故郷での夏休み　セカンドシーズン｜リアクション

故郷での夏休み　セカンドシーズン

●実家でのんびりできるかどうか……

　落合まゆらの実家は、埼玉県さいたま市。
　ねこでん寝子島線で鎌倉まで出た後、鎌倉で横須賀線に乗り大船へ。
　そこから東海道本線高崎行きに乗り換え大宮へ。
　移動だけで１時間以上かかるので、大荷物を持っての移動はきつい。

　大宮駅を着くと、荷物と買った土産物を手にテクテクとさいたまの街を歩く。
　歩くこと数分。どうということもない街並みに溶け込むようにして建っている一軒家に辿り着いた。
　実家の呼び鈴を押すと、インターホン越しに「はい、どなた？」と問う声が。
「あたし、まゆらだよ」
　返事をする娘に「おかえり」とにこやかな母の声が。
　玄関から出てきた母は、待ってたと娘を出迎える。
「はい、お土産」
　手渡した手土産は、親子の猫の形をした猫サブレが入った箱詰めの寝子島サブレ。
「いつまでいるの？」
「お盆過ぎまで。それまで、のんびりさせてもらうわ」
　荷物を置いてくると、正月休み以来、足を踏み入れていない２階の自室へ。
（大して変わっていないわね）
　物置と化した、という劇的変化は困る。好きなように過ごすスペースが無いから。

　クーラーのスイッチを入れ、バッグをその辺に放るとベッドに横たわる。
　横たわりながら涼んでいると、今年の夏、いきなりとんでもないことになった一件を思い出す。
　ある日の午後。
　意識を失いかけ、そのまま彼岸に辿り着きかける夢を見た。
　1人暮らしなので、気絶したら誰も助けてくれない。
　品質保証なしアウトレット品として叩き売られていた安物ポンコツクーラーは役立たず。
　古いアパートなので熱も湿度も溜まり放題、不快指数ＭＡＸに。
（マジで死ぬかと思ったわ……）
　冷房が効いた涼しい自室で、あの出来事を振り返っていたが急に飛び起きた。
「あの件、バレてないわよね！？」
　アパートで全裸になったことはバレていないだろうが、それ以外の行動はバレている可能性がある。
　ビタミンカラーのトライアングルビキニに着替え、ビーチサンダルを履いて外出。
　自販機のペットボトル入りのミネラルウォーターを購入してキャップを外し、中身を頭からかぶった。
　女の子走りで海まで行き、おもむろに海に飛び込んで平泳ぎをした。
　砂浜で肌を焼こうとしたが、ぶっ倒れて気が付いた時には病院のベッドに。なんてことも。
　断片的に奇行の数々を聞かされた時、これがアニメ脳の恐怖というヤツなのね……と朧げに思った。
　病院に搬送される前の行動の一部が撮影され、ネットの動画サイトやSNSで話題を呼んでいたことを知った時は顔面蒼白。
　灼熱地獄と絶対零度。両方体感したのは、ある意味、貴重な体験かもしれない。
「お風呂、沸いたわよ」
　母の声で我に返り、このことがバレていませんように……と神に祈るまゆらだった。

　お風呂に入って汗を流し、冷蔵庫から冷たい飲み物を取り出し一息つく。
　その頃、仕事を終えた父と兄が帰ってきた。
「おかえりなさい。ご飯、できてるわよ」
　父と兄が着替えを済ませ、ダイニングに来たので家族揃って夕飯を。
　寝子島での生活はどうだと父に聞かれたまゆらは「どうってことない普通の生活よ」と答えた。
　母の手料理を食べているまゆらを、兄はジッと見ている。
「兄貴、何？　あたしの顔に何かついてる？」
「別に」
　そういう兄は、実は例の件のことを知っているむっつりスケベだった。
　話したくない例の一件抜きで、寝子島での話をし、どうということのない家族の会話を久しぶりに堪能する。
（家族と過ごすのっていいわね……）
　そう思うまゆらだったが、寝子島に帰るお盆過ぎまで実家でダラダラ過ごしていた。

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