故郷での夏休み　セカンドシーズン｜リアクション

故郷での夏休み　セカンドシーズン

●気の合う友達と好きな話を

「ただいま～♪　うーん懐かしい、こっちは変わってないね～☆」
　帰ろうと思えば、響タルトは実家にいつでも帰って来られたのだが、帰らなかったのには理由があった。
　親には、いつでも帰ってこられるだろうと言われたが「忙しくてなかなかねー」と誤魔化し続けた。
　去年、帰省しなかったのは彼女のろっこんのせいでもある。
　タルトは水を浴びると猫になってしまうもれいびだ。これが帰省できない理由である。
　今年の夏休みに帰省したのは、ろっこんが進化して獣人化できるようになったからだ。
（万が一、獣人化を見られても特殊メイクと言って誤魔化せるでしょ）
　弟は一緒じゃないのかとも言われたが「剣道部に入って充実してるみたいだよ」と答えた。忙しくて帰れないみたいと付け加えて。
「久しぶりに帰ってきたから、家でのんびりするよ～♪」
　明日はお祭りがあるので、友達には実家に帰ることは既に連絡してある。

　懐かしい自分の部屋でのんびりするのもいいが、チャンス、と弟の部屋を覗くことに。
「帰ってこないのが悪いんだもんねー☆　うーん、片付いてるなあ」
　散らかっていると思っていたが、片付いているのは予想外。
「片付いていても、Ｈな本はどこかに隠してあるよねー。隠し場所は、っと」
　机の引き出し、枕やベッドの下など、あらゆる場所を探した。見つかったのは定番ともいえるベッドの下。
（上手く隠してるようだけど、長年一緒に暮らした姉をなめるなよ♪）
　ベッドの下から取り出したＨな本を手に、今度会った時にからかうネタにしようとほくそ笑む。
　見つけた場所には、Ｈな本以外にも大胆な水着姿の巨乳グラビアアイドルの写真集も何冊かあった。
「こういうのが好きなんて、やっぱ、男の子だねー☆」

　帰省した翌日。
　タルトは、お祭りに一緒に行く友達との待ち合わせ場所にルンルン気分で向かう。
　地元にいる同じ趣味の友達と会うなり「久しぶりー♪」と大はしゃぎ。

「これ、最近の新刊！　サッちゃんの好みに合うと思うよ～☆」
　サッちゃんと呼ばれた友達は、新刊を手にすると目を輝かせながら「ありがとー♪」とお礼を言った。
　どれどれ……とペラペラと新刊をめくり内容を確認。新刊がどのようなものかは説明不要。
「さあ、お祭りを楽しもう！」
　友達と並んで歩きながらＢＬトークを繰り広げたり、お祭りの屋台で買った食べ物を食べ歩いたり。
　一通りお祭りを楽しんだ後は、カラオケでアニソンを歌いまくり。
　信じてもらえそうもないので、神魂や星幽塔といった不思議な出来事や異世界の話をすることはできない。
　その代わり、友達と趣味や好みの話をたくさんする。気が合う地元の友人と過ごすのは、すごく楽しい。
　弟くん、元気？　と、リモコンを手にした友達に聞かれた。
「弟？　うん、元気だよ。同じ寮にいるんだけど同室の男子が野球少年でね、ライバル意識があったりして仲がいいんだこれが☆」
　寮生活。ライバル意識があるが、仲がいい同室の男の子。
　ＢＬ本のネタになりそうなシチュエーションに萌える～！　と悶える友達もいた。
「うんうん、萌えるよね～！　その二人の友人の銀髪美少女がいるんだけど、なんと僕の創作仲間なんだ！」
　マジ！？　と身を乗り出し「もっと話を聞かせて！」とせがむ友達も。
「２人には隠してるけど、腐女子目線で楽しんでるらしいよ～ｗ」
　キャー☆　とはしゃぐ友達一同。

　カラオケボックスにいる時間が、タルトにとって地元で最も楽しい一時だった。