せんせいといっしょ：若林先生編｜リアクション

せんせいといっしょ：若林先生編

●雨のち晴れの日●

　放課後。
　雨は上がり、爽やかな晴天が雲の間から顔を覗かせ始めていた。
　5月ももう終わり。
　次の月に入れば、こんな晴れ晴れとした空ともちょっと疎遠になってしまうだろうか。
　主が出てくるのを待ちながら、茶トラの子猫は揺れる木の葉を見上げていた。
　と。
「にゃーくんなのだ！　今は円ちゃんの出待ちなのだ？」
　猫にまっしぐらな真央が駆けてきた。
「にゃーくん、さほるのが難しいのだ、円ちゃんに名案を聞いてきてほしいのだ。
　成功報酬はマタタビ粉なのだ」
　にこっと笑ってマタタビ粉のパッケージを振ると、にゃーくんは興味津々でそれに近付いていく。
「あう、これは成功してからなのだ……そ、その肉球は反則なのだっ……！
　こうなったら……にゃにゃにゃがおー！」
「ぶみゃー」
「にゃー！」
　真央は召還した三毛猫ににゃーくんの遊び相手を任せて、マタタビ粉を守った。
「でもなかなか上手くいかないのだー。どうすればいいのだ」
　しばらく唸って、真央はばっと顔を上げる。
「真央ちゃんは開眼したのだ！　策を弄するからダメなのだ、当たって砕け散る覚悟が不足だったのだ！」
　ダダダダッ！
「こらぁ、廊下を走るな！」
「わあごめんなさいなのだー！」
　熊っぽい体格の先生に怒られたけれど、一度火が点いたら止まらない。
「なんだか騒がしいわね」
　振り返った沙穂先生の控え室の扉が、ズバンと開かれた。
「頼もうなのだー！　さほりに来たのだー……って、あれ？」
　中の沙穂先生は苦笑しているだけだ。
　真央はうーんと首を捻った。
「まあ、丁度良いからティーブレイクにでも付き合いなさい」
　と先生はお茶の準備を始める。
　美味しい緑茶で一服して。
「沙穂ちゃんセンセー、結局さほるって何なのだ？」
「それを私に聞くかな」
　改めて尋ねた真央に、沙穂先生は肩を竦めた。
「むー、さほるって沙穂ちゃんセンセーのお部屋でおサボりする事だったのだ……それは授業出てる真央ちゃんには難しい話なのだ」
　彼女が妙なところで深刻な顔をするので、沙穂先生はふっと笑った。
「別に授業中に来なくても、普通に昼休みとか放課後に来たら良いんじゃない」
「そうするのだ！」

　今日も沙穂先生は控え室から2年8組の教室や美術室、校内の様々な場所に向かう。
　親しい友人と連れ立って話す少年、授業が終わって楽しみな部活動に急ぐ生徒。
「チャオチャオ、沙穂せんせー！」
　渡り廊下を歩いていると、友人たちとやって来たセレッソが、元気に手を振っている。
　沙穂先生は微笑んで、ゆっくりと手を振り返した。
　色んな生徒たちと気軽に挨拶して――戻ってくるのも、この控え室。
　そんなに広くはないけれど、何処か居心地の良いこの部屋に、明日は誰が訪ねてくるだろう？
　彼女はきっと、また「仕方ないわね」と笑いながら、さほりに来た生徒を迎え入れてくれる筈だ。

このページにイラストを設定する

あとがき

担当マスター：羽月ゆきな
ファンレターはマスターページから！

『せんせいといっしょ：若林先生編』リアクションをお届け致しました。
沙穂先生の控え室でのひと時、如何でしたでしょうか？
今回も楽しく個性的なアクション、相談もライトなお悩みから深いものまで様々なアクションを頂き、沙穂先生と一緒に悩みつつも楽しく書かせて頂きました。

こちらのシナリオガイドを最後に、らっかみ！タイムが6月になった為、リアクション上では五月の最終週くらいの感覚で描写させて頂きました。
その為、台詞など少し変更させて頂いた方もいらっしゃいますが、ご了承頂けましたら幸いです。
（雨の日もあったのは、参加者さんのアクションから頂きました。
　違う雰囲気の日も描けて、楽しいバリエーションが増えたのではと思います）
ご参加頂き、ありがとうございました。
リアルでは相変わらず連日猛暑が続いていますが、どうぞご自愛下さい。

次回のシナリオは、梅雨時の紫陽花関連のお話になると思います。
よろしければ、そちらもチェックしてみて下さいね。

↑ページトップに戻る