたアイスだ。丁度出くわした【３食娘】の海仔、まひる、詩歌の３人から分けてもらったそれはふわふわで、味も豊富だった。トレイの真ん中に置かれた、手のひら大の物とその周りにある一口サイズとサイズも二種類あり、食べやすい。
「ほら、あーん」
　まひるに言われ、詩歌は照れながらも口を開ける。と、きなこの風味がふんわりと香る。その様子を海仔が優しい目で見、そっと詩歌の頭を撫でてやる。なかなかほのぼのとした空気が流れる中、彼女は後輩たち皆の頭を撫でて優しく笑うのだった。そして、まひるは無表情ながらもあほ毛が楽しげに揺れていた。

魚新の屋台では地元の海産物の他、寝子島ちくわや干物などを売っていた。試供品としてこんがり焼かれるちくわは美味しそうな匂いを漂わせ、しゅくしゅくと音を立てながら焼かれるサザエも食欲をそそる。
「おっとと♪　そんなに急いでどこ行くの？」
　ちくわの着ぐるみを纏い、ちくわくんになったすばるは子供達に大人気だった。試食のちくわも次から次に無くなっていく。
　そんな様子の中現れたのはジーナ。コロッケなど屋台の物を次から次に食べては感想を言って回っているのを知っていたすばるは、すかさず動く。
「今日はこういうのも用意してまーす」
「！」
　そこに出されたのはサンマの蒲焼をちくわで挟んだ『サンマちくわ』である。早速食べてみたジーナはその甘辛いタレとサンマの風味、ちくわの程よい塩分に思わず顔を綻ばせる。そして感想はというと……？
[◎：食べごたえあり。意外な組み合わせだが、風味もよい]
　これには嬉しくなってしまうすばるは感激の踊りをちょこちょこと踊った。