故郷での夏休み　セカンドシーズン｜リアクション

故郷での夏休み　セカンドシーズン

●仲が良いのか悪いのか……：帰省先到着編

　伊藤佳奈と伊藤美緒が伊豆大島の西岸、大島の中心市街地の元町地区に位置し、大島の玄関口となっている元町港に降り立つと、美緒の幼馴染の友人達が出迎えてくれた。
「ただいま～」
「美緒～、お帰り～」
　久しぶりに会う友達が出迎えてくれたので、美緒は大喜び。
「お姉さんもお久しぶり～」
　佳奈は何度も大島に来ているので、美緒の友人達とは顔見知りだ。
　声をかけられたので、佳奈も「久しぶり～」と挨拶を返す。
　賑わう友人達の後ろに、様子をにこやかに見ている東京の大学に通っている美緒の兄、誠也の姿が。
「あれ、お兄も帰ってたの？」
　美緒が帰って来るというので、友人達を道場のマイクロバスに乗せてお出迎え、と連れてきてくれたらしい。
　美緒の実家に行く前に長根浜公園に行こうか、という誠也の提案に「賛成！」と喜ぶ佳奈と美緒。
（美緒ったら、どうして佳奈と一緒に喜ぶのよ！）
　ハッとなった美緒は、顔を赤くして佳奈を睨む。

　誠也がマイクロバスを運転している間、佳奈と美緒は友人達と車窓の景色を眺めながらおしゃべり。
　佳奈と美緒は同じ席に座っているが、会話は友人達とだけしているのでふたりだけの会話はない。
　バックミラーからその様子を見た誠也は、もう少し仲良くできないものか……と思った。

　長根浜公園に到着すると、佳奈と美緒は、友人達とお喋りしながら公園内を散策することに。
「誠也さん、全日本学生剣道大会、惜しかったですね」
　結果は準優勝だったと聞いたので、並んで長根浜公園を歩いている時に、そのことを話した。
「相手の方が一枚上手だったよ。でも次は負けないけどね」
　そう言って笑う誠也さんに、実は、佳奈は昔から憧れている。
　友人達とお喋りしながら公園内を散策していた美緒は、佳奈が兄とばかり喋っているので少しムッとなった。
　会話を中断させるべく、佳奈達の間に割り込み、話題を変えた。
「ほら佳奈、あそこにあんたのそっくりさんがいるわよ」
　いきなり美緒に話を振られ、美緒が指さした先を見る。
　そこには、溶岩でできた特撮怪獣作品に登場する半世紀以上も大暴れする有名な怪獣の像があった。
「え～？　美緒ちゃん酷いよ。あたし、あんな顔してないよ～」
　頬を膨らます佳奈を見て、してやったりな顔をする美緒。
「こら、そんなこと言うもんじゃない。佳奈ちゃん、ごめんね」
　誠也に怒られたので、美緒はちょっぴり泣きそうになった。
「ごめん、お兄……。佳奈、意地悪してごめん」
　本心ではベーと舌を出して悔しがったが、兄の手前、謝るしかない美緒だった。

　長根浜公園散策を友人達や誠也と楽しみ、美緒の家に着いたのは日が暮れる前だった。
「お爺様、おじさん、おばさん、お世話になります」
　美緒の両親と祖父に挨拶する佳奈に、美緒の父が「美緒が迷惑かけとらんか？」と訊ねた。
「大丈夫ですよ。ね？　美緒ちゃん」
「め、迷惑なんてかけてないわよ！　佳奈が大丈夫だって言ってるんだから！」
　いきなりの父の言葉に、本当は佳奈の事が大好きなのに素直になれないツンデレ系っぽく答える美緒。
「本当か？」
　笑う兄をグッと睨みつけ、公園の一件もあるので美緒は反論したい気持ちを我慢する。
「お兄まで……。美緒は佳奈に迷惑かけてないわよ！」
　お風呂が沸いているわよ、と佳奈に入浴を勧める美緒の母。
「それじゃ、お先にお風呂いただきます」
　
　佳奈と美緒が入浴を済ませたところで、皆揃って夕飯を。
　寝子島から元町港までの移動、公園散策で疲れたこともあり、ふたりはその日の夜、ぐっすり眠った。