故郷での夏休み　セカンドシーズン｜リアクション

故郷での夏休み　セカンドシーズン

●恋人が過ごした通りを歩いて

　新幹線で約２時間かけ京都駅へ。そこで降り駅を出るとバスに乗り換える。
　２０分ほど揺られたところに、ヒュー・ヒューバートの母方の故郷がある。
　バスから降り、表通りを少し脇道に逸れると趣のある街並みが広がっていた。
「とてもいいところね」

「そう言ってもらえると嬉しいよ」
　城山水樹が気に入ってくれてよかった、とヒューは、そっと手を差し出す。
　大学卒業まで過ごした京都の通りを、指を絡めながら水樹と手をつないで一緒に歩く。
　表通りを少しそれると、閑静で赴きのある街並みが広がっている。
　表通り沿いは活気があり、ありきたりの物販中心の観光地といった感じだ。
　２人が手を繋ぎながら歩いている通りは、観光客が想像する閑静で、赴きのある街並みが広がっている。
　そこから格子状の道を歩き、観光客の流れから外れて脇道へ。
「急に街並みが古くなったから驚いた？」
「ううん、京都らしいわ」
　平屋建てに多く見られる竹や丸太で作った矢来（やらい）を見て、水樹はこれが京都の家なのね、と関心。
　平屋だけではなく、杉の表面を焼いた焼杉の技法の家々も立ち並んでいる。

「ここはね、僕が大学に通っていた時に通った道だったんだよ」
　そう言って、ヒューは自分がかつて大学生だったころの行き帰りのことを話してくれた。
　学校に通った際に使っていた道や学校帰りに途中で立ち寄った店。馴染み深い場所。
　夏の暑さも忘れ、水樹はいろいろなところを巡り歩いた。
　水樹は京都に来るのは高校の修学旅行以来で、あの時は、定番の観光地巡りしかしていなかった。
（それはそれで楽しかったけど、人混みばかりで、もう少し落ち着いて街をぶらつきたかったな）
　恋人と一緒にあるいている通りは修学旅行の時と違い、人混みがないので、ゆっくりと歩いて散策できる。
　彼が過ごした街。通学路だった通り。
（どんなふうにして、ヒューは、この街で過ごしていたのかしら）
　いろんなことが、水樹の脳裏に浮かんでは消える。

「そろそろ実家に行こうか」
　もっといろいろな場所を案内したいヒューだったが、日が暮れかけている。
　今夜はヒューの母方の実家に泊まることに。実家の祖父母には連絡済みなので、２人が泊まれる支度は整っているだろう。
（ヒュー……物凄くいいとこの出身だったんだ……）
　立派な門構えの屋敷だったので、私、来ても良かったのかしら……と水樹はさすがに気後れした。

　ヒューの実家が予想以上にすごいのもあるが、身なりに気を遣えばよかったかもという後悔も。
　今、彼女が身に纏っているのはヘソが出ている衣装にジーンズといったラフな衣装だ。
「大丈夫だよ。僕も、初めて祖父母の家に来た時には気後れしたから」
　祖父は気難しい人物だが悪い人間ではない、祖母は優しい人だから怖がる必要はないよ、と水樹の手を取って呼び鈴を押す。
　しばらく待つと玄関の扉が開いた。開けたのはヒューの祖母だった。
　玄関口に出てきたのは、厳めしい表情の祖父と祖母。２人揃って、ヒューと水樹を出迎えた。
「紹介します。モデルでコスメブランドのイメージガールをしている城山水樹さん」
　水樹をじっくりと見て、綺麗な彼女ではないかと腕組みしながら、ぎこちない笑みの祖父。
「はじめまして、城山水樹といいます。モデルとコスメブランド「Sonora」のイメージガールをしています」
　よろしくお願いします、と丁寧にお辞儀を。
　礼儀正しい娘さんだと祖父は水樹を褒め、祖母は綺麗なお嬢さんねと優しく微笑む。

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