シエスタ・フェスタ！｜リアクション

シエスタ・フェスタ！

●リア充のお時間ですね

　お菓子のシェアを楽しんでいて、綾辻綾花はふと閃いた。
「今度よかったら一緒にお菓子作りをしませんか？」
　唐突ながら、いいアイデアだと綾花は思い、まわりに同意を求めた。
「わ、それ楽しそう！　ね、止ちゃんもそう思わない？」
　野々ののこがマドレーヌを頬張りながら干車止を振り返る。
「悪くないんじゃないか？」
　ののこの口から飛んでくるお菓子を避けながら、止は苦情混じりでそう答える。
　綾花は返事をしようとしないあおいを窺う。
「一緒に、なら大丈夫かな？」
　不安げに微笑むあおいに「任せて下さい！」と綾花は力強く言ってみせる。
「えっと、何のお菓子が好きなんですか？」
「パッキーも好きだし、つちのこの里も嫌いじゃないし……」
　ののこはウンウンと悩んでひねり出すが、的外れなことを言っている感は否めない。
　しかしながら、それもあたののこらしいなとあおいと綾花は苦笑し合う。
「あおいちゃんは？」
「も、モンブランとか？」
　照れくさそうに小首を傾げる仕草が可愛らしい。
　そうして話していると、
「ん……」
　木陰の濃いところで休んでいる八神修の意識が浮上してきたようだ。
「あ、八神さん無理しないでください」
　ようだ、というのは、森蓮がそう言ったことで八神修が気がついたことを知ったから。
「修君……だいじょうぶ？」
　あおいが顔を覗きこむと、修は慌てて体を起こすが、すぐにまた崩れ落ちてしまった。
「無理しないでね？」
　あおいは甲斐甲斐しく額の汗を拭う。
「あ、ああ……心配をかけて、済まない」
「そんなこと気にしなくていいよ」
　そういうあおい自身も無理をしないといいのだけれどと、綾花はひとり心配するのだった。

「八神君大丈夫かな、」
「心配ですよね」
　花厳望春が遠巻きに様子を窺ってシュンと肩を落とすと、御陵春哉はすかさず慰めるように言葉を重ねた。
「花厳さんは、無理しないでくださいね？」
　どうやらそれだけでなく、春哉は望春の心配をしてくれているらしい。
　望春は嬉しいやら情けないやらの気持ちで、
「ありがとう、御陵さん。俺には御陵さんのくれたこれがあるから大丈夫だよ」
　と春哉から受け取った保冷剤のタオル巻を示してみせる。
「ひゅーひゅー！」
　そうしているとまたここぞとばかりに六月一日宮檸檬がからかうような声を上げる。
「～っ！　六月一日宮くん！」
　抗議するように望春が名前を呼ぶと、隣で春哉が不敵な笑みを浮かべた。
（こ、こわいよ御陵さん……）
　彼女、たまにこういう笑みを浮かべる。その笑顔はちょっとだけ怖い、と望春は思う。かわいらしいのも、たしかなのだけれど。
「ほずみやさん！」
「あー熱いよね、ホント」
　檸檬はまだ春哉の笑みに気がつかないようだった。
「うふふ」
　更に春哉が笑うと「な、なんだよ」ようやく気がついて檸檬が怯んだ。
　春哉がいっぱいいっぱいの間を使って、焦らすように言った。
「ほずみやさん、私知ってるんですよ。ほずみやさんがとある先輩といい感じなこと……！」
　途端にぽんっと顔が赤くなる
「な、何のことやら」
　檸檬は慌てて口笛を吹くが、そのわざとらしいこと。
　面白いなぁと笑みをこぼしながら、これはチャンスだと望春も春哉に乗っかることにした。
「隠したって無駄だよ。六月一日宮くんが先輩といい感じだって、俺だって知ってるんだからな」
「そ、そりゃ先輩はいい人だし、可愛いけど」
　もごもごと照れる姿はとても望春たちをからかった人物と同じだとは思えないほどの狼狽ぶりで。
「……ってちがぁふ！」
　大声で否定しようとしたのだろうが、舌がもつれて可愛らしいことになってしまった。
「今なんて言ったんだ？」
　望月神無がわざとらしくそこを突くと檸檬は「な、なんでもねぇよ」と立ち上がって、彼女から顔を見えないようにする。
　ところがそれがよくなかった。
「ん？　もしかして立ったのか？」
　神無はさらに身長のことを突っ込んだのだ。
「な！……げほほっ」
　今度は興奮しすぎたのか咳き込む檸檬。
　神無はフっと息を漏らしてから、すっくと立ち上がった。
「ふたりとも、落ち着いて……」
　花厳も立ち上がってふたりを宥めにかかる。
　そして思わぬことに気がついてしまった。
（あれ、俺も六月一日宮くんと背丈同じくらいだ……！）
　神無はただ背が高いだけでなく、すっと伸びた手足のバランスが非常にいい。
（望月さんかっこいいなぁ……羨ましい）
　こうして密かに羨望を眼差しを送っているうちにふたりの言い争いは激化し、神魂の影響でまた転んでしまうのだった。

このページにイラストを設定する

シエスタ・フェスタ！

シナリオ

シナリオデータ

シナリオスケジュール

参加キャラクター一覧