狐火の花盗人｜リアクション

狐火の花盗人

◆エピローグ

　ぱたぱたと市街を駆ける足音が聞こえる。
　それは一人分ではなくて。
「……あ、あのあの、花屋の花咲里、です」
　商店街では人見知りで愛想が無いと有名な瑞樹が、今日は自分から花を渡して歩いているのだ。
　傍らには一匹の狐が共に駆ける。
　花壇で彼女が声をかけた子、花配りのお手伝い。
「これ……どう、ぞ」
　いつもよりは何倍も自然に手渡す。
　狐も咥えた花をそっと差し出せば、街の人の表情も綻んで。
　ちょっとした話題となるのは明日から。

　そんな瑞樹と狐の様子を見ながら、譲は別の狐に油揚げを食べさせていた。
「お前も食べ終わったら、被害者の店や家にお詫びのどんぐりや栗、松茸を置いて行け」　
　どこかで読んだ本の狐のように、と。
　けれどそれは花でも素敵なお話になるのかもしれない。
　花愛での狐達ならではの。　

　近くのお店ではレイラが花を買い狐達へと渡していた。
「約束のプレゼントよ」
　そう笑えば狐たちは綺麗な配分で花を携えた。
「やっぱり、この島にはラブ＆ピースが一番お似合いね！」　　　
　空の蒼穹を振り仰ぐ、今日はいい天気だ。

　神社はいつも通りのどかなもの。
　そこに訪れたのは美咲紀とあのハンカチを咥えた狐だった。
「返しに来てくれたんですか？」
　狐に微笑み聖は美咲紀をみる。
「理由……わかりましたか？」
　優しい響きの聖の言葉に美咲紀が頷く。
　今日は食べませんか？　と狐が昨日食べ損ねたおやつを差し出す。
　そのおやつを手に、口に二人と一匹は空を見た。
　少しだけのおやつタイム。帰り際には花を持たせてあげよう、なんて。

　山を下り色々と備えていた行動を梨樹は、博美から話を聞いていた。
　神が怒っているわけでは無いときき、内心胸を撫で下ろす。
　あの戦いの場に居なかったことで彼の力に対する思考は半信半疑のまま。
　けれどこれからまた、遭遇する機会も多いだろう。
　今はこの距離で、いずれは――何かを。

　あの洞窟には今日も花が満ちている。
　皆が来て添えた後に、龍八はひとり、奥へと立ち入っていた。
　昨日は来た時は花へ埋もれさせたクレマチス。
　今日はあの白い毛の元に、その手で運ぶ。　
　――白の君へ、この美しいクレマチスを。

　その外では、今日も天野が狐の様子を見て回っている。
「さーて、頑張りますよー！」
「屋敷野は元気だね」
　今日は梢の狐調査に付き合いながら。
　見守る視線は優しいものだ。
　
　色々な人の目に留まり、狐が化けた、親玉か、と話題になった理一。
　本人はそんなことも知らずに今日もお供え物を続ける。
　そっと置く、ふわりと風が駆けた。
「……風？」
　首を傾げる理一だったが、その風はなぜか優しい。
　なんとなく感じ取れる感謝のようなもの。
　それはもしかしたら――神様、だったのかもしれない。
（いいモチーフ、ないかな……）
　今日も彼が探すものもいつもと同じ。
　また、歩き出す。
　　

　山から甲高い鳴き声が響く。
　悲しみはもう宿ってはいない。重なり、重なって。
　誰かに届けるように、それは空へと溶けた。

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あとがき

担当マスター：癒雨
ファンレターはマスターページから！

狐火の花盗人、ご参加有難う御座いました。
体調を大幅に崩してしまったため、お届けが少しギリギリになってしまいました(；・ω・)

皆さんが狐たちへ優しい対応を心がけ、知ろうとしてくれたおかげで
彼らとの交流・事件解決は無事済んでおります。
狐たちがもう誰かを傷つけることはありません。

コミカル展開を望んでいた方々の要望をなかなか取り入れられなかったのと
希望を全て反映できなかった点は力不足と認識しております。
まだまだ勉強だなと、今回の執筆でも勉強させて頂きました。

感想なり叱咤なり<皆様のお言葉は全てこれからへと生かさせて頂きます。
ご参加有難う御座いました！

※
１ＰＣさまが複数場面出ていることもありますので
出番を見逃さないように確認していだたければ幸いです。

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